無駄のないアンサンブルがなだらかに時にはっきり強く、またゆるやかに跳ねるように深く聴く者の頭に木霊し、シンプルでストレートな日本語が千変万化する感情を大事に泳がせる。まったくもってあざとい手が感じられない。信頼できる音と歌詞。そんな楽曲を提供するWORDにお話ができた。[TEXT:斉藤友里子]
一番目がつかなそうな場所がよかった
──今日はドラムのポジションでフロントマンって割と珍しいですよねそれ以前にお会いして思ったのですが、吉野さんってドラムの臭いがあんまりしない気が。
吉野:家でドラム全然練習しないからかな。ベースばっかり弾いてます。もともとベースを弾いていたんですよ。兄貴がベースやってて家にあったから。でもベースの立ち位置が嫌いでドラムに転向しました。ベースの位置、恥ずかしいんです。一番目がつかなそうな場所がよかったんですよね。
──後ろで司令塔な感じが好きだったり?
吉野:わかりやすい目立ち方を好まないんですよ。
──わかりやすいもの、もっといえばあざとい感じのするものに抵抗を感じたりする方なんですか? 例えばディズニーランドとか。
吉野:そう。ディズニーランドは……。けど騙され方がいいかなって思う。嫌いではない。こうなにかが振り切ってたらオッケーです。
佐山:俺大好です。イッツ・ア・スモールランド。
──結構受動的に物事楽しみつつ、吉野さんは腹にためて、佐山さんは好きなら好き嫌いなら嫌いとはっきり言う方なんですね。吉野さんの方がやや腹黒いと。
吉野:割と。でも嫌な時とか俺の方がぶああって言うかもしれませんね。
狙ってできない
──楽曲の話になりますが、WORDは非常に間を大事にされていると感じたんですけど。そういう意識とかは持たれていたりするんでしょうか。
吉野:いや、意識はしてないですね。ストレートに表現したらこうなったんで、う~~ん、ぶっちゃけて言うと性格そのまんま出てるんだと思います。いやぁ、いつもギリギリなんですよ。「売れるからこういう曲を作ろう」「こういうアルバムを」って狙ってできないから、一曲一曲作るのに精一杯。
──その時その時の感情をパッケージしていくって作業なんですね。ごまかし作ってないって感じるのですが、それってしんどくないですか?
吉野:いやぁ、多少はごまかしてますよ。
佐山:バレないごまかしはしてると思う。
──お二人とも正直に言われるんですね。
吉野:いや、生活してて嘘はつきますけどね。でもWORDで楽曲を作る時はそんなにいやぁな無理矢理感てないんですよ。互いに「もっとこうしたほうがいい」とか「ダメならダメ」って、納得いくまで意見言い合って楽曲を最初から作業してます。正直前自分がやってたバンドと比べたら、相手の性格とか知ろうとしている自分がいるし。信用できるし、相手のことを認められるから演れる部分もある。何言ってんだよって言われたら、ホント無理矢理自分を出したり。みんな同じぐらい前に出ていなきゃ。俺は好きじゃない。
──そういうバランスをわざと作り出さなくてもやっていけるメンバーだし、さもなければ自分が普段出したくない部分も出せたりする場がWORDだと。
吉野:全く。でもべったりはないですね。
計れないものをその時の空気とか息とかで伝える
──からみすぎず、かと言ってはなれすぎずな楽曲のアンサンブルそのものがバンドの関係性を物語っていると思います。
吉野:ライブやったら一発でバレます。仲悪いとかは。ライブじゃないくてもきっと伝わるだろうな。いやいや作ったとか、誰かが妥協したとか。それはWORDに関して今の次点ないですね。細かく言えばやっぱり言葉じゃ食い違うことが微妙にあります。でもそこはあわせてみて最終的に音がなじむメンバーなんですよ。
──音で会話できると。
吉野:そんなかっこよく言われると恥ずかしいですけどそうなんだと思います。言葉で言う意味だってその中に色んな感情が混ざってますよね? それを一つにする必要ないと思うんですよ。こう計れないものをその時の空気とか息とかで伝えるのが音楽だと思うし。そうじゃないとバンドやってる意味ないですよ。