若くして死んだ自力な哲学者池田晶子の三部作、「私とは何か、魂とは何か、死とは何か」読んで以来いつも自分に死が訪れようとしたとき読む本と決めている。すなわち私の死に向かうバイブルなのだ。私が一番衝撃的で目から鱗が落ちたのは「生命は尊くも卑しくもなくただの自然現象です」というフレーズだった。もう彼女が死んで10年にもなる。「大事なことを正しく考えれば惑わされない、迷わない」と帯にはあるがかの五木寛之先生さんなんかの「人生論的、老後をどう生きるか」なんて美辞麗句な美しくもしなやかな人生論とは違って著者はもっともっと死に対して、あるいは生き様に対して哲学的に辛辣である。「人生とは何か?を考えるときそれは「存在とは何か」という問いに直面する」から始まる「全ての人間の死因は生まれたことである」さて生き方につまずいた人がこの本を読んで救われるかはわからないが私は何度も読み返している数少ない本である。(平野悠)