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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】THA BLUE HERB(2004年10月号)- 街の名前が変わろうとも 日本語で 俺達が伝えるべき事は1つ

街の名前が変わろうとも 日本語で 俺達が伝えるべき事は1つ

2004.10.01

 ザ ブルーハーブが、'04年末をもってすべてのライブ活動を一時休止し、サイトも閉鎖する。新たに始める為に、終わらせる。彼等は、「終わらせる」為に"TERMINATORZ TOUR '04"で11月19日の北見を皮切りに全国19ヵ所を廻り、12月10日にアナログのみでシングル『ROADS OF THE UNDERGROUND』を、1月28日に2枚目となるレーベル・コンピレーション『ONLY FOR THE MIND STONE LONG』をリリースする。ザ ブルーハーブのラッパーであり、レーベル主宰者でもあるILL-BOSSTINOに現在の心境を訊く。(interview:池田義昭)

人間が進化するには独りになるしかない

──まずは新曲の話から聞かせて下さい。セカンド・アルバム『SELL OUR SOUL』をリリースして以降、シングル『未来は俺等の手の中』、サントラ『HEAT -灼熱-』もそれぞれある意味テーマありきだったのかな、と。今回の新曲『ROADS OF THE UNDERGROUND』はザ ブルーハーブの今がものすごく出たものなんだろうと。この曲を今、出そうとしたのは?
 
ILL-BOSSTINO:やっぱり今年で終わらせるのがでかいね。今年で終わらせるから、終わらせる為の曲。今回は終わらせることが大前提にあったから。
 
──'05年はライブを一切やらずに音源制作に専念するっていうのを決めたのはいつ頃?
 
ILL-BOSSTINO:今年の夏頃だね。
 
──それは何か理由があって?
 
ILL-BOSSTINO:サード・アルバムを作ることが俺の頭にはあって。オレにとって次のアルバムのタイムリミットは'06年なんだ。ライブをやりながらアルバムを作るつもりでいたんだけど、やっぱりライブやホームページであったり発言の場所があると、考えてることがどんどん出ていくんだよね。溜まっていかないんだ。シングルは作れても、オレがいつも喋ってることをアルバムで聴いても新鮮味がないわけさ。成長や進化を見せないと、良いアルバムを作れないと思ったから。
 
──セカンド・アルバムを作った時も、「その時までのすべてを出し切った」と言ってたでしょ。「そこから人間的な成長がなかったら次のアルバムは作れない」って言ってたのを覚えてますよ。
 
ILL-BOSSTINO:そうなんさ。他のミュージシャンのことはよく判らないけど、オレ等は契約もしてないしさ。全部自分で決めなきゃだし、出すスパンもそう。そうなると(アルバムは)自分の人生の節目節目のものなんだよ。ライブをやってると、オレ自身が成長する時間がなくて。ブルーハーブはいくらでも成長するのさ、ライブアクトとしてのブルーハーブはね。有り得ないぐらい進化してるしさ。でも、やっぱり.....、人間が進化するには独りにならなきゃダメだし、そういうものから離れなきゃダメだと思うんだ、オレは。
 
──今回のシングルでも「独りにならなきゃ」ってことは言ってますね。ブルーハーブのライブは、以前に比べると今すごい完成されたものになってると思うし、それは間違いなくこの3年間で積み重ねてきた結果 だとも思う。
 
