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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】CURSIVE(2003年10月号)-解散を経験して、カーシヴが自分の人生において最高のものだと気づいた

解散を経験して、カーシヴが自分の人生において最高のものだと気づいた

2003.10.01

USインディ・ロックの至宝、1年越しの来日が遂に実現! インディ・ロック・シーン最強の"知られざる"バンド=カーシヴが遂にやって来る。昨年にも来日が計画されながら、中心メンバーのティム・ケイシャーが急病で倒れたため、あえなくキャンセルとなってしまっていただけに、今回の1年越しでの日本ツアー実現には本当に感慨深いものがある。先月からイースタンユースと怒濤の全米22ヵ所連続公演を敢行している彼らだが、そのままイースタンに帯同する形で東名阪3ヵ所をまわる他、ファウルとも対バンする形で下北沢シェルターを始め京都・大阪で1公演ずつライヴを行なう予定だ。絶対に見逃すことはできない。 先頃になってようやく(ある意味ではタイミングよく?)日本盤がリリースされた最新傑作アルバム『THE UGLY ORGAN』(本国アメリカでは3月リリース)を聴きつつ、以下のティムへのインタビュー記事を読みながら、きっと素晴らしい共演となるに違いないステージへと思いを馳せ、それを実際に目の当たりにする瞬間を心待ちにしていてほしい。そして当日の会場では、みんなで「オー! カーシヴってホントにクール!」と叫ぼうぜ。(interview:鈴木喜之)

解散を経験して、カーシヴが自分の人生において最高のものだと気づいた

──幼少時代には、どのような音楽環境に育ったのですか?

ティム:僕には兄貴と姉が大勢いて、小さい頃からたくさんの良い音楽と出会う機会を作ってくれたんだ。やがて、幼馴染みでもあるベーシストのマット(・キャビン)と一緒に、早い時期からヴァイオレント・ファムズやザ・キュアーを聴き始めるようになった。それと同時期に、両親からはサイモン&ガーファンクルとか、キャット・スティーヴンスといった偉大なフォークのソングライターを教えてもらったんだよ。

──自分でもギターを持って歌おうと思ったきっかけはどんなことだったのでしょう?

ティム:13才の時、何かをやってみたくなったんだ。当時の自分は、友達とつるんだりすること以外には何もやってなかったし。で、姉の1人がギターを持っていたんだけど、それを借りて昼夜を問わず弾きまくり始めたんだよ。義理の兄がくれたソングブックに載っていたポール・サイモンの曲を練習しながらね。

──当時よく聴いていた音楽や、影響を受けたアーティストはどんなものでしたか? 生涯のフェイヴァリット・アルバムなども合わせて教えて下さい。

ティム:影響という点では、主にトップ40ものを聴いていたな。なぜって、自分が書いているのと同じようなジャンルの音楽からはどんな影響も受けたくなかったから。フェイヴァリット・アルバムは……、ヴァイオレント・ファムズのファースト・アルバムは、本当に偉大なアルバムだと思う。

──やがて幾つかのバンドを経て、カーシヴを結成することになるわけですが、このバンドを組むにあたって、あなたはどのようなヴィジョンを思い描いていたのでしょう?

ティム:カレッジへと進んだものの、誰もが『まだ音楽をやり尽くしていない』と感じていたので、カーシヴをスタートさせることにしたんだ。それ以前のバンドでは、まだ自分達を真剣に受け止めていなかった。10代だったし、バンドをやるってことに関して人の目を気にしていたりもしたしね。で、カーシヴでは、曲作りに最善を尽くし、それを信じて、もしみんなにそれが受け入れられない場合にはそのことに対処していこうって決めたんだよ。

──あなた方はネブラスカ州オマハを拠点に活動していて、所属レーベルも当地を代表するサドル・クリークですが、地元にはどのような音楽シーンがあったのでしょう? その様子と、カーシヴが地元のシーンとどのように関わってきたのかを教えて下さい。

ティム:オマハには常に素晴らしい音楽が存在している。そうでないものも少しはあるけどね。僕らはこのシーンの浮き沈みをずっと見てきたけど、今はとても健全なコミュニティになっていて、たくさんの素晴らしいバンドがたくさんの素晴らしいショウを行なっているよ。

──レーベルメイトでもあるブライト・アイズとは、お互いの作品に参加し合うなど、特に交流が深いようですが、彼らとはどのように知り合ったのでしょう? そして、彼らのことを同じミュージシャンとしてどのように評価していますか?

ティム:僕らは彼らと同じ学校に通っていたし、コナーと彼の家族とは一緒に育ったようなものなんだ。だから、みんなとても愛しているよ。コナーはとても優れたソングライターで、そのハイスタンダードな歌詞で僕らに影響を与えていると思う。

──「ブライト・アイズのコナー・オバーストが新世代のボブ・ディランだとするなら、それに対して、カーシヴのティム・ケイシャーは新世代のジョン・レノンだ」なんていう論評もどこかで見かけましたが、このような言われ方についてはどう感じますか?

ティム:評論家先生にそう言ってもらえるのは嬉しいけど、メリットがあるとも思えないね。その種のコメントは、ハイプってやつを生み出すための誇大キャッチコピーを作ろうとしてるような人々に関係するものだと思う。

──カーシヴは、セカンド・アルバムを完成させた後、しばらく活動を停止してしまいますよね。その原因は何だったのでしょう?

