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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】インビシブルマンズデスベッド(2002年10月号)- バンドとかをやってるからには何かを伝えられなければ

バンドとかをやってるからには何かを伝えられなければ

2002.10.01

バンドとかをやってるからには何かを伝えられなければ

──インビシブルマンズデスベッドって、音にも、バンドの雰囲気にも、活動自体にも、すごい独特のものがあって、いわゆる従来の「ロック」の方法論っていうものに囚われずに我が道を突き進んでる感じがあるんですけど。

デスベッド:まあ、そういうのを気にした事はないですよね。自分の価値観に忠実にバンドをやっていこうとしていただけで、気づいたら自然とこういう感じになってたということなんで。

──例えば、普通ロックのシングルだったら一曲何分の曲が何曲入って……みたいな大体のお約束ってあるわけじゃないですか。それをこの間の「16秒間」なんかでは、一曲で40分以上もあるシングルを出して、平気でそういうセオリーを壊してみせたり。

デスベッド:それも別に意識してやったわけじゃないんですけど。逆に、自分的にはここまで「40分、40分」って騒がれるとは思ってなかったんですよ。

──狙ってそういう風にしたというよりは、出来ちゃったから、それをそのまま出したって感じなんですか。

デスベッド:狙ってはないですよね。作ってる時から「20分くらいにはなるのかな」とは思ってたんですけど、いざ完成してみたら40分以上あったんで、その場で会社に電話して「これはCDにしていいのか? 俺はコレで行きたいんだけど」って聞いたんですよ。結局、即オッケーだったんですけど。そいう風にロックっていうものを理解してくれてる人が周りに多いんで、それは嬉しいですね。

──もともとはカウンターカルチャーとして出てきたのが「ロック」なわけで、そういう意味では従来の「ロック」っていう枠組みにとらわれてない、という事こそ本来の意味での「ロック」な訳ですからね。

デスベッド:そういう枠組みに縛られたり、システムに乗っかってたりしてるバンドって沢山いるけど、そもそもカウンターであるロックに憧れて、そうでありたいからこそロックをやってるのに、かつて誰かが作り上げた「ロック」っていうものをそのまま模倣してもしょうがないから。従来のものの良いところを取り入れていくのはいいとは思うんだけど、その上で自分を出さなきゃ意味がないからね。

──そういう意味では、今回リリースされたアルバムなんかは曲数とか、時間とかいう部分では、奇をてらったとこがない、ある意味普通 のフォーマットですよね。なにがすごいって、シングルの「16秒間」の方が時間が長いという。

デスベッド:気付いたらアルバムの方が短かったんですよね。もちろん内容的にはアルバムの方が色々と充実してるんで、わかる人にはわかると思いますけど。

──普通のフォーマットでありながら、中身にはインビシのニオイがバッチリ詰まってますよね。

デスベッド:たとえ人と同じような方法論をとっても、俺たちなりの独創的なものを作れるっていう自信はありますからね。あまりに「16秒間」だったり、その前のアナログ出したりしたのが騒がれすぎたんで、逆にもっと普通 にやった中での俺たちの魅力っていうのをわかってもらいたかったんで。ジャケ写 とかにしても、今まではライブ写真を使ってたんだけど、そうする事によってマイナー、インディーっぽいバンドって観られるのがイヤだったんで、今回は外で写 真を撮って、いわゆるジャケットっていうものを作ってみたり。一般的なフォーマットにはめ込んでみて、その中でどれだけすごい事ができるかっていうのをやってみたかったんですよ。

──アルバムのタイトルが「青春の蹉跌」なんですけど、最初イメージ的にインビシと青春ってあまり結びつかなかったんですよ。でもいざ聴いてみたら歌詞にしろ曲にしろ、すごいドロドロした感じで、もちろんドラマとかでよく出てくるいわゆるベタな青春ではないんだけど、これこそ「青春」っていうものの本質を表現してるんじゃないかって感じましたね。

デスベッド:自分的には世の中でいわゆる「青春」って呼ばれてるものが、現実的な青春だって感じたことはないですからね。

──そういう所で語られる「青春」って、ある意味パロディーとしての青春ですからね。

デスベッド:内容は人それぞれ違うのかもしれないけど。俺にとっての「青春」って自分が理想としてるものに近づけなくて、葛藤したり、挫折感を味わったりっていう所にあるから。でも、それって誰しもが感じる部分だと思いますからね。

──まあ、大体皆子供の頃は世界の中心は自分だって思い込んでるもんじゃないですか。それが段々成長して行くに連れて、そうじゃないんだって事がわかってきて、挫折感を味わったりするんですけど。その時期と青春時代って確実にリンクしますからね。

デスベッド:でも俺、高校生の頃まではそういう気持ちだったですけどね。

──え、高校までは自分が世界の中心だと思ってたって事ですか。

デスベッド:そうですね。

──それは結構遅いですね。じゃあ、最初に味わった挫折ってどんなことだったんですか。

デスベッド:やっぱり本気でバンドはじめた頃に、挫折っていうものを知ったんだと思いますよ。純粋に、自分的な表現がうまくできなかったり、メンバー皆で出す音がなかなか定まらなかったり。バンドって一人じゃできないものなんで、どうしてもメンバー同士の個性のぶつかり合いっていうのがあるんで、そういう中でなかなか一つの方向性を見いだせなくて悩んだりとか。あとは人に認められたいだとか、それなりの地位 とか欲しいとか、そういう所が気になるようになって、挫折感っていうのを味わいましたね。

