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ASIAN KUNG-FU GENERATION / マジックディスク

2010.07.01   MUSIC | CD

初回生産限定盤 KSCL-1610〜KSCL-1611 3,570yen (tax in)/通常盤 KSCL-1612 3,059yen (tax in)
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ASIAN KUNG-FU GENERATIONが、『サーフ ブンガク カマクラ』以来1年7ヶ月ぶりとなるニュー・アルバム『マジックディスク』をリリースした。リリース前から、マジックディスクスペシャルサイトを開設し、自分自身にとって魔法のような1枚=“マジックディスク”を登録&閲覧できるシステムを導入したり、webカメラを通じてスペシャルコンテンツを見ることができるAR(拡張現実)を採用したり、前作からほんの数年しか経っていないのに驚くほど時代が進化していることも実感した。

 そして、本作『マジックディスク』も、これまでとは違う角度からの視点が取り入れられていることに気付く。このアルバムの幕開けに位置する『新世紀のラブソング』は、ドラムが打ち込み的なアプローチをし、ラップのような後藤のつぶやきから始まる曲には大量のメッセージが詰められている。この時代を生きていく中での不安や期待がごちゃまぜになって吐き出され、ギュッと胸を締め付けられる感覚になる『さよならロストジェネレイション』。『迷子犬と雨のビート』は、アジカンにしてはポップな曲だと感じたのは私だけではないはずだ。シャッフルビートやブラスサウンドを用いて、どこかハッピーさも漂う楽曲に仕上がっている。『架空生物のブルース』では、ピアノやストリングスを取り入れ、よりダイナミックな展開に。後半に連れてサウンドが盛り上がっていくと共に、聴いているこちら側の気持ちも高揚していく。『ラストダンスは悲しみを乗せて』では、東京スカパラダイスオーケストラの大森はじめさんがゲストアーティストとして参加し、軽やかなパーカッションを鳴らす。パーカッションが入ることで4人のサウンドに彩りが加わり、より華やかな楽曲へと昇華する。そしてアルバムの最後を飾る12曲目の『橙』。バンドのアンサンブルは強靱さを増すばかりだが、この曲で鳴らされているリズムは王道のアジカンサウンドだと感じた。これまでの11曲で、技術的にも変化し進化し続ける彼らのサウンドを体感したが、この曲には彼らのベーシックとなるものが詰め込まれているのではないだろうか。
 21世紀に入って10年近くが経過し、インターネット環境は10年前には考えられなかったほどに進化した。私自身インターネットの普及により、仕事がスムーズに進められていることは否めない。ただ、その分人間の温度が感じられなくなっている部分もある。CDが売れなくなったとも言われ、音楽がデータでやりとりされている現状。しかし、この『マジックディスク』は、ジャケットが初回生産限定盤は6面デジパック仕様になっており、大胆に描く中村佑介さんのイラストを楽しむことができる。また、他にも仕掛けがたくさんあるそうなので、ぜひ手にとってもらいたい(私は、描かれていた『崩壊アンプリファー』のイラストがツボだった)。ジャケットを含めた作品のひとつに、作り手がどれだけの思いを込めて世に出しているのかを、改めて感じられた1枚となった。そして、確実に私のマジックディスクはこの作品だと思う。(Rooftop:やまだともこ)
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