ILL-BOSSTINO:そうだね。'02年からオレとDYEの進化はスタートしてるんだけど、どんどん研ぎすまされていって。隙間埋めて、隙間埋めて、挙げ句は一度も目を合わせなくてもライブ出来るようになって、さらにそこからまだ隙間探していって。これはもう死ぬ 寸前、破滅するぐらいまで行くか、ライブを一度止めるしかないと、今年の8月ぐらいに思ったんだ。ライブを止めて作品作りに入るか、ライブを続けていくかだと。ライブは作っては壊しの繰り返しだから、そんなのずっとやってるとブルーハーブを殺さなきゃいけないんじゃないかとまで思ったんだよね。ザ ブルーハーブ イズ デッドさ。それぐらい極限まで行っちゃうんじゃないかって思ったのさ。8月の段階ではオレにとってはどっちかだった。両方を平行するのは無理だと判ってたから、どっちかを選択しなきゃという所に来たんだ。それでどっちを取るかを考えてたんだけど、やっぱり次のサード・アルバムを作ることを選んで。ブルーハーブの世界観はもっと洗練されると思うし、オレのリリックもO・N・Oの音ももっと進化する余地があると思うから。8月の段階で分かれ道が見えたけど、オレはもっと作ってみたい、セカンド・アルバムを越えるものを作ってみたい、その気持ちが少しだけ勝ったんだ。それに、すべては繰り返すんだよ。またオレが'99年に『時代は変わる』を出した時のフィーリングになった訳よ。セカンド・アルバム出した時、それまでのオレ達に比べたら有り得ない枚数が売れた。その後、ハイプも増えたし噂も増えた、イメージも増えた。その時思ってたのは、これから3年くらいかけて1人1人にライブでその曲を表現して、オレがどういう人間なのかを表現すること。相変わらずライブに来ない奴とか、イメージしか知らない奴っていうのは沢山いると思うよ。でも、オレ等の音楽を好きで聴いてくれてる人達には、小さい街までは行けてないからさ、全員とは言えないけど、ほぼライブやってる時のエネルギーっていうのは伝えれたんじゃないかと思った。それで落し前つけて、終わろうと思ったんだよね。
 

お前等1人1人の為にライブをしてる

──言ってることはすごく判る。セカンド・アルバムはギリギリまで自分を出して作ったアルバム、で、それが歪曲して伝わるのが嫌だから、ライブで各地を廻って。それで正確に伝わったっていう手ごたえがあったから、次のステップに行こうと思ったわけでしょ。
 
ILL-BOSSTINO:そうなんだよね。それがさぁ、オレ等のことを名前だけ知ってる奴とか、ちょっとだけ聴いたことあるなんて奴含めたら、まだまだかもしれない。それこそホールツアーぐらいのことやんないとカバーできないかもしれない。けど、オレ等のコミュニケーションは、聴きたいと思ってくれてる人達で充分なんだよ。それがオレ等の立ってる場所だと思うし、それがアンダーグラウンドだと思ってるんだ。「誰なのボスって?」という人達の中でライブをするんじゃなく、見てる人達も実物のオレから何かを見たいとか、実物のボスはどういう奴なんだと知りたい人達が存在するからこそ、ライブを見せたいオレもいてさ。オレにとっては200人くらいの箱もでかいと思うけど、ホールと比べてそんなにデッカイ規模ではないわけよ。ただ、そういう場所をここ3年間でずっと廻ってきたからさ。色んな所でオレを待っててくれる人達がいてさ。この3年間で色んなコミュニケーションができたんだ。
 
──ライブでもよく「お前等1人1人の為にライブをしてる」と言うしね。見てる人も「自分の為にライブやってる」と思うだろうし、ライブ見てても自分の為にやってると思うもん。
 
ILL-BOSSTINO:それが一番大事なんだよ。そのマジックがすべてでさ、ホールクラスのデカい箱でやると、やっぱりね....、オレにはまだ難しいんだ。1000人が限界で、エネルギーを1000分割が限界で、それ以上だとちょっと薄くなっちゃうから。あとはひたすら数を廻るしかなくて、バンドの人達に比べたら廻ってないわけでさ。色んな街に行っても、皆リリック聴いて待っててくれるし。「よく来てくれた」って感じで迎えてくれて。それで、そいつらが思っている以上のライブを披露すると、それが本当にずっと続くと、最後には「ありがとう、ありがとう」ばっか言ってる自分がいて。「やばい、曲作んなきゃ、こいつらを次来た時に殺す曲を作ろう」って。それで作品作りのほうに目が行ったっていうのもあるから。
 
