GRiP 3rdアルバム『Hello』が遂に完成!他の追随を許さない圧倒的なグルーヴ感とエモーショナルなメロディー、たしかな希望をもたらすポジティブな歌詞が魅力である彼ら。今作はさらに磨きがかかり、心臓の鼓動とすり替わりそうな低音を響かせるベースを始め、ロックンロールを全身で感じることができる作品。
普段はお酒を飲んでいるイメージしかないヴォーカル・ゴンダさんに今作についてお話を聞かせていただいた。「ロックンロールやろうぜ」というフレーズがこれほど似合う人はそうそういるものでもないなぁと終始インタビュー中に考えてしまうほど、ゴンダさんの立ち振る舞いそのものがロックンロールだった。(interview:やまだともこ)
ライブハウスを飲み屋だと思ってるから(笑)
──今回のアルバム『Hello』ですが、アナログ一発録りで録ったそうですね。
ゴンダ:これはいつもやってることなんだけど、アナログのレコーダーを回して録ったんだよ。今ってプロツールスっていう音楽ソフトがあるじゃない? でもバンドのサウンドってアナログで録ったほうが温かみがあると思うんだよね。ドラムとベースとギターを一発で録って、ギターをダビングしたり歌を歌ったり、録り方にこだわったっていう事。最近は知り合いのバンドもそうなんだけどMDに録音することが多いみたいで、タンスジャンプスのリハにカセット持っていったらマスザワくん(テルスター/ザ・ガールハント)に「何ですか、それ!」って言われた(笑)。アナログ嫌いな世代ってあるよね。MDもイヤでHDやi-Podにしたり。
──テープを聴く機会って少ないですからね。
ゴンダ:昔のソノシートみたいなもんで贅沢品だよね。だからアナログレコーディングをしたっていうところですね。
──今回この作品を聴いたとき詞の内容にしてもそうですが、四畳半の部屋でしんみり…とかじゃなくて、バブル期のような華やかな情景が浮かんできたんです。
ゴンダ:女々しい歌はイヤだというのがあって、スカッと行こうよって感じ。
──前のインタビューの時は「どうにかなるさ」的な事をおっしゃられてましたが…。
ゴンダ:どうにもなんないんだけどね(笑)。北朝鮮の核とか止められないじゃん。どうにもならない部分はいっぱいあるんだけど、せめて音楽側としてはピースを歌っていきたいなって思うんだよ。
──ゴンダさん自体の存在がピースですからね。基本的に飲んで千鳥足でいるイメージしかないし(笑)。
ゴンダ:けっこうそうだね。ライブハウスを飲み屋だと思ってるからね(笑)。自分のライブの時はさすがにライブがハードだから飲まないけど、それ以外の日はライブを見てるのが日常みたいなもんだからね。
──そしたら、曲とかいつ作ってるんですか?
ゴンダ:今年はソロも含めてけっこう作ったよ。作るのはレコーディングの前の日とかリハしてる時。ギリギリにならないとやらないんだよ。あとライブやりながら作ったりとかね。こんな感じにしとこうぜっていうのは決めておいてあとはライブのノリで。
──今回の『Hello』はライブ中に出来た曲が多いのか、ノリの良い曲が多かったですね。4曲目の『I♥Dancefloor』もダンスナンバーで。
ゴンダ:これはレコーディングでできたんだよな。最初は一人で考えて、次にメンバーと考えて、ライブでお客さんを前にしてやったときに、この曲かっこいいねっていうのが確信に変わるんだよね。初期衝動みたいなものがあるとね。ライブがかっこいバンドに会うと刺激も受けるしね。こういう曲作りたいな、今度のライブでこういことやりたいなって。だから絶えず作ってるんじゃないかな。酒飲んで酔っぱらってこの景色を歌にしたいとか。だいたいそのまま忘れてるけど…(笑)。
『Hello』は低音がスゴイ事に!?
──アルバムの流れですけど、前作『ten』も1曲目に英詞が置かれていたんですが、このこだわりっていうのはあるんですか?
