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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】アンダーグラフ(2006年7月号)- マイナスからプラスへ導く音楽のチカラ

マイナスからプラスへ導く音楽のチカラ

2006.07.01

人に影響を与える人としての音楽の向き合い方

──最初は大阪でストリートから始めて、今の状況ってかなり変わりましたよね。まわりの見る目も変わったんじゃないかって思うんですが…。

真戸原:僕ら自身も変わったところもあるだろうし、全く変わってないってのは嘘になると思う。変わって当然やと思うし、その部分をどう受け止めるかっていうので一番大きかったのが責任感。人に影響を与える人としての音楽の向き合い方っていうのをちゃんと考えて、いろんなことを出していきたい。そんなことインディーズの時には全く考えてなかったのに、まわりの見方が変わってくることで考えるようになった。

──まわりの見方が変わっていくことへのとまどいはありました?

真戸原:テレビもそうですけど、僕ら自身が情報になったときにかかるフィルターっていうのはすごいとまどいはありましたね。だから全く喋りたくなくなったり全く笑いたくなくなったりそういう葛藤が常にあって、全て跳ね返したりとかプラスに持っていくっていうのは4人で音楽やること以外は頭で考えてもできないことやなって感じはありました。あとはライブでみんなの顔が見れたら世のフィルターがどうでもそこに来てくれるんなら間違いないっていうのを感じたんです。そういう変わったものを1回とったっていうのはありますね。僕らのライブに来てくれる人ってシャイな人たちがいっぱいいると思うんです。だからこそ曲を聴いていろいろ思ってくれるんでしょうね。お互いの真ん中にある音楽で繋がれているという強さを持てるようになりました。

──先ほど“責任感”と言われましたが、注目を浴びて責任感もプレッシャーもあってよくこれだけ濃厚なものを作れるなっていうのはありますけど…。自分から発していく言葉の選び方とかメロディーの推敲の仕方とかはインディーの頃から変わりました?

真戸原:変わった変わってないで言ったら変わってないです。責任感やプレッシャーを感じて言葉を選ぶ事が背伸びをすることだと考えてて、まわりをどうしようじゃなくて歌うことだけに専念すれば届くやろう、と。それがはねのけたっていう感じでもないんですよ。考え方として消化したっていうだけで。

──より音楽にピュアに向き合えるようになったっていうのに近いですね。音楽を始めた時の気持ちのままで。

真戸原:それは今改めて考えてもホンマに変わってないと思うんですよ。イイ曲やなあって隣のおばちゃんに言われるだけですごい嬉しいし、メンバーに「この曲好きやわ」って言われるのも幸せ。その辺に対しては変わっていく必要性も今のところ感じないです。

──『素晴らしき日常』の『真面目すぎる君へ』(M-11)はインディー時代の曲なんですが、気持ち的にずっと一緒ってことなんですね。

真戸原:歌ってるときも演奏してるときもほとんど変わりはないですね。アレンジを変えるっていうのはまたチャンネルが違って、サウンドとして今出したいのはこっちというのはもちろんあるんですけど、詞を変えなかったのは作った頃の気持ちと変わってなくて、その時と同じようにまだ聴いてない人に聴いて欲しいっていうような思いがすごくあった。

──以前「この曲で自分達もすごく背中を押された」っておっしゃってましたけど、やっぱり強い思い入れが…。

真戸原:バンドとして大阪から東京に出てきて4年間ぐらい無我夢中でいろんなことやってたんですけど、4人でできる限界っていうのを感じてたんです。その時にこの曲ができて初めて電波に乗って、僕らの中で大きな一歩を進めたっていうのがあったんです。この曲があってメジャーデビューできたっていうのもあるし、思い入れはすごい強いですね。リリースするときっていうのは曲への感謝の気持ちなので、みんなに聴いてもらおうっていうのをすごく感じた。

──曲への感謝。

真戸原:ライブではやってたんですけど、もう一回磨き直してお披露目するっていうのは一番いいかなという気持ちです。

──『真面目すぎる君へ』の歌詞にも「正直者がバカを見てしまう」とあるんですが、今の時代“真面目”という言葉はとかく損なイメージがついてまわりますよね。

真戸原:そういう自分を嫌いにならないでほしいってすごく思っているんです。その人たちにまず背中を押してあげれるような曲を作りたかったし、僕らも「真面目ですね」ってよく言われるんですけど、僕らは“真面目”って言うより“真剣”なんです。同じなんですけどね。極端に言うと、広く浅く行くなら狭く深く行った方がリアリティーもあるし、やってて楽しい。意味があるって実感できるんです。

──「真面目だね」って言われると、そんなことないのにって思いますよね。

真戸原:「真剣です」って言えばいいんです。誰でもひとつのことに集中して、それがいいように向かったり悪いように向かったりすると思うんです。悪いように向かってると感じ過ぎて自分を嫌いになったときに聴いて欲しいなって思います。あの頃の僕らも逃げることはできない状況だったので“なんとかなるよ”っていう考え方には進めない状況ではあったんですけど、乗り越えた上で何かをできたらいいなって。

