先日4月の来日公演も記憶に新しいボブ・ディランだが、1962年にデビューして以降半世紀にわたって最前線で活動を続けるディランのオールタイムベストが生産限定版としてリリースされた。選曲は音楽評論家の萩原健太氏で、ディランがこれまでに発表したスタジオアルバム36作、シングル58枚、ライブ盤11作、公式ブートレグ12作という膨大なディスコグラフィーから、音楽史に刻まれたディランの、時に常人には簡単に理解できないような変遷を見渡せるような名曲中の名曲を選び出し、半世紀の偉大な歩みを5枚のCDで振りかえることができる内容になっている。通常のベスト盤と違い、ディランにとってオリジナルアルバムと同等に評価すべきブートレグ音源からも選曲されていることで、ディラン作品のより深い陰影を浮かび上がらせている。200ページにも及ぶ分厚いブックレットには、萩原氏の解説が加えられ、ディランのプロテストフォーク期からフォークロック期、低迷期から近年の復活期までを俯瞰しつつ、収録曲それぞれの解説がなされている。日本語訳は、もちろん中川五郎氏によるものだ。(加藤梅造)