話題作なので、あらすじは知っているという方が多いかもしれない。ただし、「万引きで繋がっている家族の話」というこの映画の説明は、ある意味で正しく、ある意味では間違っている。なぜなら、この説明文の、「万引き」以外の全ての言葉を、映画自体が疑っているからだ。それは作者、是枝裕和から観客と社会に向けられた、静かで、しかし強烈な問いであるーー彼らは本当に「繋がっている」のか? 何を以って「家族」なのか? そしてこれは、単なる「話」なのか、それとも現実なのか......? 「ドキュメンタリータッチ」「社会派」などといった言葉で形容されることの多い是枝映画だが、どうか、重い、暗いと敬遠しないで一度観てほしい。
「カンヌを取ったから」とか、ましてや「日本の隠された現実を描いているから」とかいった、そんな大げさな理由ではなく、ただ、家族と呼べる人を持つすべての人に、そっとおすすめしたい映画。(LOFT9 Shibuya:木俣恵太)