徹底的に泣き続けた1時間半を過ごした。
KZさんのワンマンライブ、2021年2月21日渋谷WWW。
わたしのマスクの中はまるで洪水だった。
"クソな噂話に踊らされるより
俺は俺のビートで踊ってやる"
人生は思い悩むことがたくさんある。
なんなら、ほぼほぼ思い悩んでいる。健やかな時間なんてさほどない。
どんなに信頼をしていようが、どんなに仲良くしていたいと思おうが、他人との関係性で違和感が生まれる。だけど、可能な限り見ないふりをし、陶酔の力で押しのけて見逃したい。できれば信頼をしたままがいいし、できれば関係性は良好のままがいい。
だって、そうじゃなきゃ自分が傷つくからだ。
ただ、その違和感に一度気づいてしまうとなかなかそうはいかない。"ソレ"は、わたしたちの不安を食べて成長し、いずれ関係を分断することも知っている。人生は立ち止まらず最短ルートを選びたい。
だけど、わたしの人生はわたしのものだし、こうしてわざわざ苦しみを選ぶ時間を経ないと気持ちが動けなくなってしまう。
苦しみを苦しみと認識し、納得をするだけの時間くらい人生にゆるされてほしい。ただしそれは、「やっぱりやめればよかった」「こんなに悲しいはずじゃなかったのに」と後悔させるのだが。
"生い立ち グラビティ 舌打ち 疑ぐり
俺を縛る それらの繋がり 音楽よ 解き放ってくれ"
人は平等ではないな、と思う。
もちろん他人が努力していることはわかっている。
わかっているが、平等ではない、とつい思ってしまう。
clubhouseの「HIP HOPをディグ会」でKZさんの「ダンスは続いてく」を知ったのは、ワンマンライブの開催を翌週に控えた時期だった。
人生で重要な意味を持つ曲は、イントロだけでわかる。人との出会いはじわじわと深みが増す、いわゆるスルメであることが多いけれど、音楽は秒でわかる。本能だろうか。
その日からわたしは、KZさんの音源を聴きあさり、YouTubeで見られるだけの動画を見た。そして、「ダンスは続いてく」を聴いては、わたしを縛るそれらの繋がりから解き放たれることを望んだ。苦しみの時間はもうたくさんだった。
"Music お前はほんと良いやつだ
お前がいない夜は死にたくなる"
他人の人生はすべて美しいが、自分自身をふりかえると、そこには永久にたどり着けないような気がする。それが一番大きな理由でドロップアウトを選ぼうとしたこと、あるいは実行したことがある人はきっとわたしだけではない。いつだって危うい。
ワンマンライブのチケットは当日に買った。
ライブタイトルは「すくわれろ」。
わたしの知る世界に、かつてこれほど優しい願いがあっただろうか。
ラストに歌われた「ダンスは続いていく」。続く人生。死ぬわけにはいかない。使用済みのデジタルチケットの画面。人生は続いてく。自分の人生を踊り続けることを想像して笑った。(成宮アイコ)