昨年の夏のバンド結成以来、いきなり40本近いライブを敢行。「楽器に関しては全員、ほぼ初心者だった」という状態から怒涛の進化を繰り広げている4人組バンド"ONE OK ROCK"(平均年齢18歳!)から、2枚目の音源『Keep it real』が届けられた。表題曲における「素直と直感させあれば俺ら最強なんだから」というフレーズが示すとおり、ヘビィロック、ヒップホップ、エモ、ポップを(自らのインスピレーションだけを頼りに)融合させたサウンドは、既に唯一無二の個性を放っている。バンド結成から1年半の軌跡について、メンバー全員に訊いた。(interview:森 朋之)
「じゃあ、1回だけリハに参加します」
──どういう経緯で結成されたバンドなんですか?
Taka(ボーカル):じゃあ、Toru君、おねがいします。
Toru(ボーカル&ギター):(笑)。僕とRyota(ベース)とAlex(ギター)、それからもうひとりドラムのヤツがいたんですけど、最初は4人でやろう思ってたんですよ。はじめは僕が歌ってたんですけど、ボーカルが欲しいなって思ってたら、友達のつながりからTakaのことを知って。ライブを見にいったらそのときはバラード系の曲が多かったんですけどすごくいい声をしてて、「ロックを歌わせたら、おもしろいだろうな」って。で、すぐに声をかけたんです。最初は嫌がってたんですけどね。
──Takaさんはその頃、ロックに興味なかったんですか?
Taka:いや、そんなことないです。音楽全般、なんでも聴いてた人なんで。
Alex:Toruに興味がなかったんでしょ?
Taka:そう、しつこすぎて(笑)。1回断ったのに、次のライブも(Toruが)観に来てるんですよ。バイト先にも来るようになっちゃったから、「じゃあ、1回だけリハに参加します」って約束をしたんですよね。ストーカー行為的なものをやめてほしいって思って(笑)。そしたらいつの間にか、バンドに入ることになってた。
──4人で音を出した瞬間、「これだ」っていう手ごたえがあった、とか?
Alex:いや、そういうのはなかったですね。というか、それ以前の状態だったから。
Toru:バンドとかってやったことなかったんですよ、それまで。スタジオのアンプを使って爆音を出したのも、そのときがはじめてだったし。使い方がわかんないから、ハウリまくり(笑)。
Alex:ベースに至っては、鳴ってるかどうかもわかんないっていう…。
Ryota:音がグルングルン回ってたよね(笑)。
Alex:だいたい俺ら、Takaの存在自体を知らされてなかったんですよ。スタジオでいきなり、「今日、ボーカル来るから」って。そしたら、すげえ感じの悪い人が。
Taka:なめられちゃいけないって思って、攻撃的な感じだったんですよ。もともと、あんまりやる気もなかったし。
Ryota:すごかったよな、あれは。
──空気悪そう…。
Taka:悪いですよ。だって、パッと見たら外人がいるし、ベースの子は目を合わせてくれないし。でも、すごく感動したんですよね、そのとき。生の音ってすげえなって。それまでは機械音を使ってライブすることが多くて、生楽器の迫力を体験したことがなかったから。
──なるほど。それ、どれくらい前の話なんですか?
Taka:1年半前くらいかな。
──とんでもない進化ぶりですね。だって、その時点は初心者に近い状態だったんでしょ? なのに40本近いライブをやって、音源もリリースして…。
Alex:がんばりました。
Taka:とにかく(音楽が)好きだから、個々の成長も早いのかも。
Alex:まず、Toruが無理矢理、がんがんライブを入れちゃったんですよね。だからもう、やるしかないって感じで。最初はひどかったですけど、数を重ねていけば、だんだんまとまってくるじゃないですか。昨年結成されたバンドの中では、一番たくさんライブをやってるくらいの勢いだよね?
Ryota:うん。3、40はやってるから。
Taka:経験者がいないっていうのが良かったのかもしれないっすね、逆に。全部自分らの感覚で判断しちゃうから、「かっこいいんじゃね?」「いけんじゃね?」っていうノリで。
Alex:ヘンな話、ボーカルが上手いから、それだけで聴けちゃうんですよね。あとは俺らが徐々に追いつけばいいっていう。ただ、最初の頃はめちゃくちゃでしたけどね。PAの人に怒られたり。
Ryota:(ベース・アンプの)セッティングなんかわかんないから、前に使ってた人のセッティングで、そのままやってたり。
Alex:それがひどい音で、(ステージ上の)バランスがグチャグチャになったこともありました。何も聴こえないような状態なんだけど、どうしてそうなってるのか、誰もわからない(笑)。それ、けっこう最近の話ですからね。
攻撃的でいることも大事だけど、自分を見つめることも必要
──そこから1年で、でかいフェス(「THE 夢人島 Fes.2006」)に出たわけでしょ?
Taka:奇跡ですね。あの、誤解されることもあると思うんですよ。誰かに(曲を)作ってもらってるんじゃねえの? とか、お金かけてもらってるんでしょ? とか。
──なるほど。
Taka:そういうことに関しては、「ま、言っとけ」っていう感じですね。俺らは全部自分で曲を書いて、詞も書いて、音も作り上げてるわけだから。それがつまんかったら、出られるわけないし。だからフェスについては、動揺とかはまったくなくて、ただただ楽しかったんですよ。ステージがでかくて、気持ちよかったし。
Alex:今までとは違った気合いが入りましたね。ライブ自体、すごく良かったと思うし。これでダメなライブをやってたら、「その話はちょっと…」ってことになったかもしれないけど。
Taka:でかい会場、けっこう強いんですよ。
Ryota:逆に小さいところのほうがミスがでやすいよね。
Taka:出来、不出来の差も大きいし(笑)。
──まあ、すべてのライブが素晴らしいバンドっていうのもありえないですからね。音楽的な方向性に関しても、ゼロから作り上げた?
Taka:そうです。最初は何もないわけだから。
Alex:土台が何もない分、縛られることもないっていうか。“これはかっこいい”“これはダメ”っていうだけなんですよ、すべて。その感覚だけを頼りに試行錯誤を繰り返してきて。
Toru:まずはコピーから入って、誰か他のバンドの音を目指すって方法もあるんだろうけど、俺らはいきなりオリジナルですからね。
Alex:俺はコピーもやりたかったんだけど(笑)。
Toru:そう、だからグッドシャーロットの簡単な曲を2曲くらいやって。
Taka:そのあとはずっとオリジナル。「次、何やる?」って話になったとき、「新しい曲作ったから、それやろうよ」っていう感じなんですよ。だから、今コピーをやると新鮮かもしれないですね。
Alex:バンドの成り立ちが、いちいちヘンですよね。
──そうですね(笑)。今回の音源のタイトルチューン『Keep it real』の歌詞って、いまの話がそのままテーマになってますよね。「縛られるな!! 」「素直と直感さえあれば俺ら最強なんだから」っていう…。
Taka:はい。今回の音源については、作品全体でひとつの物語として成立してるんですよ、僕のなかで。『Keep it real』は怒りの部分、2曲目の『辛い+−=幸せ』は怒りを乗り越えて、自分を客観的に見ている感じ、4曲目の『And I Know』は未来に対する不安だったり、「どうしたらいいの?」っていう思いを描いてるんですけど、そこには共通したメッセージあって。
──うん。
Taka:攻撃的でいることも大事だけど、自分を見つめることも必要。ただ突っ張るだけじゃなくて、自分達も大人になって、がんばっていこうよっていう…。そういうことを歌詞にしたかったんですよね。まあ、いつも言ってることは同じだったりするんですけど。歌詞の世界はそんな感じですね。
──サウンドについては?
Taka:根底にあるのは、好きなことをやって、それでいて何かに捕らわれることがないようにしたい、ってことなんです。攻撃的なバンドってアンダーグラウンド(シーン)には多いけど、ポップを否定するのもよくないと思うし。アレンジに関しては、3人がやってくれるんですよ。それがすげえかっこいいから、完全に満足しちゃってますね。『Keep it real』のイントロなんて、ヤバイですよ。こいつ(Alex)の才能が出てますね。
Alex:(笑)。まあ、あんまり考えてないんですけどね。インスピレーションなんで、全部。ただ最近は、あんまり感覚的なことに頼っても、思いついたことを表現できないこともあるな、って思ってるんですよ。理論や知識が増えたら、表現の幅も広がるだろうし。あと、どんなことをやっても、ウチのボーカルなら歌える、っていうのは強いですね。『Keep it real』に入ってる曲も、やってることはけっこう幅広いですけど、バラバラっていう感じはないし。