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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】BANDWAGON(2005年1月号)- "パンクの7インチ"感を目指した2005年型New Music

“パンクの7インチ”感を目指した2005年型New Music

2005.01.01

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう

──XTCやTALKING HEADSみたいなニュー・ウェイヴ系バンド特有のひねくれたメロディや転調が随所に聴かれて、アルバムの最後を飾る「Kill My Dance, At Heavy Metal Disco!!!」っていう曲もその典型ですけど…また凄まじくストレートな曲名ですね(笑)。
 
ナベカワ:このタイトルを思い付いた時は“オレって才能あるなぁ…”って独りほくそ笑みましたけど(笑)。ドラムのツジとギターのイケダは結構ヘヴィ・メタルに影響を受けてる世代で、僕とベースのアキモトは逆にパンクしか聴いてこなかったんです。だからメタルは憎悪の対象であり、また憧れの対象でもあるんですよ。ウチの姉がヘヴィ・メタルのバンドをやってて『ロッキンf』世代だったんで(笑)、自分がパンクに行ったのはそれに対する反発もあったと思うんです。『Kill My Dance,~』に関しては、WinkとかC-C-Bとかの質感を出したいと思ったんですよ(笑)。曲の途中のDメロなんて、もろにWinkを意識してますからね(笑)。僕らにとって本当の意味での“ニュー・ウェイヴ”っていうのは、イギリスのパンクの後に出てきた本流のそれではなくて、実は小室哲哉以前の日本のポップスみたいなものじゃないかと思うんですよ。
 
──ああ、「0909〈ワクワク〉させて」の本田恭章とかね(笑)。
 
ナベカワ:そうそう(笑)、その辺が凄く生々しいんですよ。C-C-Bも、あのカラフルなヘアスタイルはFUN BOY THREE経由だったんだなって後になってみると判るんですけど(笑)。今の若い子が純然たるニュー・ウェイヴを聴くと真新しいって思うのかもしれないですけど、僕らにしてみれば結構ダサいものだったりするんです。ただそれを普通 に聴いてきちゃったので、前科は前科として素直に白状しようと(笑)。レコーディングの時に“ダッセェなこの曲!”なんて言ってみんなでゲラゲラ笑いながらも、そのダサい曲を如何にして恰好いい曲に昇華させるかっていうのが大事だったりして。早川義夫じゃないけど“かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう”っていう、恰好いいものは恰好悪いし、その逆もまた然りっていう価値観の逆転的発想が今回常に頭の片隅にありましたね。
 
──同時発売されるアナログ7インチの「Rock The Casbah」は、BANDWAGON初の“フロア対応”という(笑)。
 
ナベカワ:スイマセン、そう言ってみたかっただけなんです(笑)。
 
──B面のL?K?Oさんによる同曲のリミックス・ヴァージョンはもの凄い破壊力で、ナベカワさんが仰るようにこれは最早ひとつのスプリット作品ですね。
 
ナベカワ:そうなんです。何度も繰り返して聴くと“あ、こんなところにも音を使ってる”って発見が随所にあるんですけど、一聴すると誰しもが必ず“ある部分”で大笑いするんですよ(笑)。とある世界的に有名な曲のフレーズが聴こえてきますから。これはL?K?O氏なりに僕らが今回提示したかったことを理解してくれたんじゃないかと思ってます。
 
──事前にL?K?Oさんと打ち合わせをされたわけでもなく。
 
ナベカワ:ええ。特に話し合ったわけじゃないですから、うまくシンクロしたんですね。結局、すべてのことはタイミングなのかなって思いますね。すべての条件が自然と合う時が必ずあるんですよ。カヴァー自体はこれからも自分達が必要性を感じたらやると思います。
 
──このミニ・アルバムで目指した“シングル感のある作品”というのと7インチを切ることは関連性がありますよね。
 
ナベカワ:はい。人間には帰巣本能があるって何かで読んだんですよ。歳を取って生まれ育った場所へと帰るように、最初にパンクに感銘を受けた人は巡り巡ってまたパンクに戻るというか。僕もその入口に立つ年齢なのかなと。今回僕が凄く意識したのは“パンクの7インチ”なんです。パンクの7インチって、出だしがもの凄く恰好いいじゃないですか? 針を落とした瞬間が一番恰好いい。曲が終わる頃に若干その感想も変わってきたりする曲もありますけどね(笑)。でも、曲の始まりが最高に恰好いいことは間違いない。そういうレコードを作りたかったんですよね。最初の一音がドカン! と来るレコードを。そうやって惹き付けてから曲の深さとか他の部分に耳をどんどんシフトしていってくれたらいいなと。自分がリスナーの立場になって考えると、試聴機で頭の1曲目に鷲掴みにされるかどうかでそのアルバムを買うかどうか結構左右されますからね。
 
──なるほど。そんなナベカワさんの思惑通りの罠に我々はまんまとハマったわけですね(笑)。
 
ナベカワ:(笑)一見判りやすそうに見えて、前回以上に曲のなかで常習性を促す仕掛けが一杯あるんですよ。そういうトラップが一杯ある音楽ほど楽しいし、長く聴けますからね。今回は曲の核だけを表出させようとして、例えばムダな間奏とかはどんどん削ぎ落としていったんですよ。その表現の一番恰好いい部分を押さえたら、曲自体が冗長になることもないですから。そういう部分も今回目指したシングル感に繋がってると思います。
 
──BANDWAGONの活動はかなりマイペースですけど、生活と音楽を巧く両立させていますよね。
 
ナベカワ:多分、どっちかが欠けても曲作りに影響するでしょうね。好きな音楽をずっとやり続ける以上、そこで楽して生きてちゃいけないと思うんです。ちゃんと厭なこともやらないと。音楽活動だけならきっと毎日楽しくて仕方ないんでしょうけど、そうなると人間っぽくなくなるんじゃないかと思うし。自分の背丈以上のことを目指すよりも、身の程をわきまえて、せめて1年後に1センチ背が伸びていればいいかなくらいに思ってるんですよ。
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