滑稽な、それは痛い、辛い…マスコミ裏街道渡世を生き抜く貧乏ライターの饒舌本。これは筆者・岩本太郎の物悲しい青春ドキュメントなのだと思う。もちろん出版界の愚痴ばかりでなく筆者の珠玉の「世界の旅のコラム」など色々なエピソードが織り込まれて読みやすい。岩手の大学を卒業してなんのアテもなく東京にやって来て、フリーライターになる。昔はまだ出版景気もよかったが、今の時代まさしくフリーライターは使い捨てなのだろう。格安な原稿料で(一文字一円のところさえある)筆者はこの東京で生き抜いて来ての滑稽さがここにはある。確かに私の周りにも「ライターになりたい」と憧れる若い人は多い。そう言う人たちは「一文字一円、原稿用紙一枚400円でやっていけるか?」と聞いてみたい。若いライター志望の皆さん、読んでみて現実を感じてください。(平野悠)