──なるほど、その辺の事が歌詞にも出てるんですかね。じゃあ他のメンバーから見て、デスベッドさんの書く詞の世界観ってどう思ってますか。

西井:う~ん、本質から目をそらしてない歌詞だという感じはありますね。何回か歌詞の内容について話す機会もあったんですけど、人間が誰しも持っているようなものを歌ってますよね、デスベッドは。

宮野:当初は共有するのに苦労はありましたけどね。今でも時々、気を抜くと見失っちゃったりしますし。普通 に考えるとこういう言葉を使うのにっていうのを、最初は彼が無知でそういう言葉を使ってるんだと思ってたんですよ。でも「本当はそんなことはわかってるんだけど、あえてこっちの言葉を良いんだ」って。最初はそういう意図がなかなか読めなかったですね。

デスベッド:メンバーによく歌詞を見せろって言われるんですけど、本当はあまり見せたくないんですよね。

西井:あまり歌詞を見せたがらない気持ちもわからなくもないんですけどね。どんどん自分の中の底へ底へって掘り下げている訳だから。

宮野:うん、繊細な歌詞だと思うよ。だから外野がヘタなことを言っちゃうと、その世界を傷つけて壊してしまうからね。

──やっぱ本質的な部分を出せば出すほど、自分をさらけ出してるってことですからね。

デスベッド:でも、自分っていうものをさらけ出した時にこそ、やっと独創的なものが出来上がると思うんで。バンドっていうのも同じでメンバー全員が自分をお互いさらけ出してから、全てが始まりますからね。そいういう中で、最初の頃は練習もしないでよくそういう話をしてましたね。

──そういう話し合いを通して、インビシの世界観が築かれて行ったっていう感じですかね。こういうタイプの曲って、例えばデスベッドさんの作ってきたイメージを他のにメンバーに伝えるのって結構難しいと思うんですけど。そういうのも、お互い意志が通 じてる事によってやりやすくなるもんですか。

デスベッド:そうですね、調子のいい時には二、三回合わせただけで完成しちゃうときもあるし。でも、それこそ一ヶ月間くらいずっと同じ曲練ってるときもありますけどね。そういう点では全く妥協はしてませんね、自分に対して。

──11/22にツアーファイナルということで、シェルターで初めてのワンマンを行うわけですが、やっぱり普段のライブとワンマンって意気込みは違いますか。

デスベッド:基本的にワンマンだからって、特に意気込みはないんだけど、他のバンドがいませんからね。いつものライブでは3、40分しかできないんで、やってみたいって思ってる事がたくさんあるから、そういうのも盛り込んでやりたいですね。

──全部自分らのお客さんってことですからね。

デスベッド:そうか、言われてみればワンマンって全員俺たちを見に来た客なんですよね。普段のライブだと、たまたま俺たちのライブに遭遇しちゃった人が怯えたり笑ったりしながら見てたりして、そういうのも楽しかったりもするんですけど。

西井:後味悪いですからね~。

デスベッド:二度と見たくないと思ってる人も多いだろうね。

西井:でもどんな風に受け取ってくれても別にいいと思うよ、何とも思われないよりは。発信する側としてはそれが一番ダメなことだから。バンドとかをやってるからには何かを伝えられなければしょうがないと思うんですよ。

宮野:その時はすっごい嫌悪感抱いてても、最終的にはまたくるだろうからね。

──今日のライブ嫌だったな~って寝る前に思い出したりして。

宮野:そう、それでもう一回確認しに行こうかって。

──今までライブを観て好きな人も、最悪だと思った人もワンマン来てみてねという事で。

宮野:やっぱり時間的にたっぷりやれるんで、ジワジワとなにかを与えられたらなと思いますね。

西井:普段ライブハウスに足を運ばない人にも来てもらいたいですね。

宮野:日常がつまらないと思ってる人に来てもらいたいよね。

──まあ音源だけしか聴いた事ない人は絶対ライブ行った方がいいですよね。インビシはやはりライブのパフォーマンスがスゴイ!

西井:ライブを観たらバンドのイメージがまた変わるよね。

デスベッド:CDの聴き方も変わるでしょうね。パフォーマンスのことはよく言われるんですけど、いい具合に高揚してる時は自分で俯瞰して見ててもすごいいい感じですから。意識的にやってる時はつまらないですからね。ライブの時は、歌詞っていう部分は意識して歌ったりはするけど、あとはもう直感的に自由にやるのが一番ですね。やっぱ直感っていうのは無限なものだと僕は考えてるから。

──観てる側からしてもお約束で決まり切ったパフォーマンスをされてもしらけますしね。

デスベッド:まあ作られたパフォーマンスであっても、とことんエンターテインメントになっているならいいと思うんですけどね。前衛的なパフォーマンスっていうのも好きだし、完璧にエンターテインメントとしてなりたってるバンドとかも好きなんで。エンターテインメントなパフォーマンスをするなら、それを徹底的に練習して、エンターテインメントとして完成してやりたいですよね。中途半端にやるのが一番イヤなんで。とにかくワンマンにはたくさん来て欲しいですよ。人が多ければ多いほど、そこで起こるハプニングも大きくなると思うからね。

武田:そんなハプニングを期待していっぱい見に来てくれればいいかな。

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