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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】COCK ROACH(2002年11月号)- 生きろ。その血、赤い限り...

生きろ。その血、赤い限り…

2002.11.01

ツアー終了まで神経は張り詰めている

──アルバムの最後に「鸞弥栄〈ランヒェイ〉」という曲が収められていますが、歌詞を読むと“風と共に羽ばたく鳥”とあります。これは実在の鳥なんですか?
 
遠藤:架空の鳥ですね。名前も自分で付けました。
 
──前作にも「鴉葬〈チョウソウ〉」というカラスを唄った曲がありましたよね。鳥というのは一貫して何か象徴的なものとして遠藤さんのなかにあるんですか?
 
遠藤:はい。“鴉葬”という言葉は、確か安部公房か誰かの小説に出てきて初めて知ったんです。普通、人間は火葬ですよね。それが宗教によっては亡骸を烏に喰わせるという…。空を飛んで清めるという意味合いがあるらしいんですが、カラスという鳥を人間の死と結び付けるっていう考えが僕には凄いインパクトがあったんですよ。僕も死んだらそうしてほしいなって思ったくらいなんです(笑)。死後意識があるかどうか判らないにせよ、ちょっとでもその烏の栄養になればいいと思うし…。“鸞弥栄”という鳥はそれとは全く違って、希望の象徴として歌詞のなかで描いたんです。歌詞の意味付けっていうのは聴く人によってそれぞれ違ってくると思うけど、想像のなかで“その鳥はどんな鳥なのか?”“その花はどんな花なのか?”って考える時に、まず形だけは誰しも知っているわけですよね。そこからイメージが変化しやすいと思うんですよ。聴く人が脳のなかでどういう絵を思い浮かべているのか、僕は凄い気になるんです。“僕はこう思うけど、あなたはどう感じたのか?”というところでのギャップが、自分で詞を作っていて凄く面 白いんですよ。だから皆が知っている判りやすいもの…鳥や花を詞のなかに盛り込んだり、その花がどんな花かをあえて説明しないんです。それによって詞に広がりが出てくると思うんで…。
 
──確かにCOCK ROACHの詞はイマジネーションを掻き立てられますよ。しかしまたここまで完成度の高い作品を作り上げると、この先が大変ですね(笑)。
 
本田:(笑)今回も一杯一杯で作ったから、もうヤバイですよ。
 
遠藤:新しい感覚が宿るまでは、無闇に自分のケツを叩かないようにしようかなと…。
 
──曲はやっぱりレコーディング前に集中して書き上げる感じですか?
 
遠藤:「白と黒」という曲のように高校生の頃に書いた曲もあるし、レコーディング直前に形にした曲もあるし…。
 
──エッ、「人の生き定め/腐ったその屍の 行き先」(「白と黒」の歌詞)なんていう曲を高校時代に書いていたんですか!?
 
遠藤:高校の最後くらいですね。基本的に僕の書いた歌詞と歌メロを雛形に皆で作り上げていくスタイルです。
 
──さっき安部公房の話が出ましたが、相当な読書家とお見受けしました。他にどんな作家がお好きなんですか?
 
遠藤:最近は余り読書をしている時間がないんですが…凄いインパクトを受けたのは夢野久作とか夢枕 獏ですね。夢枕 獏が19~20歳の頃に書いた作品を古本屋で発見したことがあって、“これは未成年が描く世界じゃないだろう!”って凄い感銘を受けたんですよね。
 
──いや、「白と黒」だって未成年が描く世界観ではないと思いますよ(笑)。
 
本田:遠藤が書いてくる歌詞を見ると、自分にこれ以上のものは作れないと思いますよ。任せっぱなしって言うと失礼だけど、出来上がってくるものに対して不満は全くないし…。でも、彼の詞はある程度までは理解して、ある程度から先は理解しないようにしてます。自分の想像が全くなくなると面 白くないし、彼の世界観だけだと単一的な音として出てしまう気がするんです。COCK ROACHの音のなかに、自分の想像もプラスして出していきたいですから。そのなかでイメージを膨らませてリフを考えていくというか、詞と共鳴するようなサウンドを作り上げていくのが俺たちの使命ですね。
 
──COCK ROACHのサウンドを解体してみると、童謡のような判りやすいメロディが骨組みとして浮かび上がってくるように思うんですが。
 
遠藤:日本独自の音楽って何だろうって考えてみると、僕の頭のなかでは三味線だったり、わらべうただったり、小さい頃に聴いた子守歌だったり…。僕が自分の意志で初めて聴いた音楽って“たま”だったんですよ。その辺の影響はあるのかもしれませんね。クラシックとかの音楽を小さい頃から聴かされていればまた違ったんだろうけど、ウチの家庭は音楽を聴く文化も持ち合わせてなかったんで(微笑)。自分のなかにある音だけを練り込んでいくと、COCK ROACHのような音楽になるんじゃないかという自己分析はありますけど…。
 
──本田さんはどんな音楽を聴いてきたんですか?
 
本田:俺はホント雑食性で、片っ端から何でも聴きますね。生まれて初めて買ったCDがとんでもないやつで…チャゲ&飛鳥の「Say Yes」と牧瀬里穂の「Miracle Love」なんですよ(笑)。そういうところでバンドへの影響はないんですけど(笑)。最近は久石 譲とか、ジョン・ゾーン周りのバンドとか面白くて聴いてますよ。いろんな音楽のいいところを自分のなかに吸収している感じですね。
 
──年内は長いツアーを経て、ロフトで待望のワンマンですね。
 
遠藤:曲作りから始まって、プリプロ、レコーディング、ツアーが終わるまでの期間内は神経が張り詰めてますね。しかもロフトでワンマン…ワンマンのライヴ自体が僕たち初めてなんですよ。ロフトは『赤き生命欲』とそのツアーの集大成として表現できる場にしたいです。
 
本田:その前にツアーの途中で全員病院送りになっちゃうんじゃないかって(笑)。
 
遠藤:上京前はライヴが始まる前にお酒を呑んだり、極端に言えばパーティー感覚でライヴを楽しんでいたんですけど、今はどんどんシリアスになってきてますね。やっぱり責任感もあるし、いい加減なことができなくなってきましたから。でもそれらを踏まえた上で、今のほうがよりライヴを楽しんでますね。
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