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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】アニメスタイル(2004年3月号)- 若くて超濃いアニメファンが出てきて、それに倒されるのが僕の夢

若くて超濃いアニメファンが出てきて、それに倒されるのが僕の夢

2004.03.01

 あのパートは誰さんが、あの時に描いたんだ、という話もしつつ、アニメって絵が動いて映像になって音がついて...だから面白いんだ。そんな当たり前だけれど。当たり前すぎて忘れてしまうことを、自然に知らせてしまう「アニメスタイル」イベント。原点を見失話ないディープな内容で、クオリティが高いと定評だ。
 そのクオリティの維持は自己表現のみだけにはどうも見えない。その他に何か目的があるのではないかと思わせる。もしかしたら大いなる目標があってのことか? ステージではコメントに徹し飄々として何を考えているかよくわからない主催の小黒編集長に、なぜこのような手の込んだイベントを行ない続けるのか話を聞いて見た。(text:斎藤友里子)

何かプラスしないと、次のステップに行けないような気がして

──2001年11月からWEB雑誌名と同名の「アニメスタイル」イベントと題して早17回。そこまで小黒さんを駆り立ててるものは何んですか。
 
小黒:イベントに関してはこれ、という理由はないんだよね。色んな理由があって、やっている感じだと思う。インターネットで「WEBアニメスタイル」というのを始めたわけだけど、ネットって、それだけだと発展性がないような気がしたんだよね。それに何かプラスしないと、次のステップに行けないような気がしてイベントをやっている感じかな。それからネットって、読者からの反応があまりないので、手応えが欲しかったっていうのもある。勿論、自分が楽しいからやっているという部分も大きいし。
 
──お客さんの集まり方も面白いですよね。印象ですが、秋葉系でも中野系でもない独自の集まり方に思えます。
 
小黒:ああ、それってオタクの分類として、キャラ萌え的か、サブカル的かってこと? それと違うのか、その混合なのかは分かんないけれど、確かにイベントに来るお客さんって雰囲気は変わっているよね。特に最近、そう思う。マニアなのかなあ、とも思うし、そんなに濃い人ばかりでもないようだし。妙に真面目な人が多いし(笑)。常連みたいな人が多いんじゃないかなあ。そう言えば、アニメスタイルイベントって、最初は「アニメファンの勉強会」のつもりで始めたんだよね。最近のアニメファンって、ベーシックな知識が欠けているんじゃないか。だから、実際にビデオを観て、関係者の話を聞いて勉強しようって、企画だったんだ。やっているうちに、随分と方向性が変わってきちゃったよね(笑)。
 

正しいアニメファンから 「作画ばっかり言わないでちゃんと作品をみなさい!」と言われていた

──現在の形態は勉強会のそれではありませんが、良質のマニアを育てる土壌を作らねばという姿勢は非常に感じます。作画技術に対してのレクチャーをイベント時に多くみかけますし、それについて反応するお客さんをみる小黒さんの目が非常にうれしそうですし。
 
小黒:作画のみに拘っているわけじゃないけどね。自分はトータルなアニメマニアでありたいと思っているし(笑)。実際、出崎さんのイベントは、作画中心じゃないでしょ。だけど、ロフトプラスワンみたいなイベントで扱うのは、演出や作画が向いていると思うよ。脚本やテーマみたいな部分は、ネットや活字媒体の方が向いているんじゃないかなあ。
 
──でも、お客さんにマニアになってほしいんですよね。
 
小黒:いや、マニアはもう絶滅寸前なんだよ。いやほとんど絶滅してると言っていい。あのね、話は違うけれど、オタクって言葉が定着する前には「正しいアニメファン」ってのがいたんだよ。正しいアニメファン、マニア、ミーハーってのがいたわけ。いや、実際にはそんな人はいなくて、幻想だったのかもしけないけれどさ!
 
──はあ……。
 
小黒:作画にこだわる人は作画マニアで、メカにこだわる人はメカマニア。キャラに熱を上げる人はミーハーと呼ばれていたわけ。僕らみたいな人はマニアで、正しいアニメファンから「作画ばっかり言わないでちゃんと作品をみなさい!」と言われていたわけだよ。つまり、一段ランクの低い存在だった。でも、正しいアニメファンは絶滅して、オタクがアニメファンの主流になってしまった。主にはかつてミーハーと呼ばれていた人達が主流になったんだと思う。オタクが増えた分だけ、マニアはちょっと立場がよくなったんだよね(笑)。ただ、マニア自体はほとんど死滅していると思う。今の若い人たちにマニアになれって言っても難しいだろうなあ、というのはイベントをやっていてもわかるよ。もっと濃い人が出てきてもいいと思うんだけどね。
 
──私なんかもそうですが絶対裏切らない面白さや得るものが保証されないと見るに至りませんよね。そういう発想だともしかしたら情熱の傾き方が全体に行かないのかもしれません。
 
小黒:そうね。その事の魅力を信じて疑わないくらいじゃないと、マニアにはならないかもね(苦笑)。
 

超濃いアニメファンに倒されたい

──アニメスタイルイベントは、とにかく見る機会を作ると。
 
小黒:まあ、そんなに堅く構えてもね。若くて超濃いアニメファンが出てきて、それに倒されるのが僕の夢なんだけどね。
 
──なんですか、それ?
 
小黒:RPGもののラスボスみたいな感じでさ。正しい若い勇者に倒されるのよ。「小黒、お前のアニメは間違っている!」とか言われてさ。 それで倒される時に「ふっ、ワシはこうして倒される日を待っていたのかもしれんな」とか言って息絶えるの。これを人に言うと、必ず笑われるんだけどさ(笑)。
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