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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】花田裕之(2005年10月号)- ハイウェイをおりて自由な旅がまた始まる

ハイウェイをおりて自由な旅がまた始まる

2005.10.01

 僕は常々、花田裕之というミュージシャンは日本のロック・シーンではめずらしい存在だと思う。自己顕示欲や強烈な自己主張といったものとはおおよそ無縁に見えるが、彼が作り出す音楽は、どれも花田裕之でしかありえない不思議な魅力を持っている。そして、今や多くのミュージシャンからも圧倒的なリスペクトを受ける花田だが、バンド活動の傍らに、独りギターを抱えて地方の飲み屋でライヴをやるのが楽しいと言う。その飾らなさ、自由奔放さは、ロックが持つ一つの美学と言えるものだろう。先日、ソロ・アルバム『NASTY WIND』と、大江慎也と共演したライヴ・アルバム『ORIGIN DUO ~COUNTERATTACK』をリリースした花田裕之にRooftop恒例のインタビューをお願いした。(interview:加藤梅造)

ソロ・アルバムは一番フラットな自分

──『NASTY WIND』は、前作『NOWADAYS』から約1年ぶりのソロ・アルバムですね。その間にROOSTERSのラスト・ライヴ(2004年フジロック)があったり、ボックス・セットが出たりと大きな状況の変化があったと思うんですが、新作はそういった出来事もどこ吹く風といった感じで、実に花田さんらしいアルバムになってますね。
 
花田:普通でしょ? 曲が溜まってきたんで出そうかなって感じだから。
 
──花田さんは、花田裕之バンドの他にも、ROCK'N' ROLL GYPSIESでのバンド活動や、弾き語りのソロ・ライヴツアー「流れ」、柴山俊之さんとのユニット菊花賞など、いろいろやってて忙しそうに見えるんですが。
 
花田:でも「流れ」とかは、一人でやってるから気楽だし。ギター持って電車やバスに乗って、自由にどこでも行けるって感じやね。
 
──えっ、ギター持って電車ですか? それ、大変そうじゃないですか。
 
花田:でも、今はいいギターケースがあるから。軽いやつが(笑)。あれ楽なんよ。
 
──そういう一人旅の身軽な感じがアルバムに出てますね。放浪してる感じが。
 
花田:まぁ、スローな感じで。でも、そういうミュージシャン多いよ。この前はシャイと一緒にやったな。
 
──ライヴハウスだけじゃなくて、街の飲み屋とかでもやってますよね。
 
花田:やっぱり飲みながら観て欲しいじゃん。そういう場所も増えてるしね。
 
──結構「流れ」は花田さんの好みに合ってるんですか。
 
花田:まぁ、これが基本だなと。昔から、一人であちこちを回ってる人とか気になってたけど、ずっとバンドをやっていたから、俺にはできないなぁと思ってた。
 
──先日リリースされた旧作のベスト・アルバム『花田裕之[solo works 1990-1998]』を聴いてみても、花田さんはソロ以降もずっとバンド・サウンドを追求している感じがしたんです。特にソロの初期の頃は作品毎に新しい手法を試していたりして。
 
花田:俺も聴いてみてそう思った。アルバム作る毎になんかやらなきゃいけんような強迫観念があったもんね。それはそれで自分なりに考えてやってたからいいんだけど。
 
──今聴くと不満な点とかありますか?
 
花田:多少はあるけど、否定はしてない。
 
──花田さんのこれまでのキャリアを総じて思うのは、とにかく好きなことを自由にやってるなぁと。そういう自覚はありますか。
 
花田:最近は思うね。そうじゃない時もあったけど、なんだかんだ言いながら結局好きなことしかやってないなと。
 
──僕は『NOTHIN' ON』(2001年)以降、特にそれを感じていて、『NOTHIN' ON』『NOWADAYS』『NASTY WIND』を勝手に“放浪三部作”って思ってるんです。まぁ、今後はまた全然違うことをやりそうな気もしますが。
 
花田:でも、最近の、ソロであちこちを旅して回っていく中で、曲がポツポツと出来上がって、それが溜まったらアルバムを出すという流れはこれからも続くかな。一番フラットな自分というか。
 
