『Mother』『最高の離婚』を手がけ、今や日本を代表する脚本家である坂元裕二。2016年、そんな彼が『東京ラブストーリー』以来、約15年ぶりに月9の舞台に帰って来た。本書はその作品のシナリオをまとめたものだ。胸を打つ台詞回し。キャラクターの心情を些細な仕草や小道具で伝える映像表現。そして物語を横断する伏線やイメージを完璧に回収していく構成力。全10話を通して、坂元氏の類いまれなる筆力が冴え渡っている。不運にも「月9史上最低の視聴率」のレッテルが貼られてしまったが、1話完結型のドラマで見られるような安易なカタルシスに逃げず、登場人物の内面とその変化を徹底的に掘り下げていくことに注力した作家とスタッフ陣に拍手を送りたい。最終回のオンエア後、映画監督・是枝裕和も「素敵なドラマだった」と感想を綴った。確かに日本のドラマを見限る気持ちは分かる。だが『いつ恋』と他のドラマを同列で語ってはならない。本作は、『そして父になる』のような映画と比肩する人間ドラマが展開される秀作なのだ。(Loft PlusOne West:平松克規)