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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】THE HOMESICKS(2004年7月号)- 人間にとって一番大切な"喜怒哀楽"をガチコーンと入れたアルバムにしたかったんですよ

「人間にとって一番大切な“喜怒哀楽”をガチコーンと入れたアルバムにしたかったんですよ」

2004.07.01

 北海道出身の4ピース・バンド、THE HOMESICKSが7曲入りミニ・アルバム『NO TITLED』をリリース。ザ・ルースターズ、ザ・ブルーハーツを筆頭とする"日本語のロックンロール"を正統に受け継ぐ彼らの楽曲からは、あまりにも生々しい"喜怒哀楽"がくっきりと浮かび上がってくる。ソングライター/ヴォーカルのノザキジュンヤに訊いた。(interview:森 朋之)

365日、ロックンロールですから
──去年の後半から滅茶苦茶な数のライヴ(年間150本以上)をやってますが。
 
ノザキ:あ、はい。そうっすね。
 
──よくアルバムを作る時間がありましたねぇ。
 
ノザキ:えーと、(2003年の)10月から12月まではツアーで、1月に(アルバムを)録って、すぐに次のツアーが始まって……そんな感じですね。
 
──すごいスケジュールっすね。
 
ノザキ:でも、バンドで決めたことなので。365日、ロックンロールですから(笑)。やっぱり、実際に(バンドを)観て、感じてほしいので…
 
──ツアーの合間にレコーディングを組めば、必然的に勢いのあるテイクが取れそうですよね。
 
ノザキ:そうですね。今回は“いかにライヴに近い音にできるか”っていうことを考えていて。もちろん演奏は“一発録り”だし、演る前にがんがんテンションを上げて、照明も暗くして、ライヴハウスに近い状態でレコーディングしました。俺なんか、裸だし(笑)。とにかく、ライヴにつながるCDにしたいなって思ってたんですよね。
 
──ライヴの音に近づけるのって、意外と難しいらしいですね。エンジニアのセンスによっても左右されるだろうし…
 
ノザキ:音質ってよりも、ここ(といって胸を指す)じゃないですか? いかに魂を込められるか、っていう。一番大切なのは、そこだと思います。
 
──なるほど。確かにこのアルバムって、感情がむき出しになってますよね。
 
ノザキ:はい。とにかく人にとって一番大切な“喜怒哀楽”をガチコーンと入れたアルバムにしたい……そういうことは考えてました。
 
──いまの世の中には、喜怒哀楽が足りない、って思う?
 
ノザキ:うん、足りないみたいですね。この前テレビを見てたら“感動的なビデオを若者に見せて、どれくらい泣けるか?”っていう番組をやってて。“アホか!”って話ですよね。ビデオを見ることで、わざわざ泣こうとしてるってことじゃないですか。それはやっぱり、喜怒哀楽が足りないからだと思うんですよ。
 
──そうかもしれないですね。
 
ノザキ:僕なんか、しょっちゅう泣いてますからね。悲しい時だけじゃなくて、楽しい時や、嬉しいことがあった時も涙が出てくるので。たとえば、部活とか学園祭とか、みんなで何かひとつのことをやる時って、涙が出てくるじゃないですか。『体育祭で優勝した!』って時とか。そういう涙も、みんなどこかに忘れてるんじゃないですか?
 
──まぁ、シレーッとしてますよね。
 
ノザキ:そうそう。なーんか、かっこつけてますよね。たとえば普段はイカツイ顔をしてる人だって、嬉しい時もあるでしょ。だったら素直に喜んでいいのに、“いや、俺はこういうキャラだから”って言ったり。そんなのね、おかしいと思うんですよ。“キャラって何だよ? おまえは今、嬉しいんでしょ? だったら素直に喜べよ”って。
 
──“なんか、つまんな~い”って感じの空気を変えたい、とか思う?
 
ノザキ:そうですね。とにかく俺、ひねくれてるヤツが嫌いなんですよ。素直じゃないヤツ、っていうか。ホントはそうじゃないのに、カッコつけて冷めてるフリをしてるヤツとかね。実際、そういう人も自分の周りにいたし。高校の時は多かったですね、そういう人。
 
──まぁ、そうでしょうね。
 
ノザキ:体育祭とか球技会の時って、そうじゃないですか? “みんなで一生懸命頑張ろうぜ! とことん楽しもう!”って言ってる時に、ふて腐れてるヤツとか。ホントに嫌いなんですよね、そういうヤツ。だから俺、歌を作る時もウソがつけないんですよね。全部そのまま。いちいち説明するまでもなく、歌を聴けば判ってもらえるって曲ばっかりで。
 
──確かに。1曲目の〈友達のテーマ〉にしても、 「僕は友達が好きだよ」ってフレーズがあったり。
 
ノザキ:そうですよね。それはホントに“そのまんま”ですよね。
 
ライヴには絶対にウソがあってはいけない
──曲を作り始めた時から、そんな感じだったんですか?
 