ティム:僕は自己破壊的な性格だと見られてきたりもしたけど、実際、僕にとって長い間ひとつのことに専念するのは大きな葛藤を伴うものなんだ。いったん解散したことは、その良い例だね。でも、その時の経験を通 じて、カーシヴが僕の人生において最高のものだってことに気付かされたよ。

──再結成して最初に制作された『CURSIVE'S DOMESTICA』では、いっそう音楽性の幅を広げていこうという意志が色濃く作品に反映しているように感じられるのですが、この時あなたの中ではカーシヴの新たな音楽的展開はどれくらい意識されていたのでしょうか?

ティム:再結成した時点で、自分たちの音楽を可能な限り革新的にすることが重要であり、アルバムごとに音楽的な成長をし続けていきたいんだってことを、メンバー全員が意識してたと思う。

日本のオーディエンスの前でプレイする機会にエキサイトしている

──続く5曲入りEP『BURST AND BLOOM』からは、チェリストのグレッタが加入しますが、ここで通 常のロック・バンドにはあまりいないチェロという楽器を編成に加えようと思ったのは、どのような考えがあってのことだったのでしょう。

ティム:僕らは、それまでの自分達のサウンドを再構築するためにも、新たな要素を必要としていた。その点でチェロは、ムーディーでドラマチックな音楽を完成させるためには完璧な楽器だと思えたんだ。

──次に、イースタンユースとのスプリット盤『EIGHT TEETH TO EAT YOU』を制作しますよね。これにはどういう経緯があったのでしょう? イースタンユースについてどのように評価しているかも合わせて聞かせて下さい。

ティム:イースタンユースは本当に凄い音楽を作り出していると思う。とりわけ、日本語で歌ってる点については、心から尊敬するよ。特に英語が支配的な音楽産業界においてそうするってことは、自分達自身の文化に対する素晴らしい誠実さの証明だよね。彼らは、ワシントンD.C.のハードコアと、日本の音階 、詳しくは知らないんだけど、おそらくは日本の伝統的な音楽に基づいたものだろうね 。その両方から影響を受けた、まさに“東洋と西洋の出会い”というべき、独自の音楽解釈をやってのけている。僕らはアメリカのリスナーに向けて、自信を持って彼らを紹介するために、ぜひ彼らとのスプリット作品をリリースしたいと考えたんだ。

──スプリット盤に収録された楽曲を聴くと、チェロを使ったアレンジが『BURST AND BLOOM』よりも大胆に効果的な形で実現できているように思います。あなた自身はこのスプリット用に完成させた4曲にどのような手応えを感じましたか?

ティム:スプリット用にレコーディングした4曲は、チェロが入ることを念頭において書いた最初の曲だったんだ。だから『BURST AND BLOOM』の時よりも、チェロのパートがもっと明確にアレンジされているってわけ。

──昨年、そのスプリット盤のリリースを受けて企画されていたイースタンユースとのツアーは、あなたが急病で倒れ、緊急手術を受けるという事態となったため、残念ながらキャンセルになってしまいました。しかし今年3月にリリースされたアルバム『THE UGLY ORGAN』は、とうてい病み上がりとは思えない、圧倒的な力強さが漲った傑作になったと思います。大病を患った経験が新作の内容に反映していると思いますか? また、人生における困難を乗り越えることと傑作を生み出すことに相関性はあると感じますか?

ティム:確かに関係することではあると思うけど、今作の場合はその限りではないと思うよ。アルバムのほとんどは手術の前に出来上がっていたからね。つまり、アイディアはすでに揃っていたというわけ。それに、僕はアルバムを作るにあたって、それほど早くエモーショナルなレヴェルで元に戻れたとは思ってないんだ。だから、作品のほとんどが出来ていて良かったよ。

──ところで、ここ最近になって、アメリカのインディペンデント・ミュージック・シーンが非常に活発になってきているような印象を受けるのですが、カーシヴもその中で活躍する当事者のひとつとして、再びシーンが面 白くなってきているなという実感を持っていたりしますか? あなた自身のインディ現況に対する雑感を聞かせて下さい。

ティム:質問する相手を間違ったね。僕が今興味を持っているのは、ビヨンセやマーヤなんかのほうさ(笑)。彼女達のレコードを買うことはないけどね。もちろん、僕はサドル・クリークに所属しているバンドの大ファンだし、確かにここにきて、たくさんの良い音楽が出てきていると思うよ。

──9月からは、去年のリヴェンジとなるイースタンユースとの全米ツアーが行なわれ、そして10月には今度こそ待望の初来日公演が予定されていますよね。どんなツアーにしたいと思っているか、抱負を聞かせて下さい。

ティム:いやー、そういうのは特にないよ、ほんとに。でも僕ら全員、日本に行って、イースタンユースの演奏を見て、新しいオーディエンスの前でプレイする機会を持つってことにエキサイトしてる。今回それら全てが実現できれば、それだけで大成功と考えていいんじゃないかな。

──では最後に、来日公演を待ち焦がれている日本のリスナーにメッセージをください。

ティム:くー、こういうのって何を言うべきなのか判らないなぁ。とにかく、日本のみんなと一緒に繰り出して、一杯やれれば嬉しいね。

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