水木しげる翁に特に愛された次女が描く父親の姿。楽しい「お父ちゃん」との思い出、父母の仲良さだけでなく、複数回の発病やけが、介護など最期の日々も綴られ、落涙止まらない。
昨今、著名人は亡くなって密葬も済んでから発表されることが多い中、翁の死は家族が「会社(水木プロ)に知らせる前」漏れてしまう。生前何度かお邪魔し取材した身として、漏洩に関する顛末は知ってはいたが本当に共に哀しくなる。だが、それすらも「彼ら(群がるメディア)も飯の種だ」と諭す翁の魂の声が著者に響く!(或いはそういう思いを悦子さんに気づかせる、さりげない翁の日々の振る舞いがあったからこそだろう)。絵への真剣さ、妻への愛。奥様が(つい先日逝去された)水木家3兄弟の長兄に対し新婚当初持っていた複雑な思い、でも「相撲で決着」など「哀しうてやがておもしろき」印象が素晴らしい。漫画・文だけでなく、ご家族も翁の作品と実感させられた。(尾崎未央)