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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】COCK ROACH(2002年11月号)- 生きろ。その血、赤い限り...

生きろ。その血、赤い限り…

2002.11.01

 COCK ROACHの処女作『虫の夢死と無死の虫』の衝撃たるや尋常なものではなかった。人間の死生観に真正面 から向き合い、"死"に対する恐怖心をスケールの大きな唄に昇華させた手腕は新人離れしたものだった。あれから18ヵ月。精力的なライヴ活動を通 して益々逞しくなった彼らは、前作を上回る完成度を誇ったセカンド・アルバムを発表、遂には活動の集大成としてロフトにて初のワンマン・ライヴを敢行する。痛々しい程に攻撃的で躍動感に溢れた圧倒的なパフォーマンスを、彼らは"赤き生命欲のもとに"見せつけてくれる筈だ。(interview:椎名宗之)

“生”を見つめた上で“死”と向き合う

──ファースト・アルバムの完成度が余りに高くて、今回『赤き生命欲』を制作するに当たって高いハードルとなっていたんじゃないかと思うんですが。
 
遠藤仁平(唄):そうですね…。最初は戸惑ったりしてたんですけど、途中からはテーマも定まってきて、後は突き進むだけでした。今回は、前のアルバムでできなかったことをやろうと思ったんです。『虫虫』がちょっと大人しすぎたかなと思ってて…結構激しかったりするのが好きなんで、ファーストは今思えばちょっと落ち着きすぎちゃったというか、慎重になりすぎたというか。だから今度のは「もっとやりたいと思ってることを表に出していこうよ!」ってことで好きなことをやって、ファーストよりは満足しています。
 
本田祐也(四弦):満足度はかなり高いですね。『虫虫』でも学ぶことはたくさんあったんですけど、今度のはもっといろんなことを勉強できて、自分にとってプラスになる状況を作ることができました。
 
──内容的には前作の延長線上にありますよね。
 
遠藤:そうですね。ただ『虫虫』はどちらかと言うと、“死”を恐れるがゆえに“生”を愛するというか、“死”を考えた末にそのなかの“生”を見つめるという感じだったんですが、今度の『赤き生命欲』の場合はその逆で、“まず生きているじゃないか”っていうところが起点なんです。生きているということがどういうことなのかまだ判らないけれど、手足があって、感覚があって、視覚があって、聴覚があって…ってことが生きていることだとすれば、今は“生きている”んだ、と。いろんな感情があって、欲望があって、その先に“死”がある、っていう…。
 
──COCK ROACHの音楽性を語る上で、“生”と“死”を見つめる姿勢は不可欠なものですよね。そうした死生観は日頃から常に考えているものなんですか?
 
本田:他人がどれくらい考えているかは判らないですけど…自分は自分なりに向き合う時間もあって、それなりに考えてますけど…。
 
──今度のアルバムは溜めて溜めて爆発するというか、前作に比べて適度に抑制が効いていて確かな成長が窺えますね。
 
遠藤:ハイ……ありがとうございます(微笑)。
 
──前作に続いて今回もブックレットが非常に凝った作りですね。
 
遠藤:視覚的にも面白いものがあったらいいなと思ってて…。今回は詞の横に小原(由紀)さんという方の切り絵を載せています。僕らは歌詞にかなり重点を置いているんですけど、CDを聴く時にやっぱり歌詞を見てもらいたいというのがあるんですよ。まず歌詞カードを見てもらいたいという狙いがあって、その入口としての絵なんですよね。本質的な意味では、視覚(詞/ブックレット)と聴覚(音/CD)から生まれる脳内映像、音と絵のギャップを楽しんでほしいんです。そういう新しいCDの楽しみ方を提示しているところもありますね。
 
──ただ、絵が視覚的な効果を高める一方で、詞と音から生まれるイメージを限定してしまう危惧もありますよね。
 
遠藤:確かにそれはありますね。ファーストが割とそんな感じだったんですよ。だから今回のブックレットはもっと抽象的な絵にしたんです。
 
──詞は普段から書き溜めていらっしゃるんですか?
 
遠藤:そうでもないですね。一曲を作るのに何通りかは詞を変えたり、その時々で感じることを頭に思い浮かべると詞も自ずと変わっていきますから。メンバーに詞を見せて音と組み合わせた時も、それによって新しい世界観が加えられて言葉が付け足されたり、逆に削除されたりもしますし。
 
──今回演奏面で心掛けたところは?
 
本田:ファーストはいつもレコーディングしている場所で、エンジニアも気心の知れた方でというやりやすい環境で作り上げたものだったんですけど、今回は初めて使うスタジオだったり、携わるスタッフも初めての方がいたりして…そういう不安のなかでいい演奏をしたり、いい音を作り上げていくという面 では凄く神経を張り詰めてやりましたね。その甲斐あって、自分としては凄く音が良くなっていると思います。
 
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