──ああ、そういう意味では今作の1曲目「ハイウェイをおりて」は、そういうフラットな花田さんの姿がよく表れていると思いました。一緒に演っているのが、気心の知れた井上富雄さんや椎野恭一さんっていうのも大きいですよね。
 
花田:まず、やりやすいね。早いし。俺自身が読まれてるというか、先回りされてる感じ。暗中模索しながらやる感じっていうのもいいんだけど、今はこういうやり方がいいかなって。
 

ラスト・ライヴでけじめがついたんで、次行こうかって

──気心知れてるっていうところで言うと、同時発売の大江慎也&花田裕之『ORIGIN DUO ~COUNTERATTACK』もすごくリラックスしたいい感じですね。
 
花田:ROCK'N' ROLL GYPSIESに大江が(ゲストで)入ってやるっていうのもあって、それもいいんだけど、もうちょっとアコースティック中心でゆったりするものがあってもいいかなって。大江もこういうアコースティックな感じでやるのは初めてだったみたいで、「やってみて楽しかった」って言ってた。
 
──ラスト・ライヴの時のような疾走するROOSTERSの感じとはまた違った形だなぁと思いました。
 
花田:そういう感じが俺にもあるし、ROOSTERSは、初期の4人でガチっとやった感じ以外にもアコースティックな曲が多いしね。特に後期は。
 
──ラスト・ライヴの時は、これでROOSTERSは最後なのかっていうのがファンにとってかなりショックなところもあったんですが、花田さん自身はラストっていうのをどう捉えてました?
 
花田:ラスト・ライヴは、確かにそれまでの過去に関してけじめはつけられたっていう気はすごく強い。それがついたんで、じゃあ次行こうかっていう。あれがあったから、こういうユニットも初めてできるようになった。
 
──じゃあ、かえって自由になれたっていう感じもありますか?
 
花田:そうだね。
 

ROOSTERSはみんなのもの

──今、ROCK'N' ROLL GYPSIESの2ndアルバムをレコーディングされてますが、1stがラスト・ライヴ以前だったのに比べて、ラスト・ライヴ後となる2ndでは何か変化みたいなのはありますか。
 
花田:そういう意味で言うと、1stはROOSTERS的なものを結構意識したかもしれない。今回はそういう意識が薄れて、メンバーそれぞれが、より自分の持ってるものを出してるんじゃないかな。1stの時はやっぱり、このメンツでやるなら飛ばさなきゃいけないなっていう感じが俺はあったから。
 
──今思えばですが、あの1stに大江さんが作詞で参加したことがひとつの出発点でしたよね。
 
花田:そうやね。それがフジロックまで繋がっていったから。周りのスタッフとか、昔の仲間とかの力が大きいけど。4人だけじゃできない。
 
──石井聰亙監督のDVD『RE-BIRTH II』を観て思ったのは、映画の中にはっきりとした主役がいなくて、4人のメンバーと周りのスタッフやフジに集まったファン、そういうものの総体としてROOSTERSがいるって感じがしたんです。なんか集合意識みたいな。
 
花田:不思議だよね、なんか。バンドって普通ヴォーカルが目立つじゃん。大江も確かに目立つんだけど、それだけじゃないっていうか、全体でROOSTERSっていう。
 
──誰のものでもないって言ったら言い過ぎですが…。
 
花田:いや、みんなのものだよ。あれで、「ROOSTERSが好きなんだ」っていうのを確認できたよね。メンバーも周りも。
 
──しかもグリーンステージって、ROOSTERSのこれまでのライヴで最も大きいステージでしたよね。ROOSTERSがいつの間にか大きくなってたって感じもしたんです。
 
花田:そうだね。俺はなんにもしてないのに(笑)。
 
──それで、次のROCK'N' ROLL GYPSIESの新譜なんですけど、僕が楽しみなのは下山淳さんなんです。ラスト・ライヴはオリジナル・メンバーの4人が中心だったけど、そうすると今度は下山さんと花田さんの絡みが観たくなる。
 
花田:ああ、それ下山に言っとくよ。なんか注目されてるって(笑)。
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