──ライブでは、まさしく自分達の極限の状態を見せ続けているしね。
 
ILL-BOSSTINO:間違いなく、それは見せてる。オレ自身登りきってるからさ。まさに“ライブ”だよね。ライブのみ。今、バンドとかラッパーもそうだけど、世の中にすげぇいるわけよ、同業者って。みんな色んなことして自分のこと知ってもらおうとしてるのさ。オレ達みたいにライブやり続ける奴もいれば、TVに出たりする奴もいるし。今、ブルーハーブはどこの街でも熱狂的に迎え入れてもらえている。オレは1回1回のマブいライブで“お客を殺す”って思ってて、その熱狂をライブだけで増やしている自信もある。オレはそれをカッコイイと思うんだ。どんなにバス走らせようが、ラジオでヘビープレイしようが、オレ等に勝てないと思う。こっちに大義がある。ライブがマブいってのには絶対かなわないんだ。......ライブなんだよ、これぞ“ROADS OF THE UNDERGROUND”。雑誌もTVも噂もイメージもさ、かなわないわけよ。そんなものは、希薄なコミュニケーションっていうかさ。そんなんでお互いなんて知れるはずないんだよ、せいぜい名前や曲名しか知れっこないんだよ。そこの場所で何が行われているかまでは知れるはずないんだよ、そこにいないと。“ライブがすべて”っていうのをやっと知ったね、ライブをやりながら。オレが今までライブをやってて、すげぇ瞬間が多いんだ。お客さんと本当にいいコミュニケーションとれたっていうね。ほんと、「ライブに遊びに来い」って、そう言いたいね。
 
──今回のシングル『ROADS OF THE UNDERGROUND』は、ライブで廻ってて出来ていった曲だと?
 
ILL-BOSSTINO:まさにそうだね。リリースの度に、ささやかながらこういう感じでインタビューも出るしさ。あと、セカンドの時はすごい数のインタビュー受けたし。でも、それはただのインフォメーションでしかないんだよ。
 
──言い方悪いかもしれないけど、人を介して伝わるものだろうから。
 
ILL-BOSSTINO:そうそう。本質ではないんだ。それは、ライブなんだよ。そうやって広がっていくことこそ、本当にそれがアンダーグラウンドだ、って。俺は今、すごい人数に支持されてるし、昔に比べたらお金もあるわけよ。それにリリースしたら、すごい数が売れるんだ。この3つってさ、オレが昔知ってたアンダーグラウンドから言うと、もはやアンダーグラウンドではないんだよ。人気があって、金があって、すげぇ数が売れるっていうのは、その3つとも持ってなかった時のオレから見たら、それはもうアンダーグラウンドではないんだ。それはもう、メジャーの域に入ってしまうんじゃないか? って所に今オレ自身いる訳よ。それでも、オレが何で自分のことを大義名分でアンダーグラウンドって言えるかって言ったら、そのライブをやってるからなんだよね。そのライブで奇跡を起こしている、初めて会った人達と感動を共有しているって手ごたえは、どの街のライブでもあるんだ。これが、アンダーグラウンドだぜっていうのをすごい感じたんだよね。
 
──でも、その3つを持つ前と持った今でも、変わってない部分っていうのがあると思うんだ。頑なにこだわってることがあるからこそ、自分のことをアンダーグラウンドだと言えると思うんだよね。変わってない部分ってどこだと思う?
 
ILL-BOSSTINO:ずっと札幌にいるのも大きいと思うんだ。どんなに大きいライブをやっても札幌に帰るしさ。札幌に帰ったら、昨日までの喧噪が嘘のように静かな毎日だしさ。そういうのが強いと思うんだけど。変わってないのは、オレはまだ上を見てるのかもしれないね。まだ実は満たされてないんだよね。昔のオレからすれば、すごいものを手にしてるはずなのに。あと、オレ等のことを認めない奴等がいることがね、オレにとっては変わってないんだと思う。そういう人達が沢山いるから変わってないんだと思う。オレ、ずっとそうだもん。オレ達のことを認めない奴等に、オレ達を認めさせる為の戦いで始めたのがブルーハーブだからさ。たぶん、それだよ。
 
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