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小谷美紗子 / ことの は

2010.05.01   MUSIC | CD

RDCA-1014 1,600yen (tax in) / 5.12 IN STORES

オリジナル作品としては『Out』以来約3年振り、玉田豊夢(ds)、山口寛雄(b)とのトリオ編成による作品としては通算4作目となる小谷美紗子の新作は、精選された至上の歌が5曲収録されている。“ことのは”(言の葉)というタイトルが象徴しているように、どの楽曲も日本語を大事にした歌詞を念頭に作られており、部分的な英詞も皆無という潔さ。そのせいか、自身の感性を際限まで研ぎ澄ました上で紡ぎ出される言葉はいつにも増して簡潔にして豊潤だ。すでにライヴでも披露されている『青さ』と『手紙』という名バラードがやはり抜きん出た出来。性急なリズムと全編ファルセット・ヴォイスが有機的に溶け合う『日めくり』、敢えてピアノを弾かずに荘厳な大地のリズムに乗せて唄われる『空の待ち人』の2曲は新機軸だと思うし、PVも作られたリード・チューン的な『線路』の瑞々しさも堪らない。苦渋を舐めながらも明日への希望を忘れぬ姿勢が本作には通底しているが、日々の生活の中で厳しい現実としっかり対峙する冷徹な視座が小谷にはあるので、決して安直な頑張れソングにはならない。むしろその類の歌とはとんと無縁な凛とした佇まい。燃え滾るような情熱はしっかりと渦巻いているが、表向きは柳に風とばかりに淡々としている。その絶妙なバランスがまた素晴らしい。身を挺して守り抜きたい相手に捧げた小谷の“言葉のない手紙”は、感受性が錆び付いていないあなたの元にもきっと届くはずだ。(Rooftop編集局長:椎名宗之)

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