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SHADOWS OF EVIL - BLACK METAL DISC GUIDE

2011.03.10   MUSIC | BOOK

DISK UNION / 2,000yen

軽薄なメディアと目先三寸の商業主義の浸透により広義のロックが「反抗の音楽」としての立ち位置を失っていくなか、誰もが飼い馴らすことのできない、アンタッチャブルな領域として燦然と(?)輝きを放ち続けるジャンル。それがブラックメタルだ。

そもそもアンチ・キリストという、キリスト教文化圏そのものへの反逆に軸足を置いて産まれたブラックメタルが、マスと相性の良い訳がない。辛うじて名前がマスメディアに取り上げられたとしても、それは教会への放火だったり殺人事件だったりといったネガティブな側面か、白塗りのメイクだけが面白おかしく取りざたされるだけ。しかも、(特に初期ブラックは)音も悪いし何言ってんのか分からないし白塗りで血だらけで、え、あの血ってホンモノなんですか、ヤダこわ〜イ超しんじらんな〜い……という訳でブラックメタルは決してマスの世界に浮上することなく、地獄の釜でぐつぐつと煮込まれ濃縮還元され、信じられないほど広く深く暗黒の淵へと根を伸ばしてきた。

そんなブラックメタルの名盤600枚を紹介する珠玉のガイドが、本書である(2010年12月発売)。ジャンルの祖であるノルウェーブラックにはじまり、随所にコラムを挟みつつ、スウェーデン、ドイツ、フランス、日本など15の国・地域別に押さえるべきバンドを紹介。更に歴史の闇に消えたオリジネイター達や数年前に大爆発したヴァイキングメタル、ポストロック/シューゲイザーに接近したブラックメタルのニューウェーブまで、深化・複雑化するジャンルを網羅する。当然紙幅の関係もありその全てを細かくカバーしている訳ではないし、コアなファンにしてみたらラインナップに不満もあるだろうし、紹介文が時折抽象的になり過ぎていまいち作品の全体像が掴みにくいこともある。だが、それでも本書が、ブラックメタルというジャンルがどの様に始まり、現在どのように息づいているのかを知るに最適な入門書であることは揺るがない。そしてそれは同時に、音楽による世界への反抗のドキュメントなのだ。

ともあれ、こんなにも素晴らしい企画を立ち上げ、実行したDISK UNIONの歪みない姿勢に敬礼を送りたい。(前川誠)

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