やっぱり濃くなきゃ~~~、ロックンロールバンドは
──LINKって本当に毎回リリースのたびにどんどん変わっていってるなあっていう印象があって、成長の過程みたいなものが見えて面 白いんですけど、今回のニューアルバムも前のからまた一段上がったかな、という感じがしますが。
小森:う~ん、まあ自分たちからしたらそんなに変わったという感じでもないんですけどね。
柳井:もちろん最初の頃から比べたら大きく変わったとは思うけど。聴くものも耳が肥えてきて、色んなものを聴くようになったし。まあ、単純に今やりたいことをやっているっていうだけなんですけどね。まあ自分たちの色っていうのを今回のアルバムではうまく出せたかなとは思いますね。
──この間の限定シングル「さらば闇よ」とか前作の「EARTHSICK」なんかで日本語詩の曲が増えてきていたので、今回は全曲日本語とかになるのかな~と思ってたら、そうじゃなかったんですけど、やっぱり英語にはこだわって行きたいという感じなんですかね。
柳井:そうですね。やっぱり英語の曲にも英語の良さみたいなものがあるんで、そこら辺はちゃんと残して行きたいですからね。今回は日本語の曲が三曲と英語の曲が五曲っていう感じで結構いいバランスでやれたんじゃないかとは思います。
──バランス的にもそうですけど、日本語詩の曲と英詩の曲とがうまい案配で混ざってる感じがするんですよね。結構バンドによっては日本詩曲と英詩曲でガラって変わっちゃってるのとかもあるじゃないですか。
柳井:そうですね、その辺は違和感なくやれてると思いますね。
──サウンド的な面で言うと、なんか洋楽的な音になってるなっていう感じがしましたけど。初期の頃は英詩の曲だけだったけど「英語でやってる日本のパンク」っていう感じだったんですけど、今回は日本語の曲があるけどもっと洋楽っぽいニオイがするというか。
柳井:あ、それは嬉しいですね。まあ特に意識してそうしている訳でもないんですが、……何か変わったのかな。
小森:やっぱりアレンジとかですかね。
柳井:ああ、アレンジもそうだけど、しっかりしているっていう部分が出てるんじゃないですかね。
──演奏全体の安定感っていう部分が高まった結果っていうことですかね。
小森:曲作りとかも、昔に比べたら慣れてきてるのかもしれないですけどね。
柳井:もちろん演奏に関してもそうなんだけど、それ以外の部分においても向こうのバンドの方が根っこがしっかりしているというか、何かやりたいことがあってやっているっていう感じがするんですよ。そいういう部分で俺たちはそっちに近いんじゃないですかね。
──それは、いわゆるDIYっていうか、そういう精神的な部分でっていうことですかね。
柳井:そういうことじゃないですかね。その辺、日本のバンドには見えない何かを感じてもらえたのかもしれないですけどね。まあ気持ち的には前からそういう方向だったと思うんですけど。今回、それがより強くなったのかもしれないですね。
──曲作り的な面でいっても、ストレートでありつつもなんか捻ってる感じがしますよ。
柳井:そうですね。もちろん三人でやってて、ライブで表現できないものをやりたくないし、そういうところでストレートっていう部分も出てはいると思うけど。
──ストレートでありながらも流れていかない、ひっかかりがある感じですよね。
柳井:そうですね。今回、特に引っかかりがあるんじゃないですかね。でっかい引っかかりがあるよね。
小森:一曲一曲の完成度がすごい高くて、それぞれの曲の個性が今までの中で一番じゃないかなっていうくらい強い曲が集まってるんで。
──うん、確かに全体的な色は統一されてるんだけれど、一曲一曲が発してる臭いっていうのがそれぞれ違いますね。
小森:違いますよね、違うんだけど通して聴くと統一感があるみたいな。
──まあ濃いですよね、どれをシングルにしてもアリっていう感じの。
小森:やっぱり濃くなきゃ~~~、ロックンロールバンドは。
