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柚木麻子 / BUTTER

2017.07.03   CULTURE | BOOK

新潮社
1,728yen(tax in)

 死刑判決確定。今から8年前に起きた首都圏連続不審死事件を覚えているだろうか? “15人目の女性死刑囚・木嶋佳苗”をモチーフにした濃厚すぎる作品である。30代週刊誌記者・里佳と、若くも美しくもない容姿にも関わらず異性を虜にした連続不審死事件被告・梶井。二人の女がアクリル板を挟み事件真相に迫る。一見、推理小説かとも思える作品だが、なめらかなページを捲っていけばいくほど作者・柚木の得意分野“食”描写が獄中から溶け出す女の欲望と共にねっとりと搦められている。事件のことは勿論、現代社会への考察、女たちの様々な葛藤をじっくりと蟠りを溶かしていくかのような柚木の新たな代表作と言っても過言ではない。そして、作中に在る「自分の適量を探す」というのは女性だけではなく、男性自身も考え、共感できる部分だろう。物語の濃厚さ、梶井の毒々しい眼差し、胸やけをおこすほどの言葉の旋律はまさに“バター”そのものだ。読むときにはあたたかい白米とバター、醤油を、お忘れなく。(Asagaya/LoftA おくはらしおり)

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