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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】CUBISMO GRAFICO FIVE(2005年1月号)- いつだって満足できる至福のポップ・ミュージック

いつだって満足できる至福のポップ・ミュージック

2005.01.01

鴨がグルーヴ背負ってやって来た

──今度の『SEEDY』はタイトルも曲名もすべて“S”から始まる英単語で統一されていてユニークですね。
 
松田:半ば強引なんですけどね(笑)。曲の練習をする時とかにいつも仮タイトルを付けるんですよ。今度のアルバムの曲がだいぶ出揃った時に仮タイトルを並べてみたら、たまたま頭文字が“S”の曲が半分くらいあったんです。それじゃ中途半端で気持ち悪いなと思ったので、いっそのこと全部“S”で始まる曲で統一しようってことになりまして。シゲ(SHIGE)っていうベーシストも入ったことだし、“S”で繋がる縁も感じていたし。
 
──アルバムの印象も“sweet”で“soulful”、“stylish”に“swing”していて…と、“S”の形容詞がうまくハマりますよね。日本語で言えば“sawayaka”(笑)、ジャケットの女性は“slender”(笑)。
 
松田:お上手ですね(笑)。“sexy”な要素もありますよ(笑)。1曲目が『CINQ (four+one)』の曲をコラージュした『SKIT SKIT!!』っていうイントロ曲なんですけど、最初はイントロを付ける必要もないかなと思ってたんです。でも、『SKIT SKIT!!』っていうタイトルを付けたいが為に敢えてイントロを作ったんですよ(笑)。
 
──前作ではBooker T&The MG'sの「JAMAICA SONG」をカヴァーされていましたが、今作ではヴァネッサ・パラディの「SUNDAY MONDAYS」(当時ヴァネッサと恋仲にあったレニー・クラヴィッツが作曲)がチョイスされていて意外でした。
 
松田:昔、ヴァネッサ・パラディが凄く好きだったんですよ。この曲をカヴァーしたのは結構古くて、'98年くらいにCGFがまだ余興バンドだった頃から取り上げていたんです。この曲も、偶然にも頭文字が“S”だったんですね(笑)。今回はカヴァー曲を入れるつもりはなかったんですけど、スタッフから“ライヴでもずっとやってる曲だから、アルバムに入れたらライヴに来てくれたお客さんも喜ぶよ”って言われて。レニーの一般 的なイメージとはまた違った、甘くて切ない凄くいい曲ですよね。このアルバムの印税の一部がレニー・クラヴィッツに行くって考えると、何だか自分では面 白いですね(笑)。
 
──4曲目の「SWEEP TIMES」や6曲目の「SNOWDOME」といった曲に顕著ですが、アンサンブル感が前作に比べてより強く出ていますね。各人が元々凄腕のミュージシャンだけに演奏力は確かですし。
 
松田:そうしたアンサンブル感みたいなものは、シゲが持ってきてくれた部分だと思いますね。鴨がグルーヴ背負ってやって来た、っていうか(笑)。グルーヴ感のあるものとか、ソウルフルな感じとか、みんなやっぱり好きなんですよね。田上君も恒ちゃんも凄いソウル・フリークですし。基本的には横のノリなんだけど、と同時に歪んでもいる…そんなところを今回は出したかったんですよ。『CINQ (four+one)』の時は、前へ前へと突っ込んでいく形を優先してやりたかった時期だったんですよね。
 
──今回のアルバムでも「SOUND BWOYS FIRE!!!」や「STUPID IN LOVE」のようにドタバタしたやんちゃなパンク・チューンは健在ですね。
 
松田:はい。CGFでは、ああいった歪んだギターのパンク・ロックがやりたかったんですよ。コードもほとんど2つしか使ってないような曲を。
 
──ESCALATOR RECORDSでの松田さんのお洒落なイメージしか知らない人は度肝を抜かれますよね(笑)。
 
松田:でしょうねぇ。お洒落なイメージで語られることに何も抵抗はないんですけど、自分のなかではルーツとしてパンクの存在が凄く大きいし、今でも大好きなんですよ。2MANY DJSっていう、SOULWAXのメンバーがやってるDJチームがありまして、彼らはガレージ・パンクと打ち込みという相反するものをうまく共存させているんですよね。そういうバランスの音楽を僕もずっとやりたかったんです。ファンの立場としてライヴを観続けてきたバンドの人達と一緒に。
 
──それこそ恒岡さんのHi-STANDARDであったり、田上さんのSCAFULL KINGであったり…。
 
松田:うですね。凄く楽しそうにライヴをやってる彼らの姿が羨ましくて。こっちはDJとして独りでやってるから寂しいなぁって思ってましたし(笑)。バンドは独りじゃないから色々と大変だろうけど、それも踏まえた上でやっぱり楽しいですよ。
 
──そもそも、三十路を過ぎてバンド初期衝動が沸々と湧き上がるケースも珍しいですよね(笑)。
 
松田:僕は30になるまでギターの弦を自分で張れなかったし、チューニングもできなかったんですよ(笑)。チューニング・メーターがあるにも関わらず、どこがEなのかも全然判らなかったですから(笑)。
 
──これまではご自身のヴォーカルに今ひとつ自信が持てなかったと伺いましたが。
 
松田:ええ。自分の声に対してコンプレックスが常にありますからね。田上君はもの凄く優秀なソウル・ヴォーカリストじゃないですか。そんな人が後ろにいるから“しっかりしなきゃ”っていつも思ってますよ。まぁ、今はライヴでも割と開き直ってやってますけどね(笑)。最近は自分のキーに合わせて作ってるので、だいぶやりやすくなってきてますし。
 
──ソロの場合は全部の責任を自分が一身に背負わなければなりませんけど、こうしてバンドをやる際には責任も等分ってことになりませんか?
 
松田:いや、だからこそ余計しっかりやらなきゃと思いますね。オケが出来上がった時に、それを生かすも殺すも歌だなと思うんです。だからオケが出来上がっていく段階でだんだんと食事がノドを通 らなくなって、つい現実逃避で酒ばかり呑んじゃうんですよ(苦笑)。ただ、歌入れの時に田上君が的確なアドバイスをしてくれるので、そこには勇気づけられてますね。
 
──じゃあ、ヴォーカリストとして非常に勉強になった作品でもあるわけですね。
 
松田:はい。まだまだ勉強中の身ですけどね。もっと歌を頑張りたいとは思ってますよ。もう少し巧くできるはずですし。まぁ、僕がそんな気張って唄い上げてもしょうがないんですけどね(笑)。一介のミュージシャンとしては、上達過程にあるというのは幸せなことなんです。目の前にハードルがあるほうが頑張れるからいいんですよ。
 
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