
映画『モネと時間旅行』
【監督・脚本】セドリック・クラピッシュ(『ダンサー イン Paris』)
【出演】スザンヌ・ランドン(『スザンヌ、16歳』)、アブラム・ヴァプレ、ヴァンサン・マケーニュ(『画家ボナール ピエールとマルト』)、ジュリア・ピアトン(『最高の花婿』)、ジヌディーヌ・スアレム(『パリのどこかで、あなたと』)、ポール・キルシェ(『Winter boy』)、サラ・ジロドー(『ベルナデット 最強のファーストレディ』)、セシル・ドゥ・フランス(『幻滅』)、オリヴィエ・グルメ(『私は確信する』)、ヴァシリ・シュナイダー(『モンテ・クリスト伯』)、ヴァランタン・カンパーニュ(『Coward』)
【原題】La Venue de l'avenir
【日本語字幕】古田由紀子
【配給】セテラ・インターナショナル
2025年 / 126分 / フランス / フランス語 / 1:2.35 / 5.1ch
© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques
【劇場公開日】9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開
パリとノルマンディーを舞台に、現代を生きる4人がひょんなことから19世紀末のベル・エポックの世界へと誘われる『モネと時間旅行』。監督は『猫が行方不明』、『ダンサー イン Paris』のセドリック・クラピッシュ。2026年は本作の邦題になっている印象派の巨匠クロード・モネ没後100年のメモリアルイヤー。物語は現代と、モネが生きた19世紀末を行き来する。現代、そしてベル・エポックの時代のパリの街の美しさ。パリの街の生き生きとした景色を描くのはクラピッシュ監督が得意とするところだが、現代と100年以上前の行き来がとても自然。時間旅行はスリリングというよりはファンタジー。どちらの時代も人々はそれぞれ事情を抱えながらもあたたかい。この感じもクラピッシュ監督ならでは。
最初の場面は現代のオランジュリー美術館。モネ、セザンヌ、ルノワールなどの作品を収蔵している美術館だ。鑑賞するよりスマホでの撮影に忙しい入館者たち。現代のシーンの主人公であるセブはデジタルコンテンツを作る映像クリエイター。オランジュリー美術館でファッション関連の撮影をしている。絵とドレスの色が合わないとガールフレンドでもあるモデルが言う。セブは「ドレスの色を後で調節するよ」と言うと「絵の色を調節して」とモデル。その言葉にセブは文句は言わないまでもなんとなく納得いかない。仕事や恋愛になんとなく納得いっていないような、悩める青年だ。
ある日、連絡が来て、向かった先には面識のない親戚一同が集められている。不動産関係者が先祖アデルが遺した屋敷を土地開発のために売ってほしいと。屋敷のことなど初めて聞く親戚一同。田舎町ノルマンディーの古い屋敷はどの程度の価値があるのか、屋敷の中には何があるのか、先祖のアデルとはどんな人物か。親戚を代表してセブを含めた4人が調査にあたることとなる。日本でもよくある空き家問題。メチャメチャ現実感ある出来事から物語は始まる。
先祖のアデルが暮らしていた屋敷には多くの写真が壁に貼られている。ひきこまれていくセブ。場面は19世紀末に変化。若く美しい21歳のアデルがいる。祖母に育てられたアデルは祖母が亡くなったことを知らせるため、わずか1歳の自分を残しパリに向かった母に会いに行く。ノルマンディーからパリに向かう途中で2人の青年と知り合う。写真家と画家。修業中の2人。3人の語らいが初々しく青春の季節が描かれる。ベル・エポックは文化や芸術が花開いた時代。修業中の若き画家は写真家のことを「絵が描けないから写真家になった」と笑いながら皮肉。写真家は負けじと「あと数年で絵はなくなるよ。絵は役に立たないから」などと言う。まるで現代じゃないか! デジタルが発達してアナログがなくなる、更に進化してAIが牛耳るようになるだろう。現代と重なる部分が多いのだ。ベル・エポックの時代の後には第一次世界大戦が近づいていると感じさせる場面もある。クラピッシュ監督はファンタジーだけでは終わらせない。
ベル・エポックの時代はエッフェル塔は赤かったのか! と思ったわけだが、初めてパリに着きエッフェル塔を見て驚いたアデルと同じ気持ちになったような気がしたり、現代のシーンではオルセー美術館の大時計の内側のカフェが出てきたり。そういった名所だけではなく日常が丁寧に瑞々しく描かれている。更にモネを筆頭に、ルノワール、セザンヌなどの画家、写真家フェリックス・ナダール、伝説の女優サラ・ベルナール、『レ・ミゼラブル』のヴィクトル・ユーゴーなど実在した人物も登場して楽しい。
母を探すためパリに向かったアデルと、アデルを探すため過去に向かったセブたち4人。屋敷に残された写真、手紙、そして白いドレス姿の女性が描かれた印象派の作品らしき絵画などから屋敷の価値を調査するはずが、それよりアデルの生き方を考察し、現代の自分たちの生き方を見つめ直していく。過去への旅の後、スッと前を向いて進んでいくような登場人物たち。最後は爽やかな風が吹いているようだ。(Text:遠藤妙子|@TaekoEndo)