コミュニケーションしたい

──アンダーグラフの曲はコアな人だけじゃない人にもすごく伝わる。それがビートルズとか昔からあるようなポップスに近いスタンダード性の高い曲だと感じます。

真戸原:詞を書いて思いを伝えてコミュニケーションしたいっていう気持ちがあるんです。僕の思いを聴いて欲しいし、どう感じたかっていうのを知りたいし、自分の世界にも入るけど伝える言葉として探したり伝えるメロディーを探したりっっていう作業はよくあります。

──だから誰でも受け入れられる曲になるんですね。アレンジのほうは相当時間をかけられるんですか?

真戸原:かかりますね、うちらの場合は。

──難産の感じで?

真戸原:そうですねぇ(苦笑)。

中原:すんなり出てくるものをやたらと否定したがる(笑)。シンプルなリズムが嫌いなわけじゃないのに、ちょっとひねった自分達らしいと勝手に思ってるらしさを作り込んだり、途中でスタジオ入ったときに沈黙になることもある。それでも満足いくものを作りたいし、メロディー・詞がどれだけ聴き手側に伝わったり、ライブを想像したりとかいろんな方向に広がっていくので、土台だけはしっかり自分らで作らないとぶれていくのもイヤだし、そういう意味ではこう……難産ですね(笑)。

──ファースト(『ゼロへの調和』)のレコーディング経験もあって、ノウハウも拾得されたと思うんですが。

真戸原:機材に詳しくなったりとかの知識はありますけど、何もないところから始めて曲だけに集中するんですけど、メジャーデビューしてる人はアレンジがポンポンできんねんなぁって勝手に思い描いていましたけど僕らは…全然できない(笑)。

中原:そういうもんだよね。1枚目から2枚目のレコーディングで音作りとかはいろんな知識も得たしっていうのでこだわりがでてきて楽しいんですけど、さらに首を絞めてるっていうところがある(笑)。

──やりたいことが増えますもんね。アレンジには毎回島田昌典さんを迎えて、過不足なくジャストなアレンジですよね。

真戸原:一度詰め込んで聴いていく作業っていうのもあるし、気持ちいいところっていうのは僕ら4人も島田さんもなぜか一緒で、ずっと一緒にやっていけるっていうのはいいですね。

──ところで『枯れたサイレン』(M-9)だけちょっと違った気がしたんです。今までの楽曲が喜怒哀楽で言ったら“喜”と“哀”を足して“楽”になる曲だと思うんですけど、この曲だけはストレートに“怒”が入っていて…。

真戸原:『ゼロへの調和』に入っている『シュノーケル』とか『白い雨』だったり、僕の中では怒りの部分というところを出してるつもりではいるんですよ。今回のアルバムではバンドサウンドから出てきた僕の言葉に挑戦したくて、それが『枯れたサイレン』なんです。今まではテーマも決まってたし、出てきた言葉に風景を付けてきた作業も多かった。サウンドに背中を押されて出てきた言葉っていうのが一番多い曲かもしれないんですね。

──優しさも人間の感情のひとつですけど、怒ることもまた人間じゃないですか。ライブ見たら人間臭さって出るんですけど、行かない人はわからないじゃない。そういう意味では人間っぽさを感じる1枚だなって思います。

真戸原:普段家で考えてる事がそのまま言葉になっていると考えてもらえればわかりやすいと思います。完全に自信満々の僕はいないので、全体を通してどこかしら不安感があったりするんじゃないでしょうかね。それを怒りに向けてしまったり、楽しい部分だったりとかきっとその不安感を拭っているんだと思います。

──歌詞は誰でもわかりやすく平たい言葉になってるんですけど、それで伝えるっていうのは一番難易度が高いと思うんです。誰でもわかる言葉で組み立てて口当たりのいいメロディーで広めるっていうのは、誰にでもできることじゃないと思うんですよ。誤解を恐れずに言うならば、童謡に近い。

真戸原:僕らの音楽が童謡ぐらいのランクに行ってくれれば野望を越えてますけどね(笑)。それしかできないっていうのがあるんです。難しくして英語にしてとかできないので、一番やりやすい感じではあります。

──あと『アナログcpu』(M-5)じゃないですけど、デジタル万能の今の時代に、表現の基本姿勢が手作りっていうのはみなさんの根底にあります?

真戸原:そうですね。人が作る音楽やし、デジタルでも人が作ってるんでしょうけど、特別なことをしようとやってるわけじゃなくて音楽作ることしかできへんから、人のあったかみとしてできたら最高やなとは思ってます。新しければいいって考え方は全くないです。

──ということは、最新の機材使ってるとかでは…。

真戸原:意外と使ってるんですけどね(笑)。

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