立て続けに森作品「A4(現代書館刊、これは秀作)」と本書を読んだ。このところ作家作業で立て続けて出版された種々の単行本を含めて、森は現天皇の退位により29年間続いてきた平成の時代が終わろうとし、その足跡を確認する作業が「確かに平成の時代は激動だった。そしてまだ忖度は続いている」と総括を試みている。この国のメディアの報道の自由度は世界72位だ。ちなみに71位とはタンザニアやボツアナだ。記者クラブの閉鎖性、福島原発事故における報道の不透明性、特定秘密保護法が論拠となっている。放送禁止歌からFAKEまで、インタビューを中心に森はどこまでも腐ってゆく日本に絶望しながら希望を持とうとしている。これまで森が権力やマスコミに抗い続けてきた歴史がここにある。ちなみに私はもはや日本にほとんど希望を持たない。若者には「日本を捨てて世界に羽ばたけ」と言っている。(平野悠)