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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】おとぎ話(2007年2月号)- ずっと残るようなメロディと、ずっと残るような不思議感を伝えたい

ずっと残るようなメロディと、ずっと残るような不思議感を伝えたい

2007.02.01

2000年の結成以来、銀杏BOYZのフロントアクト、イベント「SET YOU FREE」への出演や自主企画「KOIしにKOI」など精力的なライブ活動を展開し、デモCD「BLANK POP!!!!」は自主盤チャートで大ヒット! そんな日本語ロックの新星、おとぎ話がついにファーストシングルをドロップする。彼らの奏でる甘くも激しい青春音楽は今後どこに向かっていくのか? ヴォーカル&ギター有馬氏に語ってもらった。(interview:横山マサアキ)

ポップの端っこにいながらもド真ん中のロックサウンド

──初のオフィシャルでのシングルリリースということですが、この作品で初めて聴いてもらう方が格段に増えると思うんです。そういうことを意識して作られたりしたんですか?

有馬:今までデモCD-Rでの音源製作…バンド仲間やライブで出会った仲間に対しての「名刺みたいなもの」として作ってたものではなくて、流通する商品としていろいろな人が手にとれる環境で発表できたのは大変嬉しいです。だからそういう面ではものすごく気合いが入ってますよ。今まで自分たちで努力できること…たとえば自主盤専門店での委託などはしっかりやってきた感じがありまして、それをやってこなければこんな気持ちにもなれなかったかもしれないです。でも嬉しいっていうよりも、もっと自分がやらなきゃいけないことがあるし、音楽に対しての信頼感が増してる今この時期にリリースできるので、しっかりやらなきゃと思ってます。

──バンドのファーストシングルとしては非常に「責任感のある音楽」に感じました。ちゃんと背負ってるモノがあるなぁと。

有馬:音楽を始めた高校生の頃の自分に聴かせたいし、同じようなことを考えている人に聴いてもらいたいって常に思っています。「地に足をつけて」ということをバンド結成からものすごく大事にしているんです。浮ついて音楽をやってしまったら、ばれてしまうのではないかと思っているので…。お客さんが少ない時のライブと100万人の前でやるライブとで何か変わってしまったらおかしいと思うんですよ。だから浮つきたくはないし、浮つく状況でCDをリリースしたくはなかったんです。「CDリリースだ! わ〜い!」っていう状態ではなくて、シッカリ見せたいと思います。とにかくポッと出てきたバンドみたいには見られたくないんですよね。今までやってきたことの地続きで考えていますし、ライブや音源を聴いてもらえば理解させる自信も誇りもありますし、そういう意味でも責任感のある音源を作りたいと思いました。

──サウンド的にこのシングルに入っている『KIDS』と『クラッシュ』は対照的な音作りになっていて、おとぎ話の魅力の両極端を表していると思うのですが。どういう経緯で選ばれたのですか?

有馬:ファーストシングルは今までの中で一番の名曲をリリースしたいと思っていたんです。そこで「名曲って何だろう?」と考えたときに『KIDS』がパーンと浮かんできました。そのカップリングとして…おとぎ話としての「静」と「動」の両端っこをつなぎ合わせることができる楽曲にふさわしいのが『クラッシュ』でした。ライブにおいてもこの2曲を核にして演奏することが多いですし。聴いてくれる人がこんな両極端な曲をやるバンドなんだって思ってほしい。個人的には『KIDS』が出来たときがものすごく嬉しくて、やっと自分が書きたい曲が出来たと思ったんです。それまでは曲が書けなくて、というか曲にならない感じのまま、中途半端な完成度のままだったんですよね。『KIDS』は初めて楽曲に対してキチンと取り組めた曲だし、『クラッシュ』が完成したときも、おとぎ話の「動」の部分という意味でかなり達成感がありました。だからシングルにはこの2曲しかないなぁと思いました。

──おとぎ話というバンドを伝えるには非常に効果的な2曲だと思いますよ。

有馬:メロディーはどちらの曲も一番重要なんですよね。メロディーは裏切らないが、いい意味でサウンドは裏切っていると思います。

──この2曲において気になるのは、サウンドはどうであれ楽曲として「ポップス感」を手離してないというところだったんです。いくらサウンドにエッジがあっても「エヴァーグリーンなポップス」の印象があるんです。

有馬:曲を書く上で最初は衝動だったりするんですが、バンド「おとぎ話」のメンバーとしてこの4人で音を鳴らすことを踏まえると、ポップの端っこにいながらもド真ん中のロックサウンドを作るために努力はするんです。中途半端でグチャッとしたアレンジで作っていくんだけど、4人で合わせるうちにその曲のイメージも変わってグチャッとした部分が剥がれた曲になるんですよ。だから衝動でバンッ! て出てきた曲をどうにか自分が好きなロックの範疇に収めていって、そこからまた少しずつ外れていってみたいな…。でもその行き着く先が絶対にド真ん中であって欲しいんですよね。ロックとしてはド真ん中でストレートであって欲しいんだけど、ポップスとしてはストレートであって欲しくはないんですよね。そのバランスのとり方が大事だし、だからバンドっておもしろいなぁと思うんです。

おとぎ話はおとぎ話でしかない!

