映画『ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一発!』
【製作】カイ・ヌールドベリ、カールレ・アホ
【監督・脚本】ユッカ・ヴィドゥグレン、ユーソ・ラーティオ
【出演】ヨハンネス・ホロパイネン、マックス・オヴァスカ、サムリ・ヤスキーオ、チケ・オハンウェ、アナトーレ・タウプマン、ヘレン・ビースベッツ、ダーヴィト・ブレディン、JUSSI69、SU-METAL(BABYMETAL)、MOAMETAL(BABYMETAL)、MOMOMETAL(BABYMETAL)ほか
【字幕翻訳】堀田雅子 【字幕監修】増田勇一 【後援】フィンランド大使館
【共同提供】キングレコード+スペースシャワーネットワーク 【宣伝】HaTaKaTa 【配給】SPACE SHOWER FILMS
2024年|フィンランド映画|96分|カラー|スコープ|DCP|原題:HEAVIER TRIP
© 2024 Making Movies, Heimathafen Film, Mutant Koala Pictures, Umedia, Soul Food
12月20日(金)よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開
2019年12月、北欧から届いた『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』。フィンランドのド田舎の幼なじみ4人のメタルバンド、インペイルド・レクタム(直腸陥没)が、ド田舎からノルウェーの巨大メタルフェスを目指す爆笑メタル映画。そして5年後の2024年のやはり12月、『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』が公開。インペイルド・レクタムが帰ってくる!
5年前の『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』は爆笑メタル映画であるのだが、田舎で夢を持ち続ける厳しさ、ほのかな恋愛、何よりもメンバーの友情を描いた青春映画であり、夢に向かって海越え山越え車を突っ走らせるロードムービーの面もあった。そして今回の『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』はというと…。
ノルウェーの巨大メタルフェスへの出演を果たしライブは大盛り上がり! だったのだが、ルール破りをしでかしていたインペイルド・レクタムはライブ直後に収監。物語はここからスタート。4人は監獄でもひっそりバンドを続けてはいるけれど、収容者たちにレクリエーションとして演奏会を開くといった程度で、もちろんメタルなど許されない。だがもちろん看守の目を盗みメタルを轟かせる。監獄からスタートするなんて『ブルース・ブラザース』を思い出させるじゃないか。さて看守は怒り狂うわけだが、この看守が前作でも、巨大メタルフェスに出演なんかさせないぞ! と追いかけていた銭形警部ばりの女性で(前回は国境警備隊)今回も登場。
退屈で窮屈な監獄。こんなところ早く出たいと思っている4人のもとへ超大物プロデューサーが面会に訪れ、ドイツのメタルフェス、ヴァッケン・オープン・エアへの出演をオファーする。しかし収監されている身、オファーを辞退。俺たちついてないよな、なんてしょげていると、メンバーの“速弾きの天才”の実家のトナカイ粉砕場が地上げ屋の乗っ取り危機にあるという知らせ。そこはインペイルド・レクタムの練習場所でもあった。危機を救うにはメタルフェスに出演して出演料を手にすれば救える! 出演するには脱獄だ! 脱獄してドイツを目指そう!
またしても巨大フェス会場まで突っ走る。懲りないなぁ。懲りないのがいいなぁ。懲りずに夢に向かっていくって、いいなぁ。
前回のノルウェーまでの道のりは海や山だったけど、フィヨルドを越えドイツまでの道のりで出会ったのは同じフェスに出演する憧れのベテラン・メタルバンド、ブラッドモーター。超大物プロデューサーとも再会。更に脱獄した奴らを捕まえるぞと銭形警部ばりの看守が追ってくる。フェスの日は近づくのだが、超大物プロデューサーは儲けばかり考えている商業主義者で、ブラッドモーターも彼に操られている存在に成り下がっていた。インペイルド・レクタムもその口車に乗ったり乗らなかったり、メンバー間の考えの違いが如実になったり。大混乱は続くのだが、バンドは? フェスは? 4人の友情は?
前作『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』が恋や友情、田舎の暮らしなんかも描かれていたが、本作『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』はバンド、音楽業界、メタルフェスが骨格。そこに熱い友情、バンドへの信念などが絡む。インペイルド・レクタムの行動はそりゃ爆笑メタル映画だから大袈裟で誇張されてはいるが、バンドをやっていたらインペイルド・レクタムの誰かに自分は近いと感じる人がいるかもしれない。メンバー間のケンカに思い当る節がある人がいるかもしれない。ベテラン・メタルバンドの悲哀と復活に想いを寄せる人がいるかもしれない。それはバンドマンじゃなくても、だ。この爆笑メタル映画、人間ドラマも描いている。
ストーリーはギュッと凝縮されているけどフェスの景色やメタルのサウンドのスケールはデカい。BABYMETALがカメオではなくセリフもライブもありで登場。フィンランドのメタルバンドMORS SUBITAのミカ・ラマサーリが前作に引き続き劇中音楽を手がけ、スウェーデンのオカルトロックバンド YEAR OF THE GOATが劇伴を担当。
で、怒涛のメタルサウンドが轟く映画の最後はホッコリさせられた。(Text:遠藤妙子)