ノザキ:うーん、そういうことを意識してたわけではないんですけど…。ただ、最初から、素直に書いてたような気がしますね。〈友達のテーマ〉もわりと初期の曲だし。
 
──あ、そうなんだ。
 
ノザキ:はい。ただ、なんていうか、一番最初は“どうしてもバンドがやりたい”ってことでもなかったんですよ。高校の時は“バンドを組んで学園祭に出れたらいいな”って思ってただけだったし、そもそも俺、人前に出るのが苦手だったので。
 
──音楽自体は、聴いてたんでしょ?
 
ノザキ:聴いてましたね。最初はパンク・バンドだったと思います。日本のバンドで言うと、やっぱりブルーハーツ。外国だとピストルズ、クラッシュ、ダムド、ラモーンズ……ジェネレーションXはちょっと判んなかったけど(笑)、その辺から入りました。その後、ガレージとかパブロックって言われるものを聴き始めて、それはパンク・ロック以上にグワーッと来ました。
 
──そこで普通は、「俺もバンドをやろう!」ってことになるわけだけど…。
 
ノザキ:そうでもなかったんですよ、それが(笑)。自分でバンドをやろうと思ったのは、高校を卒業して札幌に出てきて、たまたまライヴハウスに行ったのがきっかけですね。そこで観たバンドが、自分に火を付けてくれたというか…。そのバンド、めちゃくちゃ下手だったんですよ(笑)。でも、なんか良かったんですよね。プロでもないし、下手なんだけど、“俺はカッコイイだろ?”って気持ちがすごく伝わってきて。そのバンドを観て思ったんですよね、俺もやれる、って。まぁ、カンチガイですよね(笑)。カンチガイなんだけど、とにかくバンドがやりたくなって。最初は遊びだったんですけど、やってるうちに本気になっちゃって……まぁ、そんな感じです。
 
──で、曲を作ってみたら“感情全開”だった、と。
 
ノザキ:それは、いま考えてみると、自分のなかに溜まってた毒を出してたような気がします。そういう感覚は、いまもちょっとあるんですけど。ただ、毒が溜まってるのは、僕だけじゃないと思うんですよ。それができないから、みんな、キレやすいんじゃないかなって。素直に喜んだり泣いたりしないから、“怒り”の部分だけがでかくなってるような気がする。ちょっと話がズレちゃうかもしれないけど、俺、誰かに殴られても、そいつに向かってピース・マークをする自信があるんですよ。
 
──普段、喜怒哀楽を出してるから?
 
ノザキ:そう。ほんとにね、ほとんど怒らないんですよ。もちろん、バンド内ではいろいろありますよ。もっとこうしてほしい、ってことはたくさんあるので。でも、それってタチの悪い怒りとは違いますよね?
 
──そうですね。ただ、いくら自分が感情をむき出しにしても、それを受け取ってくれる“お客”がいないと、辛いですよね?
 
ノザキ:あー、そうですね。
 
──THE HOMESICKSも、最初から客がいたわけではないと思うし。
 
ノザキ:うん、実際に“客はひとりだけ”ってこともありましたから。正直、バンドを結成したばかりの時は“客がいねぇなぁ”って考えたこともあったし。でも、いまはそういうことも気にならなくなりました。何て言ったらいいのかなぁ……あの、俺、ライヴには絶対にウソがあってはいけないと思うんですよ。たとえばライヴ中にバッとお客さんを指さしたとしたら、それは単なるポーズじゃなくて、ホントの気持ちが入ってなくちゃいけない。そういうことは、(客が)ひとりでも100人でも同じですよね。
 
──うーん、すごいっすね、その気合い。
 
ノザキ:だから、とにかく何でもいいから、ライヴに来てほしいです。俺たちは絶対にウソをつかないし、心を裸にして演ってる。そういう俺たちを観て、何かを感じてくれたら、嬉しいっすね。
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