──おとぎ話は「僕は好きな音楽だけやってれば幸せなんですよ〜」っていうタイプでは決してないと思うんですよね。けれども聴き手のことばかり考えていていたら、漂白されたポップスになってしまう危険性があることも知っている。 紊だからこそ聴き手の受け取り方にもちゃんと責任感を持ちたいのかなぁと思うんですが…。

有馬:初めは友達に聴かせたいんですよね。地元の友達に聴かせて、絶対に理解してもらいたいし、裏切りたくはないんです。友達が聴きたいって思ってくれるのならば、さらにその先に聴きたいって思ってくれる人がいっぱいいるんだろうなって信じたいんですよね。そういう形で曲を伝えていきたいんです。

──なるほど。では、歌詞についてなんですが、特に『KIDS』の歌詞には何か「終末思想」的な印象を感じます。そのあたりのイメージは歌詞を書くにあたって意識していますか?

有馬:最近いろいろインタビューされて思い出したんですけど、『KIDS』の歌詞は仕事の帰り道におぼろげな感じで浮かんだんです。自分が好きなアーティストの歌詞やマンガに影響を受けて、たとえば『漂流教室』を読んでいて「明日は無い!」って状況に置かれて「好きな人に何をして欲しいだろう?」って考えた時に、最終的には僕の事は好きになってくれなくてもいいから、自分が目を閉じたときに「好きな人には笑っていて欲しい!」と思って。そういう意識が生まれて歌詞が出てきた時、自分にとって歌詞を書く上での到達点になったし、「歌いたいコトはこれなんだ!」って感じたんですよ。『クラッシュ』にしても根本的には同じ意識で作っていると思います。

──究極的にはどちらの曲も見ている世界観は繋がっているのかなぁって。

有馬:僕の書いている曲は全部繋がっていると思いますよ。仮に僕らがインストの曲をやったとしても4人全員がその同じ意識に向かって演奏していると思いますし、音源になっていない曲もライブで聴いてくれれば繋がりがわかってくれるはずです。

──おとぎ話のライブは外に向かって開かれているなぁと感じました。バンド名から連想させるイメージはサイケデリックだったりアングラだったりURCっぽかったりして、高円寺あたりでコソコソやっているバンドだと思ってたんだけど、それとは逆でフトコロが異常に大きいんだなぁってビックリしたんですよ。

有馬:シーンの中では僕たちは孤立してると思うんですけど、常にエヴァーグリーンな存在でいたいんですよね。ドカーン! って一発勝負的なものではなくて、ずっと残るようなメロディとずっと残るような不思議感を伝えたいんですよね。音楽は寄り添ってくるもので離れていくものではないから。自分さえ自然な気持ちでいたらいいと思うんですよね。だから自然な気持ちで聴いてくれる人がどんどん増えて欲しいし、その踏み出す一歩がおとぎ話だったら最高にうれしいですね。だから僕も高校生の時のような気持ちで音楽と付き合っていかないと(音楽が)出来ないんですよ。

──1年前に観たライブに比べると、最近のライブは喜怒哀楽の表情が豊かになってきたなぁって思いますよ。

有馬:ライブは「泣き笑い」でありたいんです。バンドという物語だから「怒」だけが出てくることがあるんですけど、最終的には笑える部分を作りたい。以前はライブの時に自分で感情を殺していた部分があったかもしれないですし、その日の競演バンドに張り合うことでしか表現できてなかったんだと思います。最近のライブは4人の集中力があるし、どこのステージに出ても「おとぎ話はおとぎ話でしかない!」って思える分、自信がついたんでしょうね。

──何かキッカケがあったんですか?

有馬:今年の初めにエレファントカシマシを観にいったときに衝撃を受けたんですよ。今までとは違う集中力の持ち方がわかったような気がして。自分は周囲に左右され続けていたから愕然としたんです。

──既存のモノに対してのカウンター的な立ち位置ではなくて、「これがおとぎ話です」っていうことですね。

有馬:この一年でここまでいろいろ覚えて成長できたのはすごい幸せだなぁと思いますよ。誰に何を言われても関係なくて、シーンの動きがどうであろうが「おとぎ話」がいれば大丈夫だよって言えるようになったし、それを言うためにどんなイベントだろうが自信をもってやれると思うんです。いわゆる関西ゼロ世代や音響系っていわれるようなバンドとの付き合いはあるんだけど、そのシーンがどんなもんであれバンド像をドンッ!と見せなきゃダメだし、「おとぎ話」は「おとぎ話」でしか出来ないライブをやらなきゃいけないと感じてます。

──自信を持って活動するためにも、今後バンドとしての課題は何だと思いますか?

有馬:もっとみんながライブに足を運んでくれるようなバンドになりたいし、窓口は常に広くありたい。気軽に手に取ってくれる…ポケットの中に入れてくれるようなバンドになりたいんです。それでいてポップの端っこでロックのド真ん中を鳴らしたいんですよね。そこがブレないようにやっていきたいです。

──そうですね。おとぎ話の音楽は生活に密着すると思いますよ。

有馬:フランクでいるってコトは大事で、手に取りやすい 紊バンドでいることは失いたくはないんです。

──2月は自主企画、3月には名古屋や関西にも行きますし、多くの人に観てもらいたいですね。では、最後にルーフトップ読者に一言!

有馬:僕らを助けてください(笑)。ぜひライブを観に来てください。僕はそこら辺に歩いているので、気軽に話しかけてください!! そしたらコーヒーでも奢ってくれ。

──奢るからじゃなくて奢ってくれなんだ…(笑)。

有馬:はい。そしたら一生懸命話しますんで…(笑)。

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