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トップレビュー映画『エレノアってグレイト。』-「今日だけの嘘」で始まる世代を超えた友情。近しい人を亡くした傷を癒すために嘘をついてもいいのか? 事実と真実の違いは?

映画『エレノアってグレイト。』-「今日だけの嘘」で始まる世代を超えた友情。近しい人を亡くした傷を癒すために嘘をついてもいいのか? 事実と真実の違いは?

2026.06.12   CULTURE | CD

映画『エレノアってグレイト。』

【監督】スカーレット・ヨハンソン
【脚本】トリー・ケイメン
【出演】ジューン・スキッブ、エリン・ケリーマン、ジェシカ・ヘクト、リタ・ゾーハー、キウェテル・イジョフォー
【キャスティング】エレン・ルイス、ケイト・スプランス
【音楽監修】ランドール・ポスター
【音楽】ダスティン・オハロラン
【衣装デザイナー】トム・ブローカー
【編集】ハリー・ジャージアン
【プロダクションデザイナー】ハッピー・マッシー
【撮影】エレーヌ・ルヴァール
【エグゼクティブプロデューサー】ルーシー・キース、ジェニー・ハルパー、ピーター・ソビロフ、ミシェル・ソビロフ、アンドリュー・カロフ、アンジェラ・カードン、ジェイミー・ヒース、スティーヴ・サロウィッツ、ジャスティン・バルドーニ、ラージ・キショー・カワー、エズラ・ガベー、ジャン・マカドゥ、シャルロット・ドーファン、ロバート・ケッセル、スーザン・リーバー、トリー・ケイメン、エリン・クレシダ・ウィルソン
【プロデューサー】スカーレット・ヨハンソン、ジョナサン・リア、キーナン・フリン、トゥルーディ・スタイラー、セリーヌ・ラトレイ、ジェサミン・バーガム、カラ・デュレット

2025年|アメリカ|ビスタ|カラー|98分
【配給】東映ビデオ
© 2025 ELEANOR INVISIBLE FILM, LLC AND TRISTAR PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

【劇場公開日】6月12日(金)より新宿バルト9ほか全国順次公開

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 人気、実力ともにトップクラスの俳優、スカーレット・ヨハンソン。彼女の初の監督作品である『エレノアってグレイト。』が公開。脚本はトリー・ケイメン。ケイメンの祖母は95歳にしてフロリダからマンハッタンへ大陸横断の大引っ越しを成し遂げた人物。そこから祖母や家族の歴史を遡り、脚本を完成させた。この脚本にスカーレット・ヨハンソンがほれ込み、製作と監督を買って出る。トリー・ケイメンにとっても自身の脚本の初の映画化である。
 主演のエレノアには御年96歳のジューン・スキッブ。1950年代から舞台に出演しているが、映画への出演は1990年代からで60代になってから。2024年、93歳にして『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』で映画初主演。続けて本作『エレノアってグレイト。』でも主演。まさにグレイト!
 

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 物語は90歳を超えた二人の女性の笑顔、穏やかな生活、穏やかな海から始まる。エレノアは親友のベッシーとフロリダで暮らしている。お喋りをし助け合い、日々を過ごす。時には近所のスーパーマーケットで若い店員をやり込めたり。特にエレノアは口が達者。本当か嘘かわからないような冗談を言ったりする。そんなエレノアは実にチャーミングだし、「もう、エレノアったら」って呆れた顔しながら笑うベッシーもチャーミング。いいなぁ、こういう暮らし。シスターフッドだなぁ。
 フロリダの景色、二人の会話、街の人との会話。物語の序章。
 

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 物語が動き出す。ベッシーが急逝。ポツンと一人になったエレノアは娘と孫がいる故郷、ニューヨークへと引っ越す。「娘が一緒に住もうって言うのよ」ってエレノアは近所の人に言ったけど、シングルマザーである娘も孫も自分のことで忙しそうで、エレノアの帰郷がちょっと面倒くさいなって顔してる。
 娘はエレノアに友だちができるようにサークル活動に登録、お茶会にでも参加しようと出かけたエレノア。入った部屋は「ホロコースト生存者の会」。部屋を間違えたとも言えないでいると自己紹介を促され、エレノアから出てきた言葉は「ポーランド出身です」。故郷はここニューヨークなのに!? エレノアは亡くなった親友ベッシーが自分に話してくれたホロコーストの記憶を、自分の記憶として話してしまったのだ。
 

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 ジャーナリスト志望の大学生のニナは、壮絶な経験とそれを話すエレノア自身に胸を打たれ、エレノアをもっと知りたい、取材をしたいとLINEのアドレスを交換し交流が始まる。年齢差など関係ない友情が築かれていくのだが、お互いプライバシーには立ち入らない。エレノアが自分のことを話さないのは嘘をついているからだろうけど、それだけじゃなく、ベッシーが亡くなってから心の置き所が定まっていないのだろう。ニナもまた孤独を抱えているようだ。エレノアは豪快な語り口や仕草でニナを励ます。二人は共に行動することに喜びを感じている。いいなぁ、シスターフッドだなぁ。
 

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 ニナはそろそろエレノアの話を記事にしたい、多くの人に知ってほしいと思う。そして書き上げた原稿は人気キャスターでありジャーナリストのニナの父親が絶賛。この記事により思わぬ騒動が起きていく。
 

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 エレノアは頑固だけどチャーミングで、ニナとの対話も楽しく温かい映画。でもテーマは深い。エレノア、ニナ、そしてニナの父親は大切な人を失っている。シングルマザーのエレノアの娘と孫も家族を失っているのかもしれない。家族、老い、死。そして喪失感。近しい人を亡くした悲しみの表し方、悲しみとの付き合い方、超え方。いなくなった者と共に生きるにはどうしたらいいか。そのためなら嘘をついてもいいのか? 事実と真実の違いは?
 

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 ホロコーストがこの物語のきっかけになっているがフィーチャーされているわけではない。フィーチャーされてはいないがヨハンソン監督は伝えたかったんだろう。あくまでも私が思うことだが、ユダヤ系のルーツを持つスカーレット・ヨハンソンは自分が生きる今の時代と今の生活から、かつてユダヤ人がナチスにより受けた残酷な経験を伝え残したかったんじゃないか。歴史の中のことではなく今も続いていることとして、今の人間の表現として。
 

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 ユーモラスで温かくて、普遍性を感じる人間のテーマがあって。スカーレット・ヨハンソン、監督として大きな一歩だ。
 あ、フロリダの街、そしてニューヨークの街の景色が90年代の映画みたいでとてもいい。(Text:遠藤妙子|@TaekoEndo
 

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