8月25日からユーロスペースで公開
『男はつらいよ』や『ビッグ・リボウスキ』などダメ男を描いた映画はたくさんあるが、ダメ女をここまで魅力的に描いた映画は珍しい。若手女性監督レオノール・セライの長編デビュー作は、魔性の女でもなく、薄幸の女でもなく、嘘つきで見栄っぱりですぐキレる、どこにでもいそうなダメ女・ポーラが主人公だ。31歳のポーラは、10年付き合った写真家の恋人に突然別れを告げられ、お金も、家も、仕事もないまま、恋人の飼い猫ムチャチャとともにパリを転々とする。居候先の友人宅からも、安宿からも追い出され、久しぶりに会った母親にも拒絶されてしまう。しかし、この孤独で困窮したヒロインが、新たな人生に向かって少しずつ前へと進んでいく姿は、圧倒的に自由で強く、時にユーモラスで、同世代の女性の共感を呼ぶに違いないだろう。舞台のパリが全然きらびやかでなく、まるで歌舞伎町の裏通りみたいなのが逆にリアリティを感じた。(加藤梅造)