ビートルズ研究の第一人者・藤本国彦の責任編集による、ビートルズの活動を1年1冊ごとにまとめたイヤーブックの第10弾。1970年までで終わらずに解散後の1971年にもスポットを当てる趣旨がユニークだ。1971年といえばポール VS ジョン&ジョージ&リンゴという1対3に分かれた泥沼裁判で関係性は最悪、ジョンとポールが各々のソロ楽曲で互いを攻撃し合うなど目を覆いたくなる時期だが、バンドという夢の瓦解の後始末と個々人が人生の第二幕へと突き進む再生を描いた物語として捉えれば非常に面白い。ヨーコと共に社会運動に身を投じていくジョン、第二のバンド結成を模索するポール、勢いも人気も絶頂期を迎えていたジョージ、マイペースに俳優業もこなすリンゴ。そんな元ファブ・フォーの人生の交差を、詳細な年表や各自のソロ作品の解説、硬軟織り交ぜた評論などで多角的に検証した好著。「Ram On」=「Ramon」説には目から鱗。(椎名宗之)