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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】 KEMURI(2003年9月号)- 自分の人生は絶対に後戻り出来ない

自分の人生は絶対に後戻り出来ない

2003.09.01

 2年余りという少し長いインターバル後にリリースされたKEMURIのマキシシングル「葉月の海」は、奇を衒うところなど微塵もない、まさに本領発揮なKEMURIサウンド! 数々の野外フェスティバルを終えて、これから始まる全国ツアーを前にしたKEMURIの伊藤ふみお氏にインタビュー敢行!(interview:CHIE ARAKI)

36歳のスカパンクが一番好き!

──KEMURIのマキシシングル「葉月の海」がリリースされましたね。待ちに待った!
 
伊藤:(「葉月の海」は)津田紀昭が作曲なんだけど、やっぱり自分たちの年代にあったような曲ですよね。36歳のスカパンク、ちょっとオッサン臭いスカパンクでしょ(笑)。
 
──青臭くはないですよね(苦笑)。
 
伊藤:そうね。あんまりポップすぎないスカパンクが作りたいっていう事を、最初に聞かされてね。最初に楽曲があがった訳なんだけど、日本語でやるのか英語でやるのかっていうのは僕の中では決めてなかったんですよ。
 
──歌詞の冒頭、「オオマツヨイグサ」という言葉がとても印象的です。普段意識するような花じゃないのに、8月という季節をイメージしやすいなって思います。
 
伊藤:最初に何かのメロディーに乗っかって出てきたんですよ。この「葉月の海」にしてもそうなんだけど、自分としては日本語の歌詞にするんだったら、歌詞が歌を聴いた感じと、自分の眼で追って読む感じが違う印象にしたいなって、昔よりも強く思うようになっているんです。年を重ねて来たっていうことになるのかな?! 簡単にいえば。自分たちにしか出来ないことがやりたいんですよ、それは絶対。そうやってKEMURIはずっとやってきている訳だから。楽曲的に誰かに似ているだとかじゃなくて。結局音を創って、自分たちが一番得意な事をやるべきだと思うんですよ。それは常に目指してやっていることなんだから。だから、KEMURIは最初に掲げたスカパンクでずっといいと思う。いろんなプローチがあると思うけど、それをやたらめったら試そうという気はあんまりないですね。
 
──それは、バンドとしての音楽の幅を無理に狭めているという考えの下ではなくですよね。
 
伊藤:もちろん。新しいことをチャレンジしないということじゃないですよ。今回にしても、新しいアプローチが無いわけでもないし、大きな流れで今までと一緒といえばそうだと思うし。そう、バンドがいい感じなんですよ。ホント、いい感じにやれているなと思います。KEMURIを始めたのが20代後半でしょ。好きなことをやらないでどうする?! 好きな音しか出来ない! んですよね。(スカパンクが)好きだったし、今も一番好き。「NEW GENERATION」がKEMURIで一番最初に出来た曲なんですけど、未だに一番大好き! ずっとこの先やっても飽きないし、好きだという気持ちに変わりはないと思う。それはやっぱり、今までにいろんな挑戦もしたし、いろんな失敗もしちゃったから言える事になるかもしれないんですよ。
 

やりたいことを楽しんで

──少し話が逸れますが、「濁世の水」にかなり否定的な言葉が並んでいますよね。P.M.A.って、揺るがない絶対的なものに捕らえがちだけど、その実は人間くさく揺れ動く様もあるんだなぁって。どういう訳かホッとする自分がいたりして。
 
伊藤:こうありたい自分がパーフェクトな自分であるとしても、そうならないよね。やっぱり、清らかな部分だけじゃなくて、どうしても濁っているよね。でもなるべく清らかになりたいなって思うから、すこしでも頑張る自分が出てくるんだけど。でも、濁っている自分があまりにイヤになっちゃうと、本当に身動きが取れなくなっちゃうんだよね。だから濁った部分も少しは認めて、自分の道を進んでいかないとね。
 
──なんだか、私にはすごく現実味と熱を持ってこの曲が突き刺さって来ちゃって(苦笑)。そんな事も含めて、今回のマキシシングル、私もすごく好きです!
 
伊藤:ありがとう。この作品を創ったときに、自分たちでもすごくいいものが出来たって実感できたんですよ。「葉月の海」でいいんだ! って思えたのは、FRFで56歳のイギーポップとか、ジョン・メイオールとかが、ずーーーーっと自分たちの音楽をやっていることを目の当たりにしたからなんですよ。凄かったんですよ。クオリティーといい、積み重ねてきたであろう凄みを見せつけられたよね。
 
──自分の音楽を積み重ねているんだけど、古くさくないし、音楽自体も止まっていないよっていう感じでしたよね。
 
伊藤:そう。いろいろあるけど、KEMURIもKEMURIの音楽をやればいいんだって教えてもらった気がしてね。頭で考えてもわからないんですけど、音楽を続けていくことは、出来る人にしか出来ないことなんですよね。やりたくても、バンドが解散してしまう場合もあるだろうし。うまくいかないときも沢山あるし。だったら、やりたいことをやるしかないんだって。それが続けるコツなのかもしれないし、無理してもいいものは出来ないしね。自分の人生は絶対に後戻り出来ないじゃない。その僕の人生を彩 るのに音楽があるわけだから、とにかく一歩一歩でもいいから、やりたいことを楽しんでやることだよね。
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