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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】 BOOGIE BOY IKUTO(2004年4月号)- 熊本発、鍵盤3ピースバンドが奏でる甘く切ないラヴソング

熊本発、鍵盤3ピースバンドが奏でる甘く切ないラヴソング

2004.04.26

 BOOGIE BOY IKUTO ギター一本でぶっ放す爆音ブギー・ミサイル!!  イカれたギター・サウンドとキレのある一言!! 集約するとこれが俺にとってロックンロールの集約なのかもしれない。新年会を兼ねたイヴェントでイクトさんに飛び入りでプレイしてもらった時、イクトさんに「太田さんも一緒に何かやろう」って誘われたことがある。どうしようか悩んでいたら、イクトさんが「ブギー、ブギー」って叫んでくれればいいんだよって一言、言われたことがある。そんなイクトさんがブギーなプレゼントを我々に送ってくれる。その名も『BLITZ BOOGIE/ソロでブギーをぶっ放す!!』。エレキ一本で爆音ブギーをぶちかますアルバムだ。そんな新宿のブギーマンに今日はインタビューを試みた。(interview:OH!TA/TEENAGE HEAD)

刺激的でセクシーなブルースをやりたいといつも考えている

——いきなりなんですが、イクトさんって人間に僕はもの凄く興味があるんです。自分で思うイクトさんってどんな人ですか?

イクト:どんな人ってそうだなぁ、新宿生まれの新宿育ちのギターリスト。ブルースやロックンロールを超歪んだ音でプレイする、スライド・ギター・ブギーマン!俺のブルースは聴いた奴に言わせると、ブルース、ブルースって言ってるけど、“イクトさんのやってることはパンクじゃないですか!”ってよく言われてる。その言い方、ある意味間違ってないと思うし、俺自身、世に言われてる類型のブルースにはあまり興味がない。刺激的でセクシーなブルースをやりたいといつも考えているタイプさ。実際ライヴではブルースの曲とパンクの曲を一緒にプレイしているよ。今回のCDにはブルースに傾倒する以前に影響されたパンクの曲も入っている。どんな感じかは、CDを聴いてもらえればよく判ってもらえると思うよ。ブギーが一番好きだよ。

——そんなイクトさんのイカした人生ドラマを今まで幾つか聞かせてもらったことがあるのですが、その中でも音楽的にはハウンド・ドッグ・テイラーの名は外せないと思うんです。どんなきっかけで知ったんですか?

イクト:ハウンド・ドッグ・テイラーを聴くようになったのは20代に入って、黒人のブルースが面白そうだと思ってレコードを聴きまくっていた時、ジャケ買いしたのが最初だよ。もう今から20年くらい前の話だ。最初は正直言ってあまり良いと思わなかった。あまりにも音がアヴァンギャルドすぎて、その良さが理解できなかったんだ。で、ちょうどその頃バンドやろうと思っていて、あっちこっちのセッションに顔を出していたんだ。 そんなある日、インパクトのあるドラマーとプレイする晩があった。一見して俺よりずっと年上に見えたその人が、セッションの帰り道に“このテープを聴けよ!”って渡されたテープがハウンド・ドッグ・テイラーのファースト・アルバムだったんだ。そのドラマーはジャズもやってた人なんだけど、東京ロッカーズの連中とも付き合いのあった人で、見た目はロッカーだった。ドラマーなのにいつもスライド・バーを持っていた人で(笑)、“スライドをやれよ”って俺に初めて言ってきた人だった。その後そのドラマーとハウンド・ドッグ・テイラーの曲だけをプレイするバンド〈ブギーボーイ・イクト&ザ・ハウス・ロッカーズ〉を組んで、10年くらい一緒にプレイしていたんだ。ホントにスライド・ギターが好きなドラマーで、3連のシャッフルが得意だったな。彼がいなかったら、ブギー専門のギターリストにはなってなかったかもしれないよ。

——で、95年に渡米した時、凄いことがあったんですよね。

イクト:95年に渡米した理由は、ハウンド・ドッグ・テイラーの生みの親であるアリゲーター・レコードの社長に直接会って、ハウンド・ドッグ・テイラーのカヴァーをやっていた俺を売り込もうと思って行ったんだ。それより前に俺のファーストCDとかレクチャー・ビデオとか送ってたんだけど、凄く向こうで評判よくて、それで直接行ってみようと思ってたんだ。 アリゲーター・レコードは、70年代初めからシカゴにあるブルース系の名門レーベルで、ブルースマンを目指す俺にとって、長いこと憧れのレーベルだったんだ。渡米する前に、いろいろと情報を収集していたら、アリゲーターの社長はいつも現場に行ってる“現場第一主義”の人で、なかなか捕まらないらしいと聞いていた。そしたらそのアリゲーター・レコードの社長が、シカゴに着いた次の日に会ってくれることになったんだ。それも初めて会う約束のスタジオで、ハウンド・ドッグ・テイラーの未発表テイクを聴かせてくれて、それを聴いた時はホントに感激したよ。その夜チャイニーズ・レストランで会食した後、“実は今夜マジック・スリムのライヴがあるのだが、君をゲストで出演させよう”と言ってくれた。 その晩、シカゴのノース・サイドにあるブルース・ラウンジ『B・L・U・E・S』でプレイすることになった。マジック・スリムはハウンド・ドッグ・テイラーなんかと昔一緒にやってたベテラン・ブルースマンで、彼のバンドにゲストで入れてもらってその夜プレイしたんだよ。アリゲーターの社長は、最前列で観ていた。とってもエキサイティングな出来事だった。その上〈ハウンド・ドッグ・テイラー&ザ・ハウス・ロッカーズ〉のオリジナル・ギターリストであるブリューワー・フィリップスにも会うことができた。彼から直接ギターのレクチャーを受けることができたんだ。その時の感激は一生忘れないよ。彼はとてもイカしてたよ。そしてジェントルマンだった。

