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トップレビューアニメ「響け!ユーフォニアム」- 自分に楽しい思いをさせてあげるために、いい景色を見せてあげるために、動こうと思った #とにかく癒されたいときのカルチャー

アニメ「響け!ユーフォニアム」- 自分に楽しい思いをさせてあげるために、いい景色を見せてあげるために、動こうと思った #とにかく癒されたいときのカルチャー

2020.05.12   CULTURE | CD

ポニーキャニオン

自分に楽しい思いをさせてあげるために、いい景色を見せてあげるために、動こうと思った

私はニートだった頃、アニメ「響け!ユーフォニアム」を見た。
 
ニートの私は毎日、家でアニメを見ていた。こう言うと、アニメ=ニートを自宅で甘やかすもの、と誤解されそうだが、そんなことはない。アニメはこの先が見えない私に、世の中面白いものがたくさんあるということと、今日が何曜日なのかを教えてくれた。
 
「響け!ユーフォニアム」は吹奏楽部の高校生たちの物語なのだが、高坂麗奈というキャラクターが、えらくトガっている。楽しく部活できればいいという部員も多い中、麗奈はストイックな姿勢を崩さない。上級生に逆らってでも実力主義を貫く。
 
そうやって孤立する麗奈が本音を打ち明けるシーンが、私に刺さった。麗奈は、「本物になりたい」と言った。それを実現するため、演奏を極めるのだと。何の根拠もなく「自分は特別になれるはず」と思っている姿は、痛くもある。でも、強くそう信じ続けた人の中からしか、すごいヤツは出てこないだろうな、とも思わされた。
 
私も、自分に楽しい思いをさせてあげるために、いい景色を見せてあげるために、動こうと思った。
 
 
実際の演奏も聴いてみたくなった私は、高校の吹奏楽コンクールを見に行った。東京大会の会場は、東府中にある府中の森芸術劇場。
 
演奏を聴き、驚いた。高校生が、こんなに力強い音をぶつけてくるのか。演奏時間は12分。演奏が終わったとき彼らは12分、若さを失う。そうして命を削っている分、絶対に伝えそびれるもんかと、自分の生命力を音にしていた。
 
 
会場を出て、牛丼屋によってから電車に乗ると、ちょうど出場していた高校生たちと帰りが一緒になった。友達と談笑する、他愛ない部活帰りの姿。この子たちが、内側にあんな世界を持っているのか。
 
それなら、私も自分の命を出す瞬間をたまには作らないと。そう感じながら、また東府中に来よう、と思った。
 
その日の夜、牛丼屋でお金を払い忘れていたことに気づき、慌ててもう一回東府中に行った。
 
TEXT:土岡哲朗(春とヒコーキ)

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