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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】SION(2002年6月号)- あんた、耳と心で俺の音楽が聴こえるか

あんた、耳と心で俺の音楽が聴こえるか

2002.06.01

新宿の喧噪で一息 

──何度も聞かれたと思いますが、SIONさんは新宿に思い入れがありますか? 
 
SION:そうねぇ。西口が好きなんだよね。最初に働き出した頃は、小便横町が本当に小便横町で。あっち側に高層ビルがちらほら建ちだして、そのガードに小汚い電車が走っていて。で、東口のジャラジャラした灯りがあってさ。そういう西口に立つのが好きだったんだよ。歌舞伎町も好きなんだけど、その頃は呑み歩く金なんかあんまり持ってないからさ。ただ暴れているだけだったけどね。
 
──今も新宿に来ますか?
 
SION:新宿行くよ。今は中野で降りた方が家には近かったりするんだけど、何故か新宿に降りて一息つく自分がいるんだよね。まぁ、その中でヨドバシカメラに行くだけっていうのも、なんか色っぽくないけどね(笑)。呑みにもいくよ。ゴールデン街に何軒かと知り合いの店が何軒か。秘密の店が何軒か。
 
──秘密の店… 
 
SION:酒呑みには大概あるんよ、秘密の店が。つるんでいる奴も連れていかない店よ。ここはダメっていう店よ。連れにも誰にも関係ない店。
 
──僕も新宿に住んでいるんですが、新宿に慣れてしまったというか。特に夜になって、違う街にいると何となく寂しくなるんですよ。 
 
SION:新宿独特の街の喧噪だよな。隣に住んでいる奴の音は気になるだろ、だけど街の喧噪は気にならんよね。あれは不思議よね。街の在り方を知っているから何だろうね。隣の奴は知らない奴だったりすると、すごく気になるよね。そういうもんじゃないか。新宿にしてもバタバタした感じなんだけど、気にならんよね。 
 
──そうかもしれないですね。
 
SION:あと、新宿に住んでいると、高い所に住んでみたくならない?! 夜景が見える高層にさ。「俺もこんな所に住めるようになったっちゃねぇ!」っておねぇちゃん隣に置いてさ(笑)。 
 
──ちなみに、現在は高い所に住んでますか? 
 
SION:全然!(笑)高くないし、窓は磨りガラス。それじゃ夜景も見えやしないってね(笑)。俺の知り合いのカメラマンが裸一つでN.Y.に行ったんだけど、最初は地下に住んでいたのよ。俺が会ったときは地上4階くらいの所に住んでいて。体育館のような場所よ。「次に逢うときは馬が走れるような広さの所に住んでおくからさ」って言っててさ。あぁそうかって思ったよ。向上心で頑張っている奴もいる訳でさ。そういう風にやっていきたいんだけど、いけないタイプの俺としたら、如何にして今の生活を楽しむかが勝負なわけさ(笑)。悔しくなく暮らすには、楽しくやろうよってさ。
 
──「ジャラ~ン」ってですか。 
 
SION:そうそう、「ジャラ~ン」だよ。
 

俺の音楽が聴こえるか 

──SIONさんも今や目標の存在になったりしますね。 
 
SION:いやいや、俺なんか目標にしちゃダメだよ。俺はヒットチャートにいないミュージシャンなでものすごくアンダーグラウンドな存在だからさ、目標とか憧れにするのは間違っているんじゃない。売れることをやんなきゃ。
 
──でもその生き様だったり、SIONさんの唄の在り方だったりを憧憬の目で見てしまうのはやむを得ないと思いますが。 
 
SION:そう!? ひとつ言えることは、世の中には30代でまだまだ格好いいことやっている奴らがいるでしょ。俺はそういう奴らにとっての励みになりたいと思っているのよ。俺はどういう訳かまだメジャー・レーベルにいることが出来て、そこでアンダーグラウンドな事が出来ているんだよ。どうだっ!! っていうのがあるのよ。レコード会社にしても「SION、それ商売ならんちゃう!? 喰えんちゃう!?」ってさ。俺からしたら「そんなもんに喰われてたまるかっ!!」なんだけど。売り上げだけで動いているような人達も、本当は20年前は音楽が好きで、売り側の職業を選んだはずだろ。俺の音楽が本当に悪いんだったら、きちんと言ってくれ。でも悪くないんだったら、聴いてくれよと。「あんた、本当に耳と心があるんだったら、俺の音楽が聴こえるか」って言いたいのよ。それで聴こえんようになったら、しょうがない。次を探すまでだからさ。俺は自分がすごくアンダーグラウンドな事をやっている自負はあるけど、レーベルにはこだわって行きたいのよ。俺がメジャー・レーベルでやることによって、音楽で何とかしようとしている奴らの力になれるんだよね。とにかく俺はまだまだやらなきゃね。
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