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ROCK'N ROLL GYPSIES / Ⅲ

2010.09.06   MUSIC | CD

KICS-1602 3,000yen (tax in) / IN STORES NOW

1. そろそろ
2. OH! MY GOD
3. 渇く夜
4. 穏やかな時へ
5. RRG ブルース
6. そんなとこ
7. CRAZY ROMANCE
8. 黒の女
9. WORK IT OUT
10. A SUNNY PLACE

 ROCK'N ROLL GYPSIES、約5年ぶりとなるスタジオアルバム『Ⅲ』が待望のリリースとなった。そもそもGYPSIESの結成は2001年。元ルースターズの花田裕之、下山淳、池畑潤二、井上富雄の4人が2001年にイベント出演のために集まり、そのセッションが正式にROCK'N'ROLL GYPSIESとなって活動を続けている。メンバーそれぞれが多忙のため恒常的な活動はしていないが、毎年、ライブツアーやイベント、フェス出演をしながら、2005年にはセカンドアルバム『II』、2007年にライブアルバムをリリースしている。ちなみに現在のBassは元POT SHOTの市川勝也。メンバーの池畑が「GYPSIESは、やりたくなった時にやれたらいい」と言っているように自由気ままな活動スタイルのGYPSIESだが、いざ何かがあるとガッとメンバーが集まって尋常ならざるクオリティの作品やライブを私たちに提示してくれる。メンバー同士の信頼感と緊張感が高いまま持続している理想的なロックバンドと言えるだろう。
 今作『Ⅲ』はシンプルなアルバムタイトル同様、とりわけ派手なことをしているわけではないが、どの曲も一筋縄ではいかないものばかり。オーソドックスなロックンロールを主体としながら、時にはもの物足りないぐらい素っ気なく、時には畳みかけるようにグイグイと演奏を展開してくる。この「押し引き」こそがGYPSIESの魅力で、これぞまさしく大人のためのロックと言うべきだ。全曲素晴らしいが、その中からいくつかピックアップしてみると、まず1曲目の『そろそろ』。イントロのギターリフで早くもゾクゾクとくるが、花田と下山の2本のギターの絶妙な絡みがたまらない。旅に出たくなる気持ちを歌った詞も放浪人・花田らしくて実にいい。2曲目は『OH! MY GOD』。7曲目の『CRAZY ROMANCE』と同じくルースターズのアルバム『KAMINARI』からのカヴァーソングで、ファンにとっては嬉しいサービス。
『KAMINARI』といえば1986年にリリースされ、激しいギターサウンドを基軸に轟音ロックを確立した日本のロック史に燦然と残る作品。ここから2曲取り上げた所に、私のようなルースターズ・フリークは花田×下山の無言のメッセージをついつい感じてしまう。4曲目『穏やかな時へ』は個人的にフェイバリット。ジャムセッションから始まり軽快なリフに繋がる出だしから完璧だが、1曲目と対になるような歌詞の世界観がまたいい。「何処にも向かわず 今日に抱かれよう」という境地は今年50歳を迎えた花田らしいリアルなフレーズだ。6曲目『そんなとこ』は池畑作のハードボイルドな曲。曲の展開は『DO THE BOOGIE』!? カッコイイ。8曲目は下山作の『黒い女』。不思議な歌詞とアシッドなギターがどこまでも気持ちよい。9曲目は市川作の『WORK IT OUT』。R&R GYPSIESのテーマと言ってもいいぐらいイメージぴったりの曲。その他2曲のインスト曲もいい流れを作っていて、アルバムとしての統一感も素晴らしい作品だ。これを聴かなきゃ大人のロックは語れないぞ!

(加藤梅造)

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