登山家・野口健の元マネージャーによる暴露本……? と一見思いきや、その強烈な愛憎と筆者自身の人生を曝け出す凄みに圧倒させられるノンフィクション『さよなら、野口健』で話題を呼んだ、小林元喜の新刊『親友は山に消えた』が3月12日に刊行された。
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「米で邦人が滑落 山岳カメラマン、平賀淳さんの遺体収容」(日本経済新聞2022年5月22日)
NHK番組などで活躍し、世界50か国を駆け巡った山岳カメラマン・平賀淳。2022年5月、アラスカ・デナリの氷河で撮影中に滑落死したことをきっかけに、中学時代からの親友であった著者が、自身の視点からありのままの平賀さんの人生を描いた作品。登山経験の乏しい小林さんは、親友との“最後の別れ”を果たすため、アラスカの深淵へと向かう。
なぜ親友は山に消えたのか??
平賀と著者の30年と、その真相を辿る物語。
<書籍紹介より>
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トレイルランニングレースを追ったドキュメンタリー番組への参加をきっかけに、山岳レースを駆けるランナーと共に走り撮影する“ランニングカメラマン”の先駆者であった平賀淳。
世界50カ国を渡り歩き、エベレストにも登頂。映像作家としてドローンもいち早く導入し、新しい山岳映像を切り開いたパイオニア的存在だ。
数々の山岳撮影を重ねてきた彼だが、2022年、アラスカデナリ国立公園の高峰ハンターに挑むクライマー撮影に参加中、ベースキャンプ付近の足場が崩落。クレバスに滑落し命を落とした。
そんな平賀の葬儀に参列し、中学からの付き合いである筆者が友人代表として弔事を読むところから話は始まる。
常に近い場所にいて切磋琢磨しあった親友の視点から描いたノンフィクション……と簡単に紹介できるような作品ではない。ひとりは映画監督、ひとりは作家と違う道を目指しながらも、互いを挑発する時もあれば認める時もある、常に意識し続けてきたライバル。
嫉妬と羨望、それでいて時に強烈に尻を蹴り上げる言葉を放ってくれる盟友。だからこその負けたくない思い。社会というレースで一時は出し抜きながらも、脱落ぎりぎりになることも。そんな関係から紡がれる赤裸々な言葉は、前作にも勝るものがある。だからこその「作者が書かなければならなかった物語」であることがひしひしと伝わってくるのが本作だ。
親族やパートナーから仕事仲間と多くの関係者に丁寧に取材を重ねており、「ランニングカメラマンの先駆者」としてのノンフィクションにまとめたほうが一般的にはわかりやすい作品にはなったかもしれない。しかし、互いを高め合った関係だからこその亡き平賀に叩きつけるような一作でなくてはいけなかった。その思いを読み解いてほしい。(Text:大坪ケムタ / ロフトプラスワン)
















