スポーツ紙でもオヤジ週刊誌でも濡れ場が満載の連載小説は健在である。この淫爆もそんな作品だ。ロシアの液体爆薬密輸ルート、その陰謀に代々火消し家計の江戸っ子エージェントが立ち向かう。しかしその爆薬は女性の秘部に塗ると強力な媚薬になるのだった! だから淫爆! 10ページに1回は必ずエロが入るハイペースで飽きさせない。年末に女性器を見て「まさにメリークリ○リスだな」と言い放つなど、アゴの外れる描写の連発で飽きさせない。音楽プロデューサーなど謎の職歴を持つ著者沢里氏の他作も温泉宿を女将が濃厚サービスで立て直す「絶倫ホテル」など信頼できるラインナップ。最近はどのジャンルでもすっかり影を潜めた、いかがわしさ溢れる魅力がここにはある。そこそこ面白いけどツーベース狙いな作品の多い昨今、本書のように底抜けに大振りなエンタメ作品をもっと味わってみたい。山田風太郎の忍法帖シリーズもこうした大衆文学から産まれたことを忘れてはならない。(多田遠志)