文藝春秋新社
三河安城の友達がやっている「カゼノイチ」という飲み屋の一階にある古本屋でなんとも懐かしい本を見つけた。学生の頃、大学の学費値上げ反対闘争に戦いながらこの本を愛読した。1974年発行の本だからもう43年前になる。一学生運動家の青春の光と影。自分に目覚め、世の中との関わり合いを意識し、考え悩み愛し、65年2月の羽田で警官の警棒により鼻軟骨を砕かれ入院。3月に服毒自殺。傷つき21歳でこの世を去った奥公平の遺稿集だ。政治の季節と言われた60年代、この本は社会を変えようとする私たちに多くの影響を与えた。一番印象的なのは運動の中での恋愛対象が、自分が信じる党派の中核派とは対極にある革マル派ということであった。愛は思想対立を乗り越えられるのか。あの時代、俺たち若者は燃えていた。社会を変えるためには自分の命も厭わなかった懐かしき青春時代を思い起こさせてくれた本である。若人にもぜ読んでほしいと思った。(平野悠)