──だからアルバム通しての展開っていう感じじゃないですよね、聴いてると。一曲目にオープニングみたいな曲、真ん中へんで盛り上がって、最後の曲でエンディング……みたいなのではなくて、アルバム全体固まりで来る感じがしますね。
小森:それは俺も同感ですね、自分で聴いて。
柳井:うんそうですね。でもそんなに疲れないし、いいですよ~。八曲っていうのがちょうど良かったのかもしれないですけどね。これが十五曲あったらつらいかもしれないし。
──ああ、ミニアルバムなんだけど、あんまり短く感じなかったですね。
小森:濃いですから(笑)
山上:アルバム分くらいのボリュームはありますよね。ライブでやっても楽しそうな曲が多いし、これから代表曲的になっていくような曲も揃ってると思いますね。
──ここしばらくの間、いわゆる日本語パンクと呼ばれるようなバンドたちと一緒にライブをやってますけど、そういう風にはぜんぜんなってないですよね。
小森:そうですね。歌詞とかにしてもそうですし。
柳井:そういう人たちと一緒にやれるっていうのはすごくいいし、今盛り上がってる流れの中で誘ってもらってやらせてもらっているのは嬉しいことだけど。それはそれで俺らは俺らのやりたい音楽をやってて、そっちに流されることもなくやれてるんで、いいんじゃないですかね。
──LINKってスタンスの取り方がうまいかな、っていう感じはしますね。
柳井:うん、そうかもしれない。
──「愛の花」の時に初めて日本語詩に挑戦して、今の周りの状況もあるしそういう方向に行っちゃうのかな? と思ったら、そうでもなくて。曲自体は自分らのスタイルをちゃんと維持してるし、歌詞の内容なんかにしても、他の日本語バンドと比べて特異な感じだと思うんですけど。
柳井:なんかやっぱ、違うとは思いますね。逆に周りのバンドたちが似過ぎちゃってるんじゃないかなとも思いますけど、もっとやりたいようにやればいいのにね。
──もちろん日常的に感じたことなんかを歌詞にしてるんだろうとは思うんですが、それをただストレートに出すんじゃなくて、もうちょっとひねってそこから展開させた形で歌詞にしてるっていう感じがするんですよ。その辺は特に日本語詩の曲だとわかりやすいんですけど。
柳井:まあ考えていることはわりと同じなのかもしれないけど、それの出し方は違うと思いますね。だから周りのバンドと似たことは絶対歌ってないっていうのは100%そうだと思いますね。
──そういうのは意識せずに、自然とそうなっているんですか。
柳井:いや、意識している部分もありますね。
──同じことはやりたくないっていう意識ですか。
柳井:同じことっていうか。今、一般的に広がってる部分では簡単なことをやってるバンドが多いから、そこを無理して変えてるっていうよりは、俺らは俺らでしっかりしたことをちゃんとやっていこうと思ってやってますね。それが結果 的に他と違うようなことになってるんだと思いますけど。だから周りと違うことをやろうって極端に意識するよりは、もっとしっかりやっていこうっていうことですね。
──それは演奏面であったり、言っていることであったり。
柳井:そうですね。気持ちの面でのストレートさっていうのは僕らも同じで、そこは最近のバンドたちとも変わってないとは思うんですけど、そのストレートな感情をどう表現するかっていう部分があんまりストレートじゃないんじゃないですかね。
──アルバムタイトルからして、超変化球っていうか……わけわかんないですからね。
小森:「月面砂漠ローリングロック」!(笑)
柳井:面白いでしょ。
──これは煙に巻いてやろう的な発想なんですか。
柳井:う~ん、煙に巻いてやろうっていうよりは、俺らはそういうストレート一本槍のものより、もっと先を行ってるんだぜっていうのを出したかったんですよね。まあそういうのを別 にして考えても今回は「月面砂漠ローリングロック」ってすごいナイスアイディアが浮かんだな~と思いましたけど。
──この言葉はどういうところから出てきたんですか?
柳井:「月面砂漠」っていう部分は、曲を作っている時にその流れで出てきて「ローリングロック」っていうのは、まあロックンロールの「ロール」の部分を頭に持ってきて、「ロック」を後に持ってきたっていうだけなんですけど。でも俺はロックンロールの「ロール」っていうのがすごく好きなんで、「ロックンロール」って言うと普通 だけど、「ローリングロック」って言うと俺の「ロール」好きさが伝わるかなと思って。それで、それを二つ繋げることによって両方の雰囲気がまた変わってくるかなという感じですね。
──確かに二つが組み合わさることによってとてつもないイメージが浮かんできますからね。
柳井:「月面砂漠」ってすごいロマンチックなイメージがありつつも、「ロックンロール」っていうストレートな格好よさっていう部分があって。しかも「月面 砂漠」っていう漢字四文字と「ローリングロック」っていうカタカナがつながっている感じがすごい好きなんですよ、見た目的にもいいと思いますしね。
──どっちか片方だけだったら割と普通のタイトルですもんね。
柳井:そうなんですよ。インパクトっていう部分は重要ですからね。
──インパクトといえばジャケットもまたスゴイですよね。LINKまたとんでもないところに行っちゃったなっていう。
柳井:そうですね~(笑)
──こういうアートワークっていうか、ジャケットの絵だったり、タイトルの付け方だったりにしても、こういう音楽をやっていく上でのセオリー的なやり方ってあるじゃないですか。そういう所からは完全に逸脱してますよね。
柳井:でも、逆にこんぐらいやるのが普通なんじゃないかなと俺は思いますけどね。せっかくバンドをやってて、ロックンロールをやってて、曲を作ってやってるんだから、そんくらいの表現をするのが普通 なんじゃないかな。まあ今回はその中でもよくやれたとは思いますけど。だから方向は間違ってないと思いますけどね。外国のバンドだったら結構これくらいやってるのは多いじゃないですか。
──既製の枠にとらわれないのがロックだと。
柳井:何かを表現してるんですからね。枠とかそういうのは関係ないですよ。
──それぞれの曲のタイトルも面白いですよね。なんで日本語訳がついてるんですか。
小森:ああ、それはセカンドの頃から付けてるんですけどね。
──「ディスコ一番線」とか(笑)
柳井:イヤイヤ、それはちょっとかわいらしさを出したんですけど。
小森:結構考えたんだけどね。
柳井:曲を聴くとちゃんとしっかりしてるんで、それでいいと思いますけどね(笑)。外国のバンドの日本盤って、訳したタイトルとかついてるじゃないですか、ちょっとダサ格好いい感じで。
──「地獄の~」とか。
小森:地獄のファイアーとかね(笑)
柳井:そういう格好良くないんだけど格好いいっていう感じが好きなんですよね。
小森:たまにヒドイのあるけどね。
──ああ、そういうイメージなんですね。そう考えると、アルバムタイトルも勝手に訳した洋楽のタイトルっていう感じがしますね。
小森:そう考えると格好いいな。
──前もインタビューで、洋楽の歌詞を勝手に訳したような感じの勘違い歌詞が好きだって言ってましたよね。
柳井:そうですね。なんていうか、普段使わない言葉っていうのを格好良く感じるのかもしれないですけどね。
──わりと響き重視っていう感じですかね。
柳井:そうですね。響きは大事ですね。
──去年から今年にかけてガンガンライブをやっていって、まあこれからツアーも始まるわけですけど。
柳井:去年は多かったね、だんだん増えて行ってるしね。
小森:もうちょっとゆっくりやりたいけどね(笑)去年は曲作りも大変だったし。
柳井:まあ止まるって言うゆっくりじゃなく、先を見越してね。
小森:前にあるものを消化するのでいっぱいいっぱいだったから。
──今年はもうちょっと先を見越した展開をしていきたいと。
柳井:それで勢いがなくなっちゃうわけじゃないしね。
──でもまあそれだけやってるだけあって、ライブの安定感はすごい高くなりましたよね。
小森:確かに三年前とか四年前とかひどかったから。
柳井:最低限の演奏はちゃんとするようになったから(笑)。昔は勢いだけでめちゃくちゃだったんで。
──昔はライブを観ててもやっぱり若いな~~~っていうイメージが強かったですけど、最近ではさすがに貫禄が出てきたんじゃないですかね。
柳井:今もあんまり年下のバンドはいないんですけどね。
小森:SET YOU FREEとかも平均年齢逆に上がってますからね。
柳井:ストリートビーツとか。
──ラフィンとか(笑)。でもその中でやってても引けを取らない感じになってると思いますよ。
小森:ステージ立ったら上も下もないですし。
柳井:自分たちの空気を作り上げて、ステージに上がったら一瞬で空気が変わる、みたいなバンドになりたいですね。
──じゃあ最後に今年の展望みたいなものを。
柳井:いい曲作っていいライブするっていうのは変わらないだろうけど、やり方の部分でもうちょっと色々出来るかなとは思ってますね。
──今、シーン全体として一段落っていう感じなんで、多分今年はサバイバルになっていくかな~という感じなんで、その中でLINKとしてどうやっていくかっていうのがあると思いますけど。
柳井:ああ、そうかもしれないですね。そこで全部根こそぎ持っていきたいですね!
小森:それで新しいシーンを作りたいですね。
柳井:行けるとは思ってるんですけど、みんなが追ってくるかどうかですよね。やっぱやってるからにはいっぱいの人に聴いてもらいたいですから。
小森:まあどっちに転がってもいいものは残るし、ダメなものは消えていくだろうし、俺たちはこのまま居続けると思うし。
──じゃあ、今年の目標としては天下取るぞってことで。
柳井:(笑)まあ、もうちょっとついてこいよっていうとこですね。……本当はこういうこと言っちゃダメなんだろうけど。