Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】島田洋七(2003年3月号)- 笑魂伝承にすべてを賭けた全身漫才師を直撃!

笑魂伝承にすべてを賭けた全身漫才師を直撃!

2003.03.01

島田洋七──。B&Bという漫才コンビのツッコミ担当で、1980年代の漫才ブームの立役者と言われている存在である。当時の人気は壮絶極まりなく、ツービートや紳助・竜介をも凌駕するほどのものであった。しかし、漫才ブームも終焉を迎え、後輩の明石家さんまや島田紳助【註1】が『ヤングオーオー』等で人気者になっていくのと対照的に、いつのまにかB&Bはブラウン官から姿を消してしまったのだ。頂点を極めながらもドン底に落ち、そしてまた這い上がってきた男、島田洋七。今回は審査員として参加された"M-1"の話を中心にインタビューさせて頂く。有馬温泉で、B&B、今いくよ・くるよ、ザ・ぼんち、オール阪神・巨人、島田紳助、池乃めだか、桂 きん枝、桂 小枝、太平シローという豪華な面子での新年会が予定されているらしいが、この時点ではまだ終わっていないため、詳細が訊けず非常に残念である。(interview:中川けんた)

若手と探りながら話していくのが面白い

──まず、『笑魂伝承』は振り返ってみてどんな感じですか?

洋七:もう6回やろ? そりゃ無茶苦茶おもろいな。これが何かに繋がればいいなと思ってる。

──今回、テツ and トモの回を観てても思ったんですけど、やっぱり真剣な話ができるってのがいいですよね。

洋七:そうそう。時間も関係ないし、テレビ的なことじゃないからな。テレビなんて、枠決まったらそこまで話せないことあるし。

──じゃあ、このイベントの一番の魅力ってのは、そこですかね?

洋七:そう。タレントのゲストを完全にばらしてしまえる。

──楽屋とかでは、師匠クラスになると若手は簡単に喋れないですからね。

洋七:せやな。向こうがな。俺は別にええねんけど。舞台になれば、話変わってくるからな。若手あんま知らんけど、そこを探りながら話していくのもおもろいねん。

──で、やっぱり芸人のほうが絡みやすいってのはあるんですか?

洋七:そやな。ツッコミ、ボケを知っとるからな。

──僕が観てて思ったのは、2回目の大槻ケンヂさんの時はあんまり噛み合ってなかったなぁと思ったんですけど。

洋七:噛み合わんでええねん、ああいうのは。ミュージシャンやから。お互い訊いたり、訊かれたりで。そんな、漫才みたいにはならへん。あれでええ。充分オッケー。そんな、ずーっとミュージシャン捕まえて笑わされへんからな。

──個人的に一番面白かったのは、浅草キッドの時に、漫才ブームの裏側の話やたけしさんの話が聞けたことですわ。

洋七:まぁ、俺も一番よく知ってるからな、浅草キッドは。玉袋、預かってたからな、半年くらい。

──そうなんですか?

洋七:弟子の頃、「洋七、預かってくれ」ってたけしに頼まれて。あいつら、最初から漫才希望やったからな。「漫才やるんやったら、洋七んとこ付けぇ」ってな。軍団には、漫才するような奴おらんかったからな。目立ったらええと思っとる軍団やから。だから、やっぱり確実に残ってきたのは浅草キッドやろ? ちゃんと、芸をな、10年かかってもコツコツコツコツやってきたからや。他、何処おるかわからん奴一杯おるがな。風呂入って「熱ち熱ち!」とか。前から言うとってん、たけしが。「お前ら、芸せんか!」って。でも、誰もせーへん。苦しいからな。しんどいから。で、今になって「どーしょう、どーしょう」って。やっぱり、ちゃんとしとけば役たつねん。

──今後は、大御所同士の絡みも観たい気がするんですけど。

洋七:吉本以外やったらええけどな。吉本やったら、みんな知ってるもん。きん枝兄やん、呼んで何訊くねん? ってな。「おまえ、よう知っとるやないかい!」で終わりや。

──たけしさんとか、プライベートで仲いいじゃないですか? でも公の場で絡んだのって『たかじん NO バー』【註2】くらいですよね?

