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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】C-999(2005年9月号)-憂いなど蹴飛ばして 踊り転がせ生命の星を

憂いなど蹴飛ばして 踊り転がせ生命の星を

2005.09.01

昨年バンド名を"undercover"から"C-999"〈シースリーナイン〉に改名、今年に入り増子めぐみ(ds)が正式加入してバンドとしての一体感を取り戻した彼らが、全国のタワーレコード限定でシングルを3枚連続リリースすることになった。その第1弾『月とピエロと青い星』には、前作『陽炎 稲妻 水の月』で聴かれた感情の高ぶりを抑えることのできない直情的なロック・サウンドをより密度濃く凝縮させた指折りの3曲が収められている。ストイックに音楽と向き合いながらも常に遊び心を忘れず歩を前に進めるC-999、今年下半期から来年にかけてますますシーンの際立った存在になることは間違いないだろう。『月とピエロと青い星』はそれを十二分に感じさせるポテンシャルの高い作品であり、全身全霊でいい歌だけを紡ごうとする彼らのようなバンドが正当な評価を受けることを心から願ってやまない。(interview:椎名宗之)

 “歌を聴かせたい”気持ちだけは変わらない

──今年に入ってバンドにとって一番の転機は、ドラムに増子めぐみさんが正式加入したことですね。

遠藤慎平(vo, g):増子のドラムには女性特有の柔らかい感じがあったんです。彼女が入ってバンド内の一つ一つの繋ぎが柔らかく感じて、これは新しいものを作れるんじゃないかと思ったんですよ。メンバーもみんな彼女のプレイを気に入ったし。

──バンドはリズムが要だから、固定しないとどうしても不安定になりますよね。

土屋 豊(b):やっぱりそこがずっとストレスでしたね。これまでサポートでやって下さってた方はいろんな人がいて面白かったけど、同じリズム隊として絞り込んでいきたい部分もあって、それには巧い・ヘタは関係なく、正式メンバーとしてコミュニケーションをとってやっていくしかなかったですから。

──この『月とピエロと青い星』から始まるシングル3部作のコンセプトというのは?

遠藤:そういうのは特にないですけど、C-999の中では唯一音楽をやっていく上で共通項としてあるのが“自分達が本当にいいと思えるものだけを出そう”っていうことで、それは今回も一貫してますね。

──C-999としての音源は3枚目ですけど、増子さんの加入によって変わったなという確かな手応えはありますか?

土屋:そうですね。ライヴでお客さんから感じ取るパワーも今まで3人でやってきた時とは明らかに違うし、このシングルでも、意識してないけどそれに沿って変わってきてると思いますね。ドラムに合わせてと言うか、それによって出来上がった曲は以前とは微妙に形が違っていたりするし。

──今度のシングル収録曲は従来のポップさもギターのエッジの立ち具合もグッと増した仕上がりですが、エンジニアが変わったりとか、レコーディングの環境も変わったんですか?

土屋:録音状況もエンジニアの方も、前とは変わりましたね。あとは何より、僕達のサウンドに対する考え方もまた新しく変わってきているから、それらが合わさって今回の形になった感じです。変わっていないのは“歌を聴かせたい”という気持ちですね。

──レコーディングの取り組み方とかで具体的に変わった部分は?

土屋:取り組み方はそれほど変わってないですけど、僕はドラムとのリズムの作り方が前よりキッチリできるので面白い部分も増えましたね。

遠藤:歌的な面で言うと、以前は音の厚みを重視しているところがあったけど、曲自体が求めてる歌い方って言うか、もっといろんな表現方法があるんじゃないかと意識して考えるようにはなりましたね。ひとつしか表現方法がないよりも、たくさんあってそれをいろんな形でできるほうが、聴いてるほうもやってるほうも飽きないだろうし(笑)。今はいろんなものを取り入れてやってみたいという、気持ち的な部分で大きく変わったと思います。

──1曲目の「月とピエロと青い星」は、なかなか思い通りに行かない人生のメタファーとして歌詞の中にティエリという名の冴えないピエロが登場しますが、こうしたお伽噺の形を借りた物語は誰しもが共感しやすいですよね。

遠藤:そうですね。思い通りにいかないもどかしさというのは自分もそうだし、きっとみんなもそうだろうなって思いながら書いた歌詞です。自分がピエロに思える時もあれば、青い月の時だってあるし、音楽でも何でもそうなんですが、その時々の心境によって受け止め方が違ったりするんだと思う。いろいろとつまづくことはあるけれど、何だかんだ言ってもみんな笑いたいし、成長して行きたい。不幸があるから幸せを感じるし、幸せがあるから不幸を感じる。どちらかが欠けてもダメだし、そういうことを繰り返しながら、ひとつひとつ学んで前へ進んでいくんじゃないかと思いますね。

土屋:サウンド的にはノリに気を付けて…あとはあまり深く考えませんでした。カラッと爽快に駆け抜けていく感じは出したいと思いましたけど。

遠藤:R&Bのリズムの使い方の面白さに着眼していて、それがきっかけで出来たメロディだからちょっと突拍子もないところはありますけどね(笑)。あまりドロッとせず、リズムの持つ爽快さを活かしたいと思ったから、歌録りは今までよりもちょっと苦戦したかな。

──2曲目の「アウトライダー」は、世の男性諸氏なら心当たりのある男の普遍的なテーマを描いた曲ですね。

遠藤:男のつまらなさと言うか、くだらないプライドと言うか(笑)。詞は結構ストレートな感じで書いたつもりではあるんですけど、それに合わせてサウンドもあまり飾らずに、豪快さを出しました。

──「強い人ねと言われた時に/ぎこちない想いが ぐっと込み上げた」という歌詞に象徴されてますけど、全然強くないのに、わざと恰好をつけて痩せ我慢するのが男の本来の姿かなと思うんですけど(笑)。

土屋:確かに男って恰好つける生き物だと思いますけど、凄いキレイごとを言うと、恰好つけて過去を振り返れるようなことをしたいですね。悪いことをして振り返れないようにはなりたくない。でも実際には消したい過去がたくさんあったり、女性に対しても強気ではいたいけれど、その実体はこの歌みたいに操られてる感が強いような気がしますね(笑)。

──この曲のタイトルの由来は?

遠藤:“アウトライダー”っていうのはカウボーイという意味があって、息を切らせて走って、向こうからやって来る獲物を追い捕まえるその姿にちょっと掛けてみたんですけど。

──だけど、“後天性後悔でどうしようもない男”じゃ、獲物も一生捕まりそうにないですよね(笑)。

遠藤:イメージとしてはそんな感じですね(笑)。

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