——その時はまだ〈ブギーボーイ・イクト&ハウスロッカーズ〉をやってた頃ッスか?

イクト:そうだよ。メンバーはいろいろ変わってたけどね。でもバンドとしては後半の頃だよね。98年まで活動してたけど、その後は別のドラマーと2人で新しいこと始めたなぁ。98年にハウンド・ドッグ・テイラーのトリビュート・アルバムに参加できたから、自分としてはハウンド・ドッグ・テイラーのカヴァー・オンリーの活動にケジメがついた感じで、その後は新しい方向性をずっと模索していたんだ」ブルースは黒人のパンク・ミュージックなんだ。

——で、今回のアルバムに至るわけですが、完成して電話もらった時の第一声が「ソロでブギーをぶっ放す!!」

イクト:そうそう。

——もうその一言で力になりたいと決めてしまったんですが(笑)、どういういきさつで録音しようと思ったのですか?

イクト:90年代の終わりからソロで電撃ブギーをぶっ放す活動をずっと続けてたんだよ。そのうちいつかは一人でCDを作ってみようって気になったんだ。直接的には去年、代官山のワンズダイナーっていうロックンロール・ハンバーガー・レストランで演奏してた時に、今回のリアリティーが固まった感じだよ。“これなら行ける!”って、今回のCDはまさにその時のギグの真空パックだよ。

——最初はマキシシングルを作るって噂を聞いてたんですが…。

イクト:そうなんだよ。最初は4~5曲入りの、新しい名詞代わりのCDが出来ればいいと考えていたんだけど。レコーディング・エンジニアの人とスタジオの環境が凄く良かったんで、ノッて録音できたんだ。2日で12曲も録れちゃったんだよ。ライヴと同じことをスタジオでやったんだ。

——12曲もですかぁ?

イクト:それでアルバムにすることに決めた。

——そんなステキなノリの中で追加されていった曲達ってのは、やはり日々ライヴでプレイしてるものばかりですか?

イクト:そのとおり!! 今回は初の日本語オリジナル2曲、ハウンド・ドッグ・テイラーの曲を2曲、ロックンロール・クラッシックを2曲。あと、ストゥージーズの〈NO FUN〉なんかも入れたんだ。〈NO FUN〉の出来は俺も凄く気に入ってるんだ。今のライヴな感じが出てると思うよ。

——ふーむ。でもそれもソロだからこそできる荒技ですよね(笑)。ただ、聴いた印象はホント弾き語り感というより爆音でぶっ放してるってのが強いのですが、この音の分厚さってのはどうやったら生まれるんですかね?

イクト:それはギターをオープン・チューニングにして、俺の場合はオープンEチューニングだけど、スライド・ギターを思いっきり弾くんだ。親指でベース・パターン、人さし指でメロディを弾く一人で二役をやるんだよ。そうすると音像が立体的になるんだ。ライヴの時にアンプを2台鳴らすのも有効的だと思うよ。後はリズムをタメて強調しているのがポイントかな。俺はスライド・バーを、リズムを強調させるための道具としても使っているよ。ただ弦の上を滑らせるのではなく、ドラマーのスティックのように、パーカッショナルにも使う。巧くできると、ギター一本なのにまるでドラムが鳴ってるような音がするんだよ。それに、ベースも鳴り出す。

——じゃあ究極の結論としては、一人でもロックンロールはできると?

イクト:類型とは違うかもしれないけど、俺はできると信じてる。新型のロックンロールがね。元々ロックンロールのD・N・Aはブルースで出来ているわけだし。これからは一人でもやってやる!というくらいの勢いがないとダメだと思うよ。ロック・スピリットを大事にするならね。俺はそういうのをやりたいと思っているんだ。だから、一人でやっていても、“いかにロックするか”ってことをいつも考えているよ。しょぼいのは大嫌いだから、いつもギンギンな音でプレイしているよ。その音はブルースを知らない人にも受けてるよ。 そもそも、俺が好きな音楽はロックンロールだから。それをギター一本でやるのに、ブルースをヒントにしているだけなのさ。ブルースは黒人のパンク・ミュージックとも言えると思う。白人の支配する世界に楯突く、アンチテーゼの音楽。だから魅力があるんだよ!ビリビリ来るのがやりたいのさ。

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