10月8日より 渋谷アップリンクで公開
幼児虐待を題材にした平山夢明の短編小説「無垢の祈り」の映画版がついに公開の運びとなった。継父からの虐待に苦しむ少女と連続殺人者の奇妙な邂逅を描いた作品を、虐待シーンや殺人鬼の凶行描写も手加減なしで、凶悪さや幻想的な世界観など、平山小説を完璧に映像にコンバートしている。虐待者の継父を演じるＢＢゴローも怠惰さと暴力性の緩急を見事に演じわけている。平山世界のルーツ的風景である川崎の工業地帯を時には幻想的に、廃墟的な地獄めいた異界としても効果的に描いている。監督亀井亨が私費を投じて完成させた熱意がこちらにも伝わってくる、間違いなく観た者の心に「刺さる」作品なので、ぜひ多くの人に浴びてほしい。題材からか製品化はなかなか厳しそうな「映画館でしか観られない映画」になるかもしれない。まずは1つでも多くの劇場でかかるようになることを希望して止まない。（多田遠志）
