昨年秋に突如完全復活を果たしたザ・マックショウのゲット・バック音盤第一弾。プレイ・ボタンを押し、1曲目の『情熱のロカ・ローラ』でいきなりぶっ飛ぶ。小気味良いギターのカッティング一音からして、明らかにこれまでの作品の音像とは違うのが素人の耳でも判るのだ。それもその筈、本作は全編ノー・デジタル、アナログ・テープ一発実演録音というまるで時代に逆行した手法で吹き込まれた志の高い作品なのである。広島出身のKOZZY MACK(vo, g)とTOMMY MACK(b, vo)が青春時代を追憶した甘く切ない“ヒロシマ・グラフィティ”な歌の世界観を描き切るには、アナログ独特の音の温かみ、湿り気、奥行きの深さが必要不可欠・絶対条件であることが聴き進めていくうちに理解できる。この完膚無きまでにこだわり抜いた音作りは失敗が許されない一発録音に懸けた集中力と緊張感があってこそであり、本作完成に至るまでのメンバー及びスタッフの気力、体力、財力の労苦を想像すると筆舌に尽くし難いものがある。イージーに流れてデジタルを駆使しても彼らのセンスと技量があればそれなりの作品は作れるだろうが、彼らは古式ゆかしいロックンロールの原点に立ち返り、偉大なる先人たちと相まみえることを敢えて選んだ。愛してやまないロックンロールに持ち得る情熱すべてを懸けたKOZZY MACKの迸る男気と狂気に何度も身震いさせられる魂の一枚。
(Rooftop編集局長:椎名宗之)