夏にさよならをしたこの季節にお薦めしたい一冊。表紙は両手を挙げ、なにかを言葉にしている少年と少女。読み終えたらあなたならどんなセリフを彼らにつけますか？　淋しい独りと淋しい生活が巡り合い、日々の生活の中で忘れていた温かい気持ちをやさしく思い出させてくれる、そんな心がやわらかくなる物語が八編。詩情的な線で描かれる本作は読み終えたときに改めて、この作風だからこそ不器用な優しさとまっすぐな思いを言葉だけではなく線と画からも感じられる。わたしがセリフを付けるなら“僕たちに罪はないんだ”、“問題なんかないからほっといて”と。不器用なヒトも自分の中の大切なモノがあるからみんなで全部を否定しないで。すきなものは好きなままでいい。大切なものを一緒に大切にできる温かい人と繋がり、すこしでも分かり合えたらそれだけできっと、幸せ。そんなやわらかい気持ちをあたなも感じてみませんか？（阿佐ヶ谷ロフトA：おくはらしおり）