洋七:あれくらいやろな。あと、『北野ファンクラブ』で漫才やったけど。でも、イヤやなぁ。何かイヤやなぁ。

──大御所同士の絡みって面白いと思うんですよ。『松本紳助』も、番組の内容以前に松本(人志)さんと紳助さんの因縁を背後に感じますから。

洋七:あれはおもろいな。あれで、松本ポイント上がった思うで。先輩の前では敬語になるやろ? ちゃんとしてはるってイメージが世間についたわ。本当は視聴者に見したらあかん一面 かもしれんけどな。

──他には、越前屋俵太【註3】さんとか、凄くプラスワン的な感じするんですけど。

洋七:俵太、遠い所住んでるやろ? 京都の。呼ぶの大変や。ロフトは儲かりもせんのに(笑)。なんぼか払わな、あんまし言いにくいて。みんなやってみたいよ。いくよ・くるよとかああいう所で喋ったらどうなんのかな? って思うけど、年間6人やからな。ふた月に一回で、やっぱり難しいな。

ますだおかだの優勝は妥当やな

──で、“M-1”【註4】の話をしたいんですけど。ゲストに来てくれた人で決勝まで残ったのは、ますだおかだとテツ and トモじゃないですか。実際に審査員として出てみて、あの大会はどんな感じでした?

洋七:やっぱ、優勝は妥当やな。漫才ってくくりをつけたらな。ただ、よーいどん笑わし大会やったら、違ったかもわからん。

──漫才抜きでほんまにおもろい奴を決めたら、ですか?

洋七:でも、あん時はあれしかなかったな。

──ますだおかだだけ? 正統派と言えば正統派ですね。

洋七:あとは、好き嫌いの問題や。結構、緊迫してるから。ただ、テツ and トモを漫才と取んのかどっちかみたいなところがあったから、審査員みんな引いてただけや。

──みんな、引いてたんですか?(笑)

洋七:一応、漫才グランプリやからな。吉本的に言えば、漫才に楽器はいらんねん。「喋くりせんか!」ってな。

──師匠、基本的に点数は高かったですよね。点数って、どういう基準で付けられました?

洋七:やっぱり、レベル高いところで決勝させてあげなな。せっかく1,750組から選ばれてんねんから。とりあえず、70点が普通 かなって。

──低い点数とか付けたりするのはダメですか?

洋七:決勝戦でな、60点、60点、60点…やったら決勝戦ならへんやろ? 80点、90点付けて、観てるほうにも「おお、上手いな」って錯覚させな。決勝戦やけど、ひとつのショーやねん。バラエティやねん。それをな、50点とか55点とか付けて「下手!」とか言うべきものちゃうやろ。客、引いてたもん。

──画面からでも伝わってきましたよ。(西川)きよし師匠、凄いフォローしてましたもんね。

洋七:そうやろ。ああいうのは良くない。大概や。己が受けたいと思ったら、大きな間違いやからな。変わってるわと思うわ。受けたかったんちゃう? 向こうを盛り上げな。こっちは有名人ばっかりやねんから、そりゃ盛り上げようと思ったら盛り上がるかもしれんけど。こっちは、審査員やって。自分らが出て来る時にああゆうこと言われてみ、冗談でも。「おもろない」とか「出て来るようなものじゃない」とか。

──みんな、凄い緊張してますよ。

洋七:そうやねん。それやて。みんな緊張して、ドキドキやねん。誰も舐めてかかってきてないねん。あんなん、ミスキャストやって。書いといて。

──紳助さんが選んだんじゃないんですか?

洋七:いや、そうじゃないと思うよ。

──師匠には紳助さんから直接オファーが来たんですよね?

洋七:まぁ、兄弟弟子【註5】やからな。「兄さん、頼んますわ」言われたら、断られへん。まぁ、断る理由もないしな。漫才やっぱ、好きやし。

──(中田)カウス師匠と点数が似てたのは?

洋七:席、隣やったから、「何点ぐらいやと思う?」って毎回訊かれてたな。意見交換や(笑)。でも、ガチンコやったから、おもろかったよ。

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