ゴンダ:落ち着くところに落ち着いたって感じだよね。1曲だけ英詞の曲があって並べて振り返ってみたら『ten』の時もそうだったよねって。毎度の事ながら、後で揃えるとドラマがあるなって思いますよ。
──『DRINK,THE ROCK'N ROLL』(M-1)の歌い方とかメロディーとかゴンダさんそのものという感じ。一言で言うとすごくセクシーですよね。
ゴンダ:これはスタジオで「クールな曲がいいよな」っていう話をしていたんだよ。で、ベースの高間がBECKかなんかの曲持って来て「こういう感じじゃない?」って。踊れて、ヴォーカルは声を張るよりかは低音で。ライブやってると演奏で歌が聞こえなかったりするじゃない? でも意外とそのアンバランスがおもしろかったりするんだよね。ドラムよりでっかいアコギの音とか、レコーディングだからこそできる。俺は基本的に洋楽好きだから、今年は若いイギリスのバンドばっかり聴いてたんだけど、そいつらの音ってDJで回した時にすごい迫力があるの。なんで洋楽の音がこんなにいいんだろうって、調べた結果アナログを回して録ってるんじゃないかと。たぶんそうだよ。下手なんだけど音が温かいんだよね。逆に日本のCDって変な雑音が入って全然盛り上がらない。
──DJを始めてけっこう長いんでしたっけ?
ゴンダ:けっこうやってるね。ロックとかはでっけえ音で聴かないとわかんない。最近は家ではあんまりCDとか聴かないんだけど、聴くときはかなりデカイね。アコギとかはガンガン弾いてるな。でも未だに隣の家から怒られたことないんだよね。歌録りとか前々作は家でやってたしね。シャウトとかもやってた(笑)。でも昔1回だけP?あったのは、引っ越して1週間ぐらいのときに一人暮らしで寂しいから週末に友達をいっぱい呼んで鍋大会をやってたんだよ。そしたら隣の人がガンガンって来て「お前一人で生きられねえのか!」って。あれはちょっと落ちた(笑)。確かにそこをつかれるとツライ…(笑)。でもその隣の人は、休日になるとクラシックを大音量で聴くんだよね(笑)。クラシックはロックだよ。低音とかピアニッシモとか強弱がちゃんとあって気持ちいいよね。
──音楽ってウォークマンで聴くよりやっぱり家のステレオのボリュームを上げて聴くのがいいですよね。『Hello』も家で聴いたら、すごい良かったですもん。
ゴンダ:低音がすごいことになってたでしょ(笑)。
──ベースが特にすごかったですね。前の『ten』も良かったですけど、今回と比べるとちょっと軽かったかなって思ったぐらいです。
ゴンダ:ゴンダ:LOWの音を録るのってけっこう難しいんだよね。でも、今回はLOWがふくよかに出てる音で録りたいと思ってたんだよ。たいてい日本のインディーズバンドの音はLOWが録れてないから、マスタリングで思いっきりひずますぐらいに突っ込むわけ。それって家のステレオで聴く分にはいいんだけど、DJとか大音量で聴くととんでもない音になっちゃうのよ。そういう音は飽きたので、大音量で聴いても痛くない感じにはしてますね。ベースの骨太感が出てるのはその辺だと思う。
──今回“ロックンロール”という言葉がいっぱい出て来るんですけど、その言葉がよく似合うアルバムですしね。
ゴンダ:ロックンロールっていうのはライフスタイルみたいなもんだからね。今年もあちこちでライブやったりとか、現場の匂いを感じたり生きてたりしてて、やっぱり一番いいねっていうのはすごく思った。ロックンロールが一番ピースなんじゃない? もちろん、一口に言っても捉え方は人によって違うだろうけど、ロックンロールで済むことが多い気がするんだよ。でも無理矢理ロックンロールをしたいってわけじゃなくて、“ロックンロール”っていう合い言葉で話をすることがポップじゃん。ひとつになりたいんだよな。音楽ってセックスみたいなもんだと思うんだよね。頭で考えるより本能的な部分だし、カテゴリーとかいらないじゃん。それが俺の中のロックンロール。お互いのロックンロールの部分が重なったところがポップなことなんだよ。