仲野 茂 (ANARCHY) × 稲田 錠 (G.D.FLICKERS)
"アナーキー"仲野茂プロデュース、日本のロックの歴史を横断する豪華メンツが総登場するロフトの名物イベントTHE COVERと、仲野茂に反旗を揚げるが如く独自のイベントを行う"G.D.フリッカーズ"JOEプロデュースのCHERRY BOMB NIGHT。なんとこの師弟対決のようなイベントが9/11と9/12に行われる。この火花散る2Daysは果 たしてロフトの陰謀か? 高円寺にあるJOE経営のロック・バー"CHERRY BOMB"においてその前哨戦が行われた。(interview:加藤梅造)
4世代が交錯する第2期THE COVER
──1987年に始まったTHE COVERが1994年に一旦終わって、2001年から第2期THE COVERが始まるんですが、この時からJOEさんがプロデュースにかかわるようになったんですよね。
茂:アナーキーを休止した時、じゃあまたCOVERやってもいいんじゃないって話になったんだけど、久しぶりだからどうしたもんかなあって。それでJOEとダブル・プロデュースでやろうと。それ以降、俺の人脈とJOEの人脈のもっと若い奴らが集まって第2期が始まったんだ。
──THE COVERのCDの解説で平山雄一さんが“THE COVERでは4世代にわたるアーティストが交錯している”(ちなみに第1世代は、柴山俊之とPANTA、第2世代はARB、ルースターズ、アナーキー、等。第3世代はG.D.フリッカーズ、ニューロティカ、等。第4世代はWRENCH、PEALOUT、MO'SOME TONEBENDER、等)と書いていますが、要するにTHE COVERは日本の70年以降のロック史を網羅してますよね。
JOE:第2期をはじめる時、いわゆる古き良き昔のロフトの連中だけでやっても面白くないから、仲野茂の知らない若い世代も誘ったんです。それでうまく動き出したから、今は茂さんだけでプロデュースしていますが。
茂:JOEとやるようになったらどんどん人が増えて、それでロフト2daysをやったんだ(2002年4月。1日目はJOEプロデュース、2日目は茂プロデュース)。そういえばあの時JOEの日の方が客入ったんだよなあ。俺、ちょっとがっかりしてさあ(笑)。
JOE:あれは反旗の狼煙を上げたんだよ。ダブルプロデュースだとどうしても茂さんのイベントみたいになっちゃうから、俺だけで一日やらしてよって。でも、茂さんの日の方は俺的にすごい心躍るメンツだったんだよね。
茂:俺も躍ってたけど、世の中の人は躍ってなかったみたい(笑)。まあ、それですねたりもするんだけど、THE COVERはやってるほうの心が躍るってのが大事だから。まあ、JOEもこれだけでかいイベントをプロデュースできるわけだから、独立してやってくれよって。俺はその後ついてきますから(笑)。
JOE:俺もTHE COVERというイベントに参加させてもらって、それなりの結果 を残せたから、とりあえず一段落してこれからはまた別のことをやろうと。でも確かにTHE COVERはいいイベントだから、それに対抗してTHE COPYっていうのはどうかな(笑)。
茂:おお、いいね。でも、またTHE COPYのほうが客が入りそうだなあ(笑)。ちきしょー。
──誘われる方もたいへんですよね。COVERに出ないでCOPYに出たりした時とか。
茂:俺は根に持つぞ。いちいちノートにつけるからな(笑)。
政治家には何も期待していない
──今度のTHE COVERは9月11日にロフトで行われますが、これはあえてこの日を選んだんですか?
茂:いや、その日しか空いてなかったから。でも、この日にしたのは失敗だったかもしれないな。あんまり9.11のテロに対する思い入れを持たれたくないから。だって無宗教のアナーキーだもん。俺はあんまり政治的な意味合いがつかないほうがいいんだよ。
──そうですか。でもアナーキー=反権力というイメージがあるから、今の世の中まともじゃないし、やっぱりそういう意味もあるのかなと。
茂:THE COVERというイベント全体にそういう意味づけはない。ただ各演奏者の持ち時間は自由にやってもらうのがいいと思う。意味をつけるなとは言わないし、逆に意味をつけろとも言えない。俺としてはそういう事は個人でやるべきことだと思うから。この前、(ソウル・フラワー・ユニオンの)中川からある署名を頼まれた時、それについて俺は中川に自分の意見を言ったりしたんだけど、俺にとってはそういう個人と個人のやりとりが大事。なんかデカいもんにのっかっちゃったりすると、後でとんでもないことになるからさ。
──なるほど。では、茂さん個人の意見はどうですか。最近の社会に対する。
茂:そりゃおもしろくないよ。だって俺は、投票率0%を目指せ、だからね。選挙行くなと。誰に投票すりゃいいのか訊きたいぐらいだよ。だってなんであんな犯罪者が選挙に出ていいの? 鈴木宗男とか。おかしいじゃん。税金を自分の金だと錯覚してるような奴らのために俺は時間を割きたくない。俺は、日本に住んでる家賃として税金は払うし、図書館や公共施設など使えるものは利用するけど、政治家に関しては期待もないし文句もない。なにもない。だから選挙も行かない。じゃあ、あいつらが社会を好き勝手にぐしゃぐしゃにしていいのかって言われれば、勝手にやれって思う。なんか規制するんだったらその網の目をくぐってやるし、俺は俺で対抗してくしかない。ぶっちゃけ、もうこの国は終わりだと思ってるから。
──JOEさんは9.11ということに対して何か思う所はありますか。
JOE:9.11の時は、あってはいけない映像を見たと思った。なにさらすねんって。これはルール違反だと。もちろん人は好き勝手に生きていいし、国によって文化や宗教は違うものだし、俺はイスラムの生活は絶対に理解できない。はなっから環境が違うから。アメリカがいいとか悪いとかではなく、これはしちゃいかんやろうと。例えば、自分が不良だった時は、頭にきて人を殴ることはしても、いきなり相手を刺したり殺したりするのは、そう簡単にしちゃいけないという暗黙のルールがあった。9.11はもっとスケールの大きいことだけど、ああいうことがあると、世界中でもっとなんでもやっていいってことになるし、それはとても腹立たしい。俺は政治家じゃないし、なるつもりもないし、やれることっていうのはライヴをしたり、CDを作ったりすることで、言いたいことをいう場があるし、それを歌にして歌える。人に考えを押しつけることはしないけど、そこでなんか感じてくれる人がいればどんどんやるしかないと思う。
自分が与える側としてCHERRY BOMBを作った
──今度のTHE COVERにはなんとサンハウスのメンバーが揃うというミラクルが起こっていますね。
茂:今回はねえ、まあぶっちゃけ俺も年くったんだと思う。ルーツみたいなことをやれるんだったらもう一度やってみたいなと。だから俺としては感動的なことだな。そういうふうに思うことがいいのか悪いのか整理できないんだけど。でも嬉しいよ。ロッカー仲野茂としてはジジくさいかもしれないけど、プロデューサー仲野茂はTHE COVERとしてそういうものを見せれるんだったら見せたいし、実は俺が一番見たい。これは柴山さんへの(第1回THE COVERの時にサンハウスをやることを断られたことに対する)復讐だよね。やっぱり見たい。だって、俺が中学生の頃サンハウスなんて生で見れなくて、アルバムを聴くだけで頭の中はものすごいことになってたからね。あと今回は実現できなかったけど、大江慎也も呼びたかったの。大江がやっと新しいバンド(UN)を作って歌うっていうことは、俺にとってすごい幸せなことで、あいつはどう思ってるか知らないけど、俺が一番気になる歌い手だから。日本で2人いるんだよ。大江と江戸アケミ。アケミはいなくなっちゃったけど、この2人はカラッカラなわけ。この2人が乾いているから、俺はいまさら乾いたって勝てないの。でも負けたくないから俺はビチャビチャでいこうと。もうずぶ濡れに濡れてやると。その大江がまた歌い出すのはすごい嬉しいし、いつかチャンスがあれば呼びたいね。
──そしてTHE COVERの翌日がJOEさんのイベントなんですが。
JOE:これは“CHERRY BOMB NIGHT”といって、まあこのお店のお客さんはミュージシャンが多いんで、いつもは飲んだくれてるけどたまには一緒にライヴをやろうと。今度で13回目ですね。G.D.フリッカーズは今ツアーをやってるんで、この日は普段と趣向を変えて、春一番と一緒に“G.D.フリッカーズ featuring 春一番”として出ます。なんかあいつも歌手をやってるらしくて。自称だけど。
茂:まあ、あいつの場合なんでも「自称」だからな。自称・猪木とか。
JOE:あとは何回も出てるTHE DEAD P☆P STARSとsparksparks、そしてうちの店の常連で組んだセッションバンド・酔いどれオールスターズが出ます。
──JOEさんはやっぱり、そういうミュージシャン仲間の交流を大切にしたくてCHERRY BOMBを作られたんですか?
JOE:俺が若い頃、新宿ロフトでミュージシャンの先輩達からいろんな事を教えてもらったり、楽しい時間や危ない時間を過ごしたように、今度はそういうものを与える側の立場になってきたから、この店があっていいと思うし、居心地よく飲んで欲しい。実はこのカウンターの高さも昔の新宿ロフトのカウンターと同じ高さなんですよ。ミリの単位 まで。これが俺にとって一番いい居心地のいい高さなんです。