観光客とは全く違う視点でこの街の成り立ちや魅力に迫っている
ネイキッドロフトは、新大久保にある。私はなんだかんだ、ここで働き始めて10年ちょっと経ってしまっているのだが、その間だけでもこの街の変化は目まぐるしかった。暴対法の影響で警察の取り締まりがえげつなくなったり、盛り上がっていた韓流ブームが東日本大震災と排外デモの影響で一冷え込んだり、一時はどうなることかと思ったこともあったが、気付いたらまた息を吹き返していた。
一体、この街の活力はどこから来ているのか。いるだけではわからないその謎について、丁寧に教えてくれるのがこの「ルポ新大久保」である。訪れるだけでは飽き足らず、実際に新大久保住み始めてしまったライターの室橋さんが、観光客とは全く違う視点でこの街の成り立ちや魅力に迫っている。私がずっと気になっていた店についても詳しく取材されたりするし、ミャンマー人が営む日本風焼肉屋とか、過激派のアジビラを印刷していたおばさんが、1980年頃から大久保に住み続け、この街の成り立ちや日本人や外国人のお店を紹介する情報誌「OKUBO」を発刊し続けていることなど、初めて知るような情報もたくさん掲載されている。なにより室橋さんの新大久保に向ける眼差しがあたたかい。
まだまだ新大久保に居続けたいと思わされる、不思議な魅力のある一冊である。(ネイキッドロフト:小柳元)