MCUのガイドブックとして間違いなく最良の内容の一冊
すっかりアメコミヒーローを根付かせたマーベルシネマティックユニバース(MCU)、本書はその歴史や背景を各作品ごとに詳細に解説した本である。映画的裏話から、現実世界の事件への目端の効かせ方、原作コミックとの対比まで盛りだくさんだが、それだけに留まらず筆者が「この描写はないだろう」「さすがにここはどうなの?」と感じたポイントもしっかりと触れられている点が重要だ。しかしそれは単なる批判ではなく「こうした方がよりよくなったのではないか?」というファン的な目線を忘れず、読者にアメコミ世界をさらに理解させる物になっている。1本完結せず物語を紡いでいく「映画を越えた何か」になりつつあるMCUへの今後の期待と不安も詰め込まれたこの本、個々の作品の鑑賞のお供に最適であるだけでなく、アメコミ映画初心者にも、MCUの奔流についていけなくなった人にも勧められるガイドブックである。(多田遠志)