殺人本を書かせたら世界一の著者。欧米の殺人鬼から日本の古き良き?時代に興味拡大してる様は澁澤と通じる気も。極めると土着回帰になるものか。加藤智大の手記四冊読破、ディーン・フジオカを有名にした市橋達也の逃走記に幻想も見、サイテー推理作家キーラーは数回に分け詳述(なぜ違う訳者になったか机叩きたい)。全国の県警史に蒐集の触手は伸び、泥棒が切った電線に次々痺れて人が倒れる珍事件とか悲惨なのについ笑いが…惜しむらくは販売が電子書籍のみであること。沖縄での1人への強姦・輪姦の「連続」「同日」事件など惨すぎ、紙ではきついか(本の雑誌に連載されておりもちろん今回の事件前)。だがその沖縄事件史紹介の冒頭が私には刺さった。“すべての事象を犯罪とそれにまつわる本によって理解するぼくにとっては、沖縄の基地問題もまたそれにまつわる犯罪史として学ぶことになる ”。書籍を食べてしかものごとを実感できない人間には滲みる。過日刊行された大部な書評集『新世紀読書大全』とカブりなし、必読